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「告白した直後でなんですが、コーキさんもこの屋敷では俺の部屋で一緒に滞在してください」
マリオン用の客室の調査を再度始めながら、アルフォンス君が当然のように告げる。
今まではルームシェアだったが、客室を二人で使うなら完全に同室ということになるが、彼の中ではすでに決定事項のようだ。
僕の無鉄砲な単独行動を目の当たりにさせられて、躊躇っている場合じゃなくなったのだろう。
「さっきつくづく思い知らされました。この客室のシステムに分断されたら、部屋の主しか開けられないことのデメリットを」
作業を続けながらも、僕の動向を絶え間なく確認している。
「そんなに警戒しなくても、もう勝手に飛び出したりしませんよ」
苦笑する僕に、アルフォンス君は真面目な顔で首を横に振る。
「それだけじゃありません。部屋にこもっている限り襲われる危険はなくても、もし中で何かあった時、俺が助けに入れないじゃないですか。レーザー銃でも、ドアに傷一つつかないんですよ。それは逆に不安です。ただでさえ階も違うし、やはり部屋を別にするべきじゃないと思いました」
「――――」
――やっぱり銃は使っていたのかと、そっちにびっくりなのだが。僕の単独行動は、別の意味でも危険だ。本当にもうやめよう。
反省しながら扉に視線を向ける。どこにも焦げ跡一つ見えない。
この屋敷やそれに属する物には、軍曹の遺産の目玉と目される『完全防御』がかかっている。現状の技術では、どうやっても破壊不可能なのだ。
その状況で部屋を別にするのは、確かに怖いかもしれない。なにより、わざわざ危険地帯で分断する愚を犯す必要もないだろう。
「もちろんそれで構いませんよ。君の安心のためにも、君の部屋でいいでしょう。それなら僕には開けられませんからね」
反省を示すために、素直に同意する。
実は僕の魔法なら開錠は何とかなるかもしれないが、そこは秘密だ。アルフォンス君を心配させないためでもあるが、それ以上に、ある意味マスターキーを持っていることがバレたら、ミステリーなら普通に事件の容疑者第一候補になってしまうではないか。
僕はあくまでも部外者であり傍観者なのだ。
「君の部屋に行くなら、僕の部屋はこれで早くも見納めですかね」
アルフォンス君に倣って、僕も室内を観察してみる。
女性のマリオンに配慮されているのか、落ち着いたホテルの客室と違って、配色や小物、インテリアなどが可愛らしい感じに統一されている。
十五年前と同じなら、割り当てられた部屋は画一的なものではなく、割とそれぞれに個人の好みや個性が反映されたものとなっているはずだ。ヴィクトールの客室など、監獄みたいなコンクリート打ちっ放し部屋がお似合いなんじゃないかと思う。
「…………」
――また、見付けてしまった。
何気なく漂わせた視線の先で、思わず壁の一点に目が釘付けになる。
何点か並んだアートパネルのうちの、一番小さい作品だ。
幾何学模様のアレが、堂々と壁にかかっていた。玄関ホールにあった軍曹の肖像同様、英語の文字がアートに擬態している。
そこには、今回の遺産相続候補者の名前が数名分、白地に青系統のグラデーションで描かれていた。
挙がっている名前がどういう人選なのか――考えるまでもなかった。
ゲームの参加者リストだ。参加資格を満たした数名。この五日間で、命の懸かったゲームに強制的に挑まされる者達だ。
まさか、これも先んじて公示してくれているとは。誰が選ばれるんだろうなんて、ハラハラする間もないな。
まあ、僕から言わせれば、大体想定通り、といったところだろうか。
それでいえばやはり、僕の参加を決定付ける名前も、はずれることなくそこにあった。
――Marion Beatrixと。
だがそれよりも、アルフォンス君の名前がなかったことに胸を撫で下ろす。彼の安全が、また一つ確保された。
