5 / 18
Episode4
しおりを挟む
「それでは、そろそろ王様がいらっしゃる頃ですので、私達はこれで失礼させて頂きます」
少し話をした後、ヘルック様は立ち上がる。
「はい。わざわざ忙しい中ありがとうございました」
「それでは失礼致します」
そう言って立ち去るヘルック様とユーリ様の後ろ姿を見送っていると、
「ソレイユもルナお嬢様のように…」
どちらが言ったのかは分からないが、ぼそっと呟いた声が聞こえた。
ソレイユ?人の名前?
何の事か全く分からないが、悩みでもあるんだろうか。
ガチャンっ!
それから数分もせずに大きな音を立てて王様が部屋に入って来る。
「遅くなってごめんね!ルナ!大丈夫かい!?」
ふっくらしたお腹に、全ての指に嵌められた宝石付きの指輪。
うわぁ…これは…。
ベッドの横にある椅子に座ると、ギシギシと音を立て、今にも壊れそうだ。
大きな顔を近づけ、まじまじと見つめられる。
うぇぇ。気持ち悪い。
「可愛い顔がこんなになって…」
私の頬に手を添え、愛おしそうに見てくる。
その瞬間体中に鳥肌が走った。
吐き気を我慢しながら、何とか返事をする。
「だ、大丈夫です…」
「ごめんね!俺が他の女の子ばかりに気を取られてしまったから!」
「い、いえ…」
「これからはちゃんとルナの事可愛がってあげるからね!」
勘弁して下さい。
「何なら今すぐ俺の部屋にルナの物を移動させるよ!」
いやいやいやいや。無理です。
「王様…私、まだ体も細くて体調も良くありません。しばらく療養する時間を頂けませんか?」
「え?そうかい?じゃあ、護衛をつけてしばらく別邸で療養するかい?」
「いえ、私は王都の宿で療養したいのですが…」
「ええっ!?そんなの駄目だよ!王都は危険だし、何があるか分からないよ!?」
いや、貴方が1番危険なんですけど。
「それでしたら、騎士団の方々を護衛に何人かつけて下さいませんか?」
「うーん…でも今は他の任務もあるし、実力のある騎士団員は任務中で国外だし…」
「お願いします…」
必殺うる目に上目遣い!
「うっ、わ、わかった。何とかしてみるよ。だけど、戻って来たら王妃としての準備を進めて貰うよ?」
「分かりました。ありがとうございます」
まぁ、取り引きはウィン・ウィンの関係じゃなきゃ出来ないからね。…最初のうちは。
「じゃあ、俺はそろそろ仕事に戻るよ。出来ればルナのキスくらい欲しいところだけど、まだ目を覚ましたばかりだし、そういうのはこれから体調が良くなってすればいいからね」
「は、はい…」
ゾゾゾゾゾッ。
やばい。これはなかなかの高ダメージだぞ。
王様が部屋を出て行き、ようやくほっと息をつく。
結構喋った方だと思うんだけど、王様は不思議に思わなかったのかな。
まぁ、それよりもこれから王都でどうやってこの国を出るか考えないと。
「はぁ…」
一難去ってまた一難という感じか。
早く好きなだけ歌いたい。ゆっくりしたい。縛られず自由に生きたい。
少し話をした後、ヘルック様は立ち上がる。
「はい。わざわざ忙しい中ありがとうございました」
「それでは失礼致します」
そう言って立ち去るヘルック様とユーリ様の後ろ姿を見送っていると、
「ソレイユもルナお嬢様のように…」
どちらが言ったのかは分からないが、ぼそっと呟いた声が聞こえた。
ソレイユ?人の名前?
何の事か全く分からないが、悩みでもあるんだろうか。
ガチャンっ!
それから数分もせずに大きな音を立てて王様が部屋に入って来る。
「遅くなってごめんね!ルナ!大丈夫かい!?」
ふっくらしたお腹に、全ての指に嵌められた宝石付きの指輪。
うわぁ…これは…。
ベッドの横にある椅子に座ると、ギシギシと音を立て、今にも壊れそうだ。
大きな顔を近づけ、まじまじと見つめられる。
うぇぇ。気持ち悪い。
「可愛い顔がこんなになって…」
私の頬に手を添え、愛おしそうに見てくる。
その瞬間体中に鳥肌が走った。
吐き気を我慢しながら、何とか返事をする。
「だ、大丈夫です…」
「ごめんね!俺が他の女の子ばかりに気を取られてしまったから!」
「い、いえ…」
「これからはちゃんとルナの事可愛がってあげるからね!」
勘弁して下さい。
「何なら今すぐ俺の部屋にルナの物を移動させるよ!」
いやいやいやいや。無理です。
「王様…私、まだ体も細くて体調も良くありません。しばらく療養する時間を頂けませんか?」
「え?そうかい?じゃあ、護衛をつけてしばらく別邸で療養するかい?」
「いえ、私は王都の宿で療養したいのですが…」
「ええっ!?そんなの駄目だよ!王都は危険だし、何があるか分からないよ!?」
いや、貴方が1番危険なんですけど。
「それでしたら、騎士団の方々を護衛に何人かつけて下さいませんか?」
「うーん…でも今は他の任務もあるし、実力のある騎士団員は任務中で国外だし…」
「お願いします…」
必殺うる目に上目遣い!
「うっ、わ、わかった。何とかしてみるよ。だけど、戻って来たら王妃としての準備を進めて貰うよ?」
「分かりました。ありがとうございます」
まぁ、取り引きはウィン・ウィンの関係じゃなきゃ出来ないからね。…最初のうちは。
「じゃあ、俺はそろそろ仕事に戻るよ。出来ればルナのキスくらい欲しいところだけど、まだ目を覚ましたばかりだし、そういうのはこれから体調が良くなってすればいいからね」
「は、はい…」
ゾゾゾゾゾッ。
やばい。これはなかなかの高ダメージだぞ。
王様が部屋を出て行き、ようやくほっと息をつく。
結構喋った方だと思うんだけど、王様は不思議に思わなかったのかな。
まぁ、それよりもこれから王都でどうやってこの国を出るか考えないと。
「はぁ…」
一難去ってまた一難という感じか。
早く好きなだけ歌いたい。ゆっくりしたい。縛られず自由に生きたい。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
聖女追放 ~私が去ったあとは病で国は大変なことになっているでしょう~
白横町ねる
ファンタジー
聖女エリスは民の幸福を日々祈っていたが、ある日突然、王子から解任を告げられる。
王子の説得もままならないまま、国を追い出されてしまうエリス。
彼女は亡命のため、鞄一つで遠い隣国へ向かうのだった……。
#表紙絵は、もふ様に描いていただきました。
#エブリスタにて連載しました。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる