【R18】生真面目騎士様の不真面目な愛読書

綾瀬ありる

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生真面目騎士様の不真面目な任務(3)

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 驚くことに、階段の上には案内役の男性が一人立っていた。黒一色の仮面を被ったその男は、視線を落としたまま軽く一礼すると「こちらへ」と小声で促す。
 なるほど、使用中の部屋のノブなどうっかり回してしまったら大変だろうな、とヒューバートはぼんやりとした頭の隅で考えた。ばかばかしさにため息が漏れる。
 廊下をしばらく歩く。通り過ぎた扉の部屋は、空いていないのだろうか。中で何が行われているか、今ならヒューバートにもおおよそ想像がつく。
 2階にあがるまえに、ランバートたちの所在を確認できたのは僥倖だったと言わざるを得ないだろう。もしもこの中の一室にいるかも、などと考えなければならないとしたら、今の自分達には相当に荷が重い。
「……っ、ん……」
 腕の中のリズベスが、小さく呻いた。肩口を掴んでいる手が、その力を強くする。
 なるべく慎重に歩を進めているつもりではあったが、多少揺れてしまうのは仕方がない。しかし、リズベスにはそれだけでも刺激が強いようだ。
「もう少しだから……」
 なるべく小声でそっと告げる。はあ、と息をつくリズベスは、眉根を寄せ、頬を赤らめて何かに耐えるように頷いた。まだ、こちらの声は届いているらしい。
 ――と、案内の男が立ち止まった。かちゃり、と軽い音を立ててノブが回され、扉が奥へと開かれる。
 どうぞ、と促されてヒューバートは部屋の中へと足を踏み入れた。
 思ったよりも広い部屋だ。調度品は真新しく、モダンなものを採用しているようで、階下のけばけばしさとは裏腹に落ち着いた様子をみせている。
 その中央に、寝台が一つ。やけに大きなそれに、ヒューバートは思わず小さく舌打ちした。わざとらしいにも程がある。
 そんなヒューバートの背後で、ゆっくりと扉を閉める音がする。かちゃり、と鍵をかける音もして、一瞬背筋がひやりとした。しかし、内側からも鍵があけられる作りになっていることを確認して、ほっと息をつく。
 しかし、これからどうしたものか。
 はあはあと、リズベスの呼吸は段々浅くなり、時折ぎゅっと唇を噛みしめヒューバートに頭をこすりつけてくる。この状態の彼女を、一人この部屋に置いていくことなどできるはずがない。
 だいたい、置いて行ってどうなるというのだ。
 それに――。
 ヒューバートは、大きく息をついた。それが、いつもよりも熱を帯びていることは、自分でもわかっている。
 効き具合が違うのは、摂取量か体格の違いか――はたまた、種類の違いか。
 なんにせよ、こればかりは疑いようもない。

 ここで使用されている「禁止薬物」というのは、おそらくは一般的には「媚薬」と称される催淫性の高い種類のものだ、ということだ。


 ◇


「んっ、あ……っ、はあ……」
 艶めかしい声が、二人しかいない部屋の中に響く。
「すまない、リズ――」
 そう呟いたヒューバートの声は、少し掠れていた。その声に、リズベスが頭を振る。
「あついの、ヒューバートさま……」
 こぼれる息が熱い。寝台の上に寝かされたリズベスは、縋る様にヒューバートを見上げていた。


