純情初恋

翠華

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運命の出会い

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   高校生になったばかりの春、私は恋をした。
それは、絶対にかなわない恋だと思っていた。だけど、まさかあんな事になるなんて……


「おは、よ、う…」


   高校の入学式、私は静かに教室の扉を開けた。知らない人ばかりで中学の友達は一人もいなかった。小さい頃から何故か顔が怖いと言われ、誰も私に近づこうとはしなかったからだ。だから友達なんて1人もいない。出来たことも無い。


「はぁ…どうせまた皆私の事を避けるだろうし、目立たない席がいいなぁ…」


   溜息をつきながら自分の席を探していると、自分の手首を誰かの手が掴んだ感触があった。まさかとは思ったが振り向いてみると、そこには1人の男子生徒がこちらを見上げて座っていた。


「君、和田 凛音さんだよね?君の席、僕の前だよ。ウロウロしてたから見てらんなくて声かけちゃった」
「え!?あ、ありがと……え?な、何で私の名前知ってるの?ていうか、私の事、怖く…ないの?」
「名札あるから名前は分かるし、君の事が怖くないのかって言われたら全く怖くないね。逆になんで怖がるの?」


   彼はそう言って笑った。その瞬間、私の心臓はドクンと大きな音を立てて鼓動を速めた。


(?…何だろ?この感じ…)


   私は自分の心臓を押さえながら席に座った。


「だ、だって…私、髪の毛、長いし、か、顔も、な、何か怖がられるし…た、多分、笑った事がないから、だ、と思うけど……」
「ははっ、そんなの関係ないじゃん。髪の毛だって綺麗な黒髪ストレートだし、笑った事なくても十分かわ……ごめん!何でもない。」
「え?な、何…?なんて言ったの?」


   彼は照れくさそうに顔を背けた。私はよく分からなかったが、話しかけてもらえただけで嬉しくて、ついつい調子に乗り、話を進めてしまった。


「あ、そうだ。な、名前…名前、聞いても…いい?」
「あ、そうだったね。僕は和田 海李。海李って呼んで。君と同じ苗字だから、仲良くしてくれよ。」
「そ、そうなんだ…なんか凄いね。運命感じちゃう……って、ごめん!こんな私なんかと運命なんて…」


   その瞬間、彼は何かを言おうとしたが、ホームルーム始まりのチャイムが鳴り、聞くことが出来なかった。


   放課後、私は昇降口を出たところで教室に忘れ物をしてしまった事に気がつき、急いで教室に戻ったが、そこには誰もいなかった。


(まぁ、皆もう帰ってるよね…)


   何だか少し悲しい気持ちになりながら、忘れ物を見つけて帰ろうとした時、


「あ!誰かいる!」


   と声がして、私の心臓はドクンと跳ね上がった。その声の主は、私を見つけるとキラキラした瞳を向け、こう言った。


「私、藍咲 華夢!あなたの親友になりたいの!だからよろしくね!」


   急な出来事で何が起きたのか理解出来ずにいた凛音だったが、自分の頬を伝う涙に気づき、今思っている心の言葉を泣きながら伝えた。


「わ、わたしも、あなた、と、じ、じず、に、なり、たい、で、ず……」
「うん!よろしく!大丈夫、伝わったよ!凛音は泣き虫だねっ」


   私は涙を拭いながら、笑顔で頭を撫でてくれている華夢を見つめた。


   それから、私と華夢は2人で歩きながら話をした。


「ねぇ華夢ちゃん、な、何で…私なんかと、その…親友に、なりたいって、言ってくれたの……?」
「私の事は華夢でいいよ!もう親友なんだから、ちゃん付けしなくていいよ!」
「う、うん…華夢…」
「ふふっ、そうだなぁ、簡単に言えば、凛音が素直だからだよ!さっきみたいに、嬉しい時は泣いて喜んだり出来るんだから」
「で、でも…皆、私の事…こ、怖がって、る、から…だから……」
「凛音の悪い所はそういう消極的なところだよ!教室で海李と話してる時も思ったけど、そんなんじゃ彼氏できないよ!」


   私は、急に海李という名前が出てきて朝の事を思い出し、顔が熱くなるのを感じた。


「え…?か、彼氏…って、何?」
「え!?凛音知らないの!?それは、男の人と女の人が付き合いだした時に呼ぶ…名前みたいなものだよ!」
「そ、そうなんだ…で、でも、私には、ま、まだそういう、のは、早いかなぁ…なんて」
「何言ってるの!もう高校生なんだから、逆にいないとおかしいよ!」
「で、でも…私、好きな人とか…いないし…っていうか、ど、どうして華夢は海李君の事知ってるの?」
「だって私、海李の幼馴染だもん。当たり前だよ!」
「そ、そうなんだ…」


   私は自分の心臓がズキズキするのを感じ、気持ちが悪くなっていくのを我慢した。


「……」


   華夢は何か言いたそうだったが、すぐにニヤッと笑い、そのまま私に手を振って帰ってしまった。私は訳が分からず、とりあえず1人で家に帰る事にした。


   次の日、教室の扉を開けて中に入ると、早速華夢が声を掛けてきた。


「おはよー!凛音!ちょっとこっち来て!海李が話したいんだって!」
「え!?か、海李君…が?」
「そうそう!早く!早く!」


   私はドキドキしながら自分の席に向かった。


   海李君は呆れたような顔をして、


「おはよー。ごめんな。別に話とかはないんだけど、華夢が無理矢理なんか話しろって言うからさ。」
「あ、そ、そう、なんだ……こっちこそ、なんか、ごめん…」


   私はさっきまでのドキドキしていた自分が恥ずかしくなり、思いっきり顔を背けてしまった。


「ええー!何でよ!せっかく席近いんだからもっと仲良くしなきゃ!」
「お前に言われなくても、自分達でそれくらい出来るっつーの!」
「じゃあ、お二人さんで仲良くねー!」


   そう言うと華夢は自分の席に戻ってしまった。


   何となくぎくしゃくした雰囲気のまま、朝のホームルームが始まってしまった。


(私、何か昨日から変…今までこんなに心臓が痛くなったことなんて無かったのに…一体どうしちゃったんだろう……?)


   私は自分の感情に違和感を覚え始めた。
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