【中長編BL┊︎連載中】恋とは呼べない関係 ~Fineを迎えるその日まで~

三葉秋

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 俺の目の前には、力也がいる。
 胡坐を崩したような座り方でベッドの上に座っている俺たちは、なんだかとてもぎこちない。
 久と力也の間にはちゃぶ台1個分ほどの距離があり、どうにか手を伸ばせば太ももくらいは触れられそうな距離だが、これからやろうとしている行為を考えれば、いささか遠すぎる距離である。
「もっと、こっちだよ」
「わ、わかってる…」
 少々恥じらいつつも、体1個分だけ久の方へ近づいてくる力也。だがそれにしたってまだ、距離があるのだ。
 ーーーじれったい。
 久は力也の左手首をつかみ取り、一気にこちら側へと引き寄せた。
 バランスを崩した力也は、前かがみに倒れこむ。ちょうど久の肩におでこがぶつかった隙に、ぎゅっと力をこめて力也の腰を久が抱き寄せた。
「なぁ、緊張してんのかよ」
 先程より近づいた2人の距離。
 肩に持たれた力也の耳元で囁く久の声に、ピクっと反応する力也から「ひっ」という何かを飲み込むような声が聴こえてきた。
「そりゃ、少し……なっ。しない方が、……不自然だろうが……」
「まぁ、そりゃな。でもそれより、楽しみの方が勝ってるかな」
 二人は久の家に着くなり、その辺に荷物を放り投げ寝室へと向かった。ただ久の楽器だけは、それはそれは丁寧に廊下の隅っこに鎮座させたわけだが。
 その後、二人でベッドに腰かけた時点で予想を超える気持ちの昂りに、久自身が一番驚いていたのは事実である。
 久は後ろ側に回していた手を、そっと力也のズボンの中に差し込んだ。
 少し汗ばんだ皮膚とボクサーパンツのゴムの間をこじ開ける。何にも触れてなかった尻の丸み部分はひんやりと冷たく、火照った久の手の平の温かさで徐々に中和されて行く。
 力也もこの状況にようやく慣れてきたらしい。
 俺と同じく、ズボンの中に手を差し込んできた。
 いきなり昂りに触れてこない辺り、お互い大人になったような気がする。
 昔は情緒もなにもなく抜き合うことだけを考えてた。自分の志向と違う動きをする力也の指先に、魅せられていたのかもしれない。
 あの頃はそれが、何よりも気持ちよかったから。
「なぁ、そろそろこっちも…いいだろ」
「ああ」
 どちらともなく昂りへと移動する。
「もうお前のパンパンじゃん」
「そっちこそ」
 ホックとジッパーを開け放つ。締め付けを解放された途端、昂りはいっそう大きさを増した気がした。
 今から、力也が俺のモノに触れる喜びに期待が高まると同時に、力也のモノに触れられる喜びも久にとっては一憂だった。
 そっと力也の竿に親指と人差し指を絡めた。そうすると、あの頃を思い出さずにはいられなかった。
 ゆっくりと上下する指先は力也の敏感な部分をすぐに捉えた。親指の腹で少しくぼんだカリをクリクリと撫で回す。
 ピアノの鍵盤を容易に奏でている久の大きな手にも余るほどの力也の昂りに、15年ぶりに触れた。
 面白いほどにあの頃の記憶が鮮明に溢れ出てくる。自分でも面白いくらいに的確に弱く、敏感な部分を指が覚えていた。
「ここ……だろ!?」
「あっ!ちょい、待っ……てって……そこはっ!」
 俺は力也のゆがんだ顔を見るのが好きだった。
 はぁはぁと、息を漏らしながらも懸命に息を整えている力也の必死な表情に、高揚感が否めない。
「だめ、だ……。もう、イク……」
「はえーよ。もうちょっと、なぁ……頑張れ」
 久は力也の弱い部分を撫でるのをやめ、昂りの先端部分をぎゅっと握った。
「うぁ!……ひっ!……お、まえ……!」
「まだ、イクなよ。手ぇ、止まってんぞ。俺のも気持ちよくしてくれよ」
「わかってるわっ!」
 先端を握られたことで、吐精感が少し和らいだのか、久の昂りを握る力也の指先にまた力が入った。
 力也は親指と中指で握った指先で、久の昂りの付け根から先端へ一直線に擦り上げた。
「んっ!ああ゛っ……んぅ……」
 力也の指先は久の先端部分を掠め、先走りが滴る先を引っ掻く。
「り…きや……。それっ……、はん…そく……」
「やられてるだけの、俺じゃない」
 なんだよ。……力也だって、忘れてないじゃないか。
 久の敏感な弱い部分を力也も覚えていた。
「なぁ……、一緒に……イこう…」
 久は一緒にイキたいと力也をたきつけた。自分と力也の昂りを二本一緒に握った。
 互いの裏筋が合わさり、それだけでも気分が高まった。
 力也も同じく、反対側から握り返してくる。
 互いの手が左右から伸びて、まるでひとつの大きな手のようだ。
 リズミカルな上下の手の動きに合わせ、互いの息づかいが加速していく。
 何となく、どちらともイク瞬間の顔を見られたくないのは今も昔も変わらない。
 イク時は決まって、天を仰ぐのだ。
 手の甲にかかる生温かい精液は俺のものか、それとも力也のものか。分からない。
 全力疾走したような気だるさと、言いようのない満足感が全身を満たしていく。
 ーーーあぁ、気持ちよかった。
 一度は忘れたはずだったこの感覚を、久はまた思い出してしまった。
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