おまけのチートが知りたくて…

ゆーく

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相棒との遭遇

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カーテン代わりの汚れた布から、弱々しい朝日が差し込んできた。
夜は小屋の中でぐっすり眠れた。暖炉の残り火が消えかけ、薄寒い空気が漂う中、貴一はゆっくりと目を開ける。

腹の虫が盛大に鳴いた。
昨晩は魔法で水を出して喉を潤したものの、胃袋は依然として空っぽだ。コンビニ弁当も鞄も、すべてあの草原に置き去りにしてしまった。

「……腹減ったな」

呻くように呟きながら、ベッド代わりにしていた藁束から起き上がる。
昨晩、ゴブリンを撲殺した時に浴びた返り血は、服や手に微かにこびりついていた。魔法で水を出して洗い流したものの、独特な鉄錆び臭さは完全には消えない。
不快感はあるが、今はそんなことに囚われている余裕はない。

「まずは食料だ。そして……情報を集めないと」

小屋の中を改めて見回すが、保存食の類は見当たらなかった。
誰かが住んでいた痕跡はあるが、かなり古いものらしい。棚には埃を被った鍋やフライパン、古ぼけたナイフが置かれているだけだ。

「よし……行くか」

空腹に耐えかねて、貴一は小屋を後にした。
目指すは、昨日からずっと漂ってくる美味しそうな匂いの源――おそらくは木の実や果物が期待できる場所だ。嗅覚も少しばかり敏感になっているのか、風に乗って運ばれてくる甘酸っぱい香りが、彼を自然と誘う。

森は朝靄に霞み、昨晩の猛々しい姿とは打って変わって幻想的な雰囲気を漂わせていた。木漏れ日がキラキラと輝き、鳥たちのさえずりが賑やかに響き渡る。
だが、貴一は油断していない。ゴブリンの一件以来、森が常に牙を剥く可能性のある場所だと学んだからだ。

(……慎重に、しかし確実に、鼻を頼りに歩を進める。

(やっぱり、あっちの方だな……)

匂いの元と思われる方向へしばらく進むと、突然開けた空間に出た。
そこは小さな泉を中心とした天然の果樹園だった。色とりどりの果実をつけた木々が豊かに枝を広げ、地面には可憐な花が咲き乱れている。

「すげぇ……!」

思わず歓声が漏れる。
これだけあれば、当分食料には困らないだろう。
早速、手近な木に登ろうと試みるが、その時、ふと足元の茂みがガサリと音を立てた。

(またゴブリンか……?)

身構える貴一の前に現れたのは、しかし人型の魔物ではなかった。
それは茶色い毛皮に覆われた、犬くらいの大きさの生き物だった。丸い耳と短い尻尾。愛嬌のある顔立ちは、どことなくタヌキに似ている。

「グゥ?」

その動物は貴一を見つけると、一瞬警戒する素振りを見せたが、すぐに興味津々といった様子で近づいてきた。害意はなさそうだが、やはり野生の生き物。迂闊に刺激するのは避けたい。

「……おい、ちょっと待て」

貴一は両手を広げて制止するジェスチャーをする。
そのタヌキモドキは、彼の手のひらをクンクンと嗅ぎ、それからじっと顔を見上げてきた。まるで意思疎通を図ろうとしているかのようだ。

(言葉、通じるわけないよな……)

諦めかけたその時、昨晩の魔法のことが脳裏をよぎった。
水や火を出した時と同じように、集中して強く願えば……
『こいつと話ができればいいのに』

と念じてみる。もちろん、言葉を理解させるのではなく、単に

「敵じゃない」

とか、

「一緒に遊ぼう」

というような、単純な意思表示程度でいい。

すると驚いたことに、タヌキモドキは一瞬首を傾げた後、コクコクと二度ほど頷いたように見えた。そして、そのまま貴一の足元にじゃれつくように体を擦り寄せてきたのだ。

(おいおい、嘘だろ……?)

本当に意思疎通ができたのか?それとも偶然の一致か?
どちらにしても、目の前のタヌキモドキはすっかり警戒心を解いたようで、貴一に対して友好的な態度を見せている。

「まぁ、襲ってこないならそれでいいか」

苦笑しながら、貴一はタヌキモドキを伴って果樹園の探索を再開した。
タヌキモドキは特に邪魔になることもなく、むしろ貴一が果実を採ろうとすると、
「あれが美味しいぞ」
と教えてくれるかのように別の木に案内してくれる。
まるで案内役のようだ。

そうして、貴一は手ごろな果物をいくつか手に入れた。見た目は地球のりんごに似ている赤い実と、オレンジ色の小さな木の実だ。見た目は安全そうだが、毒性はないのだろうか。
昨日のゴブリン戦で痛感したが、ここは自分の常識が通用しない世界だ。

(うーん……食べるしかないよなぁ)

意を決して赤い実を齧ってみると、甘酸っぱい果汁が口いっぱいに広がった。美味い。続いてオレンジ色の木の実も食べてみたが、こちらはさっぱりとした爽やかな風味だった。

「んまい!」

思わず叫ぶと、タヌキモドキも嬉しそうに
「キューン!」
と鳴いた。
その鳴き声があまりにも可愛らしく、貴一はつい手を伸ばして頭を撫でてしまう。
するとタヌキモドキは気持ちよさそうに目を細め、もっと撫でてくれと言わんばかりに頭を押しつけてきた。

(なんだよこいつ、結構人懐っこいな……)

腹も膨れ、思わぬ相棒(?)もできたことで、貴一の気持ちは少しだけ楽になっていた。
昨晩の緊張感と孤独感が嘘のようだ。

だが、次の瞬間、平和なひとときは終わりを迎えた。
ふと前方の木陰に、不穏な影がちらついたのだ。
タヌキモドキもそれに気づいたのか、ピクリと耳を立てて固まった。

茂みからゆっくりと姿を現したのは、またしてもゴブリンだった。ただし、昨日の奴より若干体格が大きく、手には棍棒の代わりに錆びた剣を持っている。仲間か、それとも同じゴブリンの同族なのか。

「またお前かよ……!」

貴一が身構えると同時に、タヌキモドキが勇ましく吠えながらゴブリンに向かって飛びかかった。
しかし、ゴブリンはそれを軽く払いのけ、鋭い爪で引っ掻こうとする。

「やめろ!」

咄嗟に貴一は駆け出し、タヌキモドキを庇うように割って入った。
タヌキモドキはすぐに貴一の背後に隠れ、震えながらも威嚇の唸り声をあげている。

ゴブリンは新たな獲物(貴一)を見据えると、ニヤリと醜悪な笑みを浮かべた。
その目は、明らかに敵意と狩猟本能に満ちている。

「……来るなら来いよ」

貴一は拳を握りしめ、低く構える。
昨晩の経験が活きていた。恐怖はあるが、パニックには陥っていない。
タヌキモドキを守るためにも、負けるわけにはいかない。

「グギャアァッ!!」

ゴブリンが奇声を上げて突進してきた。
同時に、貴一も地面を蹴って迎え撃つ。

森に再び、激しい衝突の音が響き渡った。

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