…なんて。

翠華

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…出会い

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「彩香ちゃんは今まで何人くらいと付き合ったの?」


「うーん、5人くらいかなぁ」


「意外と少ない?」


「どうだろ。分かんない」


「年上は好き?」


「好きだよ。でも年上過ぎるのは嫌かなー」


「じゃあ俺はセーフ?」


「セーフセーフ!っはははは」


「うぇーい!」


ガチーーン!


先程から繰り返し続く耳障りな恋愛トークと打ち鳴らされるジョッキ音。

もう酔ってんのか。

呆れながらビールを口に運ぶ。

やっぱりまずい。


「香織ちゃんは今何の仕事してるの?」


気づけば目の前に座っている男が私を見ていた。

まずい。顔に出てたかな。

焦って笑顔を作りながら男を見る。


「ただのバイトですよ」


「何のバイト?」


「飲食です」


「へぇ、どこの?」


「駅の近くですよ」


「何の飲食?」


「ファミレスです」


なんだこいつ。めっちゃ質問攻めしてくるじゃん。ムカつく。

私は心底自分の事を聞かれるのが嫌いだ。何故会ったばかりの他人に個人情報を与えないといけないのか。

さっさと話題変えよう。


「そういえば名前聞いてなかったですね」


「あー、ごめんね。桐山 直人(きりやま なおと)。まぁ好きに呼んで」


「じゃあ、桐山さんで」


「うん、よろしくね」


「あ、宜しくお願いします」


宜しくって、もう今日以降会いたくないんだけど。

そんな事を思いながらも、頼りない友人と帰るタイミングを見つけられない自分のせいで話を続けなければいけない。


「桐山さんおいくつなんですか?」


「38」


まじか。めっちゃ年上じゃん。でもいくつに見える?とかくだらないやりとりなくてよかった。


「あ、そうなんですね。お仕事何されてるんですか?」


「営業だよ」


「営業ですか。大変そうですね」


「そうだね。でも自分で言うのもなんだけど、俺仕事出来るから基本的に困ることないかな。今は新人を何人も見てるからそれがちょっと大変なくらいで」


めっちゃ自慢っぽく真顔で言うじゃん。自分に自信持ち過ぎてる人マジ無理。


「そうなんですね。やっぱり信頼されてるから新人さんとか任されるんですよね」


「まぁそれは有難いんだけど、結局他に教育出来る人間がいなかったんだろうね」


「それは大変ですね」


適当に話を聞きながら彩香の様子を見る。

あとどれ位で帰れるんだろ。

考えるだけで気が滅入る。
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