おそらく、このリストの中の何人かは――あるいは全員が、死ぬことになるのだろう。あくまでも僕以外は、と言っておこうか。
その点に関してはすでに覚悟を決めているので、もはや僕の関知するところではない。僕自身も含めて、生きるも死ぬも本人次第だ。
しかしリストの最後にある名前には、さすがに目を見張った。
今回の招待者は十三名。そのいずれでもない名前が、特別参加者とでも言わんばかりに、一番濃い紺色で刻まれていた。
――やはり、生きていたのか。
何の感慨もなく、ただ納得する。
彼が、この遺産相続というふざけたゲームのゴールということか。
「どれも変わった絵ですね」
僕の視線を追ってか、並んだ作品へのアルフォンス君の感想が真横から聞こえた。
どうも告白してから、明らかに距離を詰めてきている気がする。僕の中身が見た目通りの未成年ではないためか、もう不必要に遠慮する気はないようだ。
実際小娘ではないので、とりあえずスルー対応をしておこう。
「向こうの世界の絵って、俺には理解できません。何を表現してるんでしょう?」
他意なく答えにくい質問を投げかけられ、内心どきりとしながら、素知らぬ顔で首を捻る。
「僕も大差ありませんよ。絵画などさっぱりです。あとで君の部屋の絵も見てみましょうか」
もう用はないとばかりに視線をアルフォンス君に戻して答えた。
このリストがここにあるのは、僕が参加者だからか。それとも全室に用意されているものなのか。
もし全室にあるのなら、毎日見ていたら、解読する人間も出てくるかもしれないな。その筆頭がアルフォンス君なのだが。
まあこの情報なら、解読されてもさほど不都合はない。誰がゲーム参加者になるか知ったからといって、これといった対策が打てるようなものでもないし。
むしろいい感じで混乱が起こるんじゃないだろうか? 僕達は通常通り、自衛だけ気を付けていればいい。
それにしても――と、皮肉に思う。
現時点で、僕以外に気付いている者がいるのかは知らないが、実にショーらしくなってきたものだ。
さしずめ企画・演出ジェイソン・ヒギンズといったところか。
マリオン用の客室の調査を再度始めながら、アルフォンス君が当然のように告げる。
今まではルームシェアだったが、客室を二人で使うなら完全に同室ということになるが、彼の中ではすでに決定事項のようだ。
僕の無鉄砲な単独行動を目の当たりにさせられて、躊躇っている場合じゃなくなったのだろう。
「さっきつくづく思い知らされました。この客室のシステムに分断されたら、部屋の主しか開けられないことのデメリットを」
作業を続けながらも、僕の動向を絶え間なく確認している。
「そんなに警戒しなくても、もう勝手に飛び出したりしませんよ」
苦笑する僕に、アルフォンス君は真面目な顔で首を横に振る。
「それだけじゃありません。部屋にこもっている限り襲われる危険はなくても、もし中で何かあった時、俺が助けに入れないじゃないですか。レーザー銃でも、ドアに傷一つつかないんですよ。それは逆に不安です。ただでさえ階も違うし、やはり部屋を別にするべきじゃないと思いました」
「――――」
――やっぱり銃は使っていたのかと、そっちにびっくりなのだが。僕の単独行動は、別の意味でも危険だ。本当にもうやめよう。
反省しながら扉に視線を向ける。どこにも焦げ跡一つ見えない。
この屋敷やそれに属する物には、軍曹の遺産の目玉と目される『完全防御』がかかっている。現状の技術では、どうやっても破壊不可能なのだ。
その状況で部屋を別にするのは、確かに怖いかもしれない。なにより、わざわざ危険地帯で分断する愚を犯す必要もないだろう。
「もちろんそれで構いませんよ。君の安心のためにも、君の部屋でいいでしょう。それなら僕には開けられませんからね」
反省を示すために、素直に同意する。
