少女漫画じゃないっつーの!

翠華

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第一話

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「「きゃああああ!伊月くんと鳴海くんだぁぁ!」」

いつものように黄色い奇声が聞こえる。

「伊月くーん♡」

「鳴海くーん♡」

「今日一人?一緒にご飯食べよー」

「いいよー」

「OK」

「やったぁ♡」

派手な服装、派手なメイクの女性達に囲まれる大学一のイケメン二人。

周りの女性達は声をかける事もなく、きゃあきゃあと騒いで見ている。

そんな中、私の興味を引くものはただ一つ。

「はぁ…今日も味噌汁うまそう!さば味噌も美味しそう…」

両手を合わせてずずーっと味噌汁を飲む。

「幸せ…」

そう。私は男に欠片も興味が無い。

「かーれーん!」

「うわっ!唯子!」

後ろから抱きついてきたのは生まれた時から一緒で幼なじみの親友、嶋崎 唯子(しまさき ゆいこ)だ。

「まーたさば定食食べてるの?」

「またって何よー。今日はまだ1回目だし」

「いや、一日一回でも多いっての」

ラーメンとチャーハンの乗ったお盆を持って私の前に座る。

「さばの美味しさが分からん奴め」

「ねぇねぇ、たまにはラーメンも食べてみ。ほらほら。さばもちょっとちょーだいっ」

「あっ!ちょっとー」

「はいっラーメン」

さばを半分も取って一口で食べる。そして小さな器にラーメンの麺を入れて私に手渡してきた。

「さば半分も取ったのにラーメン…てか麺だけ!しかも少なっ!」

「まぁまぁ落ち着きなって。今日私の店で母さんに美味しいさば味噌作ってもらうからさぁ」

「まじで」

「相変わらず食いつきいいなぁ」

「麗子さんのさば味噌は宇宙一だし」

麗子さんとは唯子のお母さんの名前だ。

「てかさ、伊月と鳴海相変わらずめっちゃモテてるねー」

「あーそうね」

「急にトーン変わったな」

「うーん、そうねー」

「ねぇ花恋、あんたまだ…」

「あ、今日観たいドラマあったんだ」

「…しょうがない。じゃあ私もそのドラマ花恋の家で見なきゃ」

「何で私の家で?自分の家で見なよ」

「いいじゃん。一緒にお風呂入る仲じゃん」

「唯子が勝手に入ってくるんでしょ」

「花恋だって嫌がってないじゃーん」

「それは…」

「おー?照れちゃって可愛いなぁ」

「うるさい。さっさと食べる」

「えー」

残りのさば味噌を食べながら唯子の店のさば味噌の事を考える。

ワクワクした気持ちで午後の授業に向かう。

まさかそんな自分の事を見ている人間がいるとも知らずに。
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