 ――とりあえず、この格好ではあまりにも苦しいだろう。
 ヒューバートは覚悟を決めて、リズベスの背中へとそっと手を差し入れた。触れるだけでぴくりと反応する身体は、背中をなぞられただけで甘い声を上げる。思わず、といった様子で漏れる声に息を飲む。
 力の入らない身体を抱き寄せると、片手でなんとかボタンを外していく。その間も、リズベスの口からは、小さな声が漏れて、ヒューバートの理性を少しずつ削り取っていく。
 夢の中であれば、あれだけスマートにできたものを。そんな埒もない考えが頭に浮かんで、ヒューバートは頭を振った。
 なにを、馬鹿な。
 やっとのことでボタンを外し終え、コルセットの紐を緩める。水でも飲ませてやりたいところだが、この部屋に用意されていた水差しは――信頼していいものだろうか。
 少しだけ迷ったが、結局ヒューバートは水を飲ませることはあきらめた。
「リズ、辛いだろうけど、もう少しだけ我慢してくれ」
「ヒュー……バート、さま、やだぁ、なん、か……」
 青い瞳が、とろりと蕩けてヒューバートを見上げる。彼の名を呼ぶ口元から、ちらりと覗く赤い舌が、あまりにも扇情的に目に映った。
 いつもと違う、ふわふわと頼りない口調。小さな手が袖口を掴んで、何かを必死に訴えようとしている。
 いや、何か――などと誤魔化しても仕方がない。
「苦しい……?」
 袖口を握った手を捕まえて、その掌を親指でそっと撫でる。
「あっ……ん」
 こくり、と頷いたリズベスは、眉根を寄せ、いかにも辛そうだ。しかし、今のヒューバートは、その姿でさえ例えようもなく男としての欲を刺激される。
 少しだけ……そう、少しだけでも発散させてやれば、リズベスは楽になるだろう。この手の薬は時間の経過でも効果は消えてゆくだろうが、大抵の場合は達すれば早く抜けると聞いたことがある。
 ――それが、言い訳に過ぎないことは、ヒューバート自身よくわかっていた。
 想いを寄せる女性と、寝台の上で二人。お互い媚薬を盛られたこの状況で、自制できるほどヒューバートは出来た人間ではない。
 ごくり、とつばを飲み込むと、ヒューバートはリズベスをそっと寝台へと横たえた。
「んんっ……」
 頬に添えた手を滑らせる。そのまま、後頭部へと手を差し込み、頭を少し上げさせると、結い上げられた淡い金髪から髪飾りを引き抜いた。
 耳朶にそっと唇を寄せ、ぺろりと舐めてみる。びく、と身体が揺れて、リズベスの口から甘い声がこぼれた。
「ひゃ、あ、んっ」
 媚薬のせいとは知っていても、こうして自分が触れたことでこぼれる声は、格別だ。ちろちろと舐めたり甘噛みしたりすれば、リズベスはまた嬌声をあげて身体を震わせる。
 そうしている間に、緩めたドレスとコルセットを少しずつ脱がせていく。形の良い、柔らかそうな胸を露にすると、ヒューバートは形を確かめるように掌で撫でまわした。
 既にその頂は硬くしこっていて、柔らかさとは別の感触をヒューバートに伝えてくる。指がかすめるたびに、リズベスの身体がびくびくと跳ね、口からはひっきりなしに喘ぎ声が漏れた。
 真っ白な肌に、淡い桃色が美しい。ひとしきり視覚と手触りで愉しむと、ヒューバートはその先端に吸い付いた。
「あっ、あ、やあっ……!」
 じゅ、と吸ったり舌先で舐め転がしたりするのと同時に、反対側を指の腹でこすり上げる。先程までよりも高い声があがり、リズベスの指がぎゅっとシーツを掴んだ。
「きもちいい?」
 ちゅぽ、と最後にやわく吸い上げながら口を離すと、すっかり色づいた頂がその色を濃くしているのが見える。唾液にまみれて光るそれは、淫靡な美しさを放っていた。
 答えは待たず、今度は反対側へと吸い付く。先程まで含んでいた方へは、今度は指で。ぬるり、とヒューバートの唾液で滑る感触も、リズベスには違った快感を与えているようだ。
「あっ、ああ……ッ……」
 かり、と甘噛みすると、リズベスが身体をのけぞらせる。ぎゅ、と一瞬力が入ったかと思うと、ひときわ高い声があがり――リズベスの身体が弛緩する。
 軽くではあるが、達したのだろう。
 満足感が胸に広がる。それと同時に、もっともっと蕩けさせたい――という欲に更に火をつけられて、ヒューバートは再びリズベスの身体を弄り始めた。
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