実は僕の魔法なら開錠は何とかなるかもしれないが、そこは秘密だ。アルフォンス君を心配させないためでもあるが、それ以上に、ある意味マスターキーを持っていることがバレたら、ミステリーなら普通に事件の容疑者第一候補になってしまうではないか。
僕はあくまでも部外者であり傍観者なのだ。
「君の部屋に行くなら、僕の部屋はこれで早くも見納めですかね」
アルフォンス君に倣って、僕も室内を観察してみる。
女性のマリオンに配慮されているのか、落ち着いたホテルの客室と違って、配色や小物、インテリアなどが可愛らしい感じに統一されている。
十五年前と同じなら、割り当てられた部屋は画一的なものではなく、割とそれぞれに個人の好みや個性が反映されたものとなっているはずだ。ヴィクトールの客室など、監獄みたいなコンクリート打ちっ放し部屋がお似合いなんじゃないかと思う。
「…………」
――また、見付けてしまった。
何気なく漂わせた視線の先で、思わず壁の一点に目が釘付けになる。
何点か並んだアートパネルのうちの、一番小さい作品だ。
幾何学模様のアレが、堂々と壁にかかっていた。玄関ホールにあった軍曹の肖像同様、英語の文字がアートに擬態している。
そこには、今回の遺産相続候補者の名前が数名分、白地に青系統のグラデーションで描かれていた。
挙がっている名前がどういう人選なのか――考えるまでもなかった。
ゲームの参加者リストだ。参加資格を満たした数名。この五日間で、命の懸かったゲームに強制的に挑まされる者達だ。
まさか、これも先んじて公示してくれているとは。誰が選ばれるんだろうなんて、ハラハラする間もないな。
まあ、僕から言わせれば、大体想定通り、といったところだろうか。
それでいえばやはり、僕の参加を決定付ける名前も、はずれることなくそこにあった。
――Marion Beatrixと。
だがそれよりも、アルフォンス君の名前がなかったことに胸を撫で下ろす。彼の安全が、また一つ確保された。
おそらく、このリストの中の何人かは――あるいは全員が、死ぬことになるのだろう。あくまでも僕以外は、と言っておこうか。
その点に関してはすでに覚悟を決めているので、もはや僕の関知するところではない。僕自身も含めて、生きるも死ぬも本人次第だ。
しかしリストの最後にある名前には、さすがに目を見張った。
今回の招待者は十三名。そのいずれでもない名前が、特別参加者とでも言わんばかりに、一番濃い紺色で刻まれていた。
――やはり、生きていたのか。
何の感慨もなく、ただ納得する。
彼が、この遺産相続というふざけたゲームのゴールということか。
「どれも変わった絵ですね」
僕の視線を追ってか、並んだ作品へのアルフォンス君の感想が真横から聞こえた。
どうも告白してから、明らかに距離を詰めてきている気がする。僕の中身が見た目通りの未成年ではないためか、もう不必要に遠慮する気はないようだ。
実際小娘ではないので、とりあえずスルー対応をしておこう。
「向こうの世界の絵って、俺には理解できません。何を表現してるんでしょう?」
他意なく答えにくい質問を投げかけられ、内心どきりとしながら、素知らぬ顔で首を捻る。
「僕も大差ありませんよ。絵画などさっぱりです。あとで君の部屋の絵も見てみましょうか」
もう用はないとばかりに視線をアルフォンス君に戻して答えた。
このリストがここにあるのは、僕が参加者だからか。それとも全室に用意されているものなのか。
もし全室にあるのなら、毎日見ていたら、解読する人間も出てくるかもしれないな。その筆頭がアルフォンス君なのだが。
まあこの情報なら、解読されてもさほど不都合はない。誰がゲーム参加者になるか知ったからといって、これといった対策が打てるようなものでもないし。
むしろいい感じで混乱が起こるんじゃないだろうか? 僕達は通常通り、自衛だけ気を付けていればいい。
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