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俺の隣で寝ていたのは妹でした
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部屋の窓からは朝を主張するかの如く、お天道様が光を送り込んでくる。その暖かな光に俺は覚醒した。
「んん……」
身体を伸ばす。そしてベットから降りる為に、上半身を起こそうとするが、腹に細くしなやかな腕が巻きついている事に気づく――それは俺が動いた事に気付いて目を覚まし、欠伸をした。
「ふわっ……おはようお兄ちゃん」
陽の光がその金髪を照らし、輝く光景は幻想的だ。どんなに闇が深い者だろうと、その者の闇を暖かく溶かして、深淵から純白に染め上げる力がある様に感じた。その姿は、完全に天使な妹――マリーが俺の横で寝ていた。
「マリー、また俺のベッドに潜り込んでるのか
」
「いいじゃない、お兄ちゃんだって私の温もりを感じて寝たかったでしょ?」
「いや、普通に暑いから」
「か~ら~の~?」
俺の額に、細く白い人差し指で小突いたマリーはニヤリと笑い俺を煽る。
うざい、ウザ過ぎる。なぜ朝からそんなテンションで接する事ができるのか、もはや賞賛に値する程だ。少し腹が立ったので、俺はマリーに一般論を唱えた。
「俺たち兄妹も今や高校生、一緒に就寝するなんて普通だったら恥ずべきことだろう?」
「何、それってお兄ちゃんは私と寝るのが嫌だって事?」
その言葉を口にした後、マリーは俯き、輝く金色の瞳から光が失せ、瞳孔が大きく開いた。やばい、地雷を踏んだかもしれない。
「い、いや……そんな事はないぞ?お兄ちゃんもマリーと寝れて幸せな気分だったさ!」
「……」
ど、どうだろうか。一応本当の事を言ったつもりだが、マリーに反応がない。このままだと血を見る事になるのは間違いないので更に続ける。
「こ、こんな美少女と一つ屋根の下で夜を共にしてる事を幸福と呼ばず、何というか。それを拒む愚か者にはきっと天罰が下るだろう。俺はそう思う!」
「……」
「ごくっ……」
圧倒的なマリーのオーラに生命活動が停止していた事に気づき、呼吸をして酸素を脳に供給する。脳がそれを受け取り、思考が安定して俺は冷静さを取り戻した。後はマリーの反応を只々、待つだけである。この冷えきった部屋の真ん中で、未だ冷気を発しているマリーがようやく顔を上げて俺を見た。
「やっぱりお兄ちゃんは私がいないと寂しくて死んじゃううさぎさんなんだね、それならこれからは私がつきっきりで面倒見てあげるよ!」
先程までとは打って変わって、マリーの瞳に光が宿る。それと同時に部屋の温度が上昇した。この少女は温度を変化させたり出来る能力者なのだろうか。
「いや、つきっきりは……」
「ん、何か……言った?」
そう言ってマリーは何かを投擲し、それは部屋の壁に貼ってある写真に刺さった。更に言えばそれは俺が写っているもので、その投擲物……カッターは写真の俺の腹を見事に貫通していた。もしや選択を間違えるとこうなるぞ、という事を伝えたいのだろうか。俺は吹き出した冷や汗を拭いて慎重に言葉を選ぶ。
「いえ、何も発していません」
「そっか、それなら良かった。もしかして躾が必要なのかと思ったよ」
躾とは何だろうか。俺はこの人間社会での作法や礼儀は心得ているはずだが、何を躾けられるのだろうか。
「と、とりあえず二人とも完全に目が冴えた。マリー、悪いけど朝食の用意をお願いできますか?」
「そうだね、学校もあるし準備し始めないと」
こう言った物分かりの良さはマリーの長所だ。
「あ、でも私の気分を害した責任は取ってもらうよ?」
物覚えが良い所も……長所だ。
俺はこの日の朝食を妹の「あーん」で食べて登校するのであった。
「んん……」
身体を伸ばす。そしてベットから降りる為に、上半身を起こそうとするが、腹に細くしなやかな腕が巻きついている事に気づく――それは俺が動いた事に気付いて目を覚まし、欠伸をした。
「ふわっ……おはようお兄ちゃん」
陽の光がその金髪を照らし、輝く光景は幻想的だ。どんなに闇が深い者だろうと、その者の闇を暖かく溶かして、深淵から純白に染め上げる力がある様に感じた。その姿は、完全に天使な妹――マリーが俺の横で寝ていた。
「マリー、また俺のベッドに潜り込んでるのか
」
「いいじゃない、お兄ちゃんだって私の温もりを感じて寝たかったでしょ?」
「いや、普通に暑いから」
「か~ら~の~?」
俺の額に、細く白い人差し指で小突いたマリーはニヤリと笑い俺を煽る。
うざい、ウザ過ぎる。なぜ朝からそんなテンションで接する事ができるのか、もはや賞賛に値する程だ。少し腹が立ったので、俺はマリーに一般論を唱えた。
「俺たち兄妹も今や高校生、一緒に就寝するなんて普通だったら恥ずべきことだろう?」
「何、それってお兄ちゃんは私と寝るのが嫌だって事?」
その言葉を口にした後、マリーは俯き、輝く金色の瞳から光が失せ、瞳孔が大きく開いた。やばい、地雷を踏んだかもしれない。
「い、いや……そんな事はないぞ?お兄ちゃんもマリーと寝れて幸せな気分だったさ!」
「……」
ど、どうだろうか。一応本当の事を言ったつもりだが、マリーに反応がない。このままだと血を見る事になるのは間違いないので更に続ける。
「こ、こんな美少女と一つ屋根の下で夜を共にしてる事を幸福と呼ばず、何というか。それを拒む愚か者にはきっと天罰が下るだろう。俺はそう思う!」
「……」
「ごくっ……」
圧倒的なマリーのオーラに生命活動が停止していた事に気づき、呼吸をして酸素を脳に供給する。脳がそれを受け取り、思考が安定して俺は冷静さを取り戻した。後はマリーの反応を只々、待つだけである。この冷えきった部屋の真ん中で、未だ冷気を発しているマリーがようやく顔を上げて俺を見た。
「やっぱりお兄ちゃんは私がいないと寂しくて死んじゃううさぎさんなんだね、それならこれからは私がつきっきりで面倒見てあげるよ!」
先程までとは打って変わって、マリーの瞳に光が宿る。それと同時に部屋の温度が上昇した。この少女は温度を変化させたり出来る能力者なのだろうか。
「いや、つきっきりは……」
「ん、何か……言った?」
そう言ってマリーは何かを投擲し、それは部屋の壁に貼ってある写真に刺さった。更に言えばそれは俺が写っているもので、その投擲物……カッターは写真の俺の腹を見事に貫通していた。もしや選択を間違えるとこうなるぞ、という事を伝えたいのだろうか。俺は吹き出した冷や汗を拭いて慎重に言葉を選ぶ。
「いえ、何も発していません」
「そっか、それなら良かった。もしかして躾が必要なのかと思ったよ」
躾とは何だろうか。俺はこの人間社会での作法や礼儀は心得ているはずだが、何を躾けられるのだろうか。
「と、とりあえず二人とも完全に目が冴えた。マリー、悪いけど朝食の用意をお願いできますか?」
「そうだね、学校もあるし準備し始めないと」
こう言った物分かりの良さはマリーの長所だ。
「あ、でも私の気分を害した責任は取ってもらうよ?」
物覚えが良い所も……長所だ。
俺はこの日の朝食を妹の「あーん」で食べて登校するのであった。
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