最有力王妃候補に転生しましたが、何がなんでも回避しようと思います

Episode5

私が目を覚ましてから約1ヶ月。

ようやく泊まる宿が決まった。

長かった。

結局あれから王様が何度も説得しに来たり、物で釣ろうとしてきたり、最後にはいじけてきたりしてめちゃくちゃ大変だった。

承諾してくれたと思ったらこれだもんな。全く、先が思いやられる。

私自身、1人で歩けるまで回復するのにだいぶ時間がかかってしまった。

｢んー…あたたっ｣

伸びをするとまだ体には痛みがある。

これはまだ完治には時間がかかりそうだ。というか、そもそも完治するのか？何か呪いでもかけられてそうなんだけど。

窓の外を眺めると、下では使用人達が馬車にせっせと荷物を運び込んでいる。

やっと王都に出られる。

これは療養という名の"情報収集"だ。

もちろん療養も目的の1つだが、それはあくまでも表向き。

まずはこの国の情報を集めて、この国を出る為の策を講じなければ。

転生して約1ヶ月間、部屋から1歩も出られなかった。

常に王様の部下(見張り)が1人以上は部屋にいて居心地が悪いし、外の空気が吸いたいと言っても、

｢今はお体を休めて完治させる事だけをお考え下さい｣

そう言われるだけ。

1ヶ月間も部屋から出られないなんて信じられないでしょ。

本当にストレスだらけの日々だった。

唯一の救いといえばヘルック様とユーリ様がたまに会いに来てくれる事と美味しいご飯がお腹いっぱい食べられるって事くらいかな。

おかげでだいぶお肉がついて健康な体型になったし、顔色も良くなった。

あの時の死人のような顔や不健康な体はもうすっかりなくなり、更に美少女っぷりが際立つ。

でも、私には時間がない。

来年までに何かしら行動が起こせなければ2度目の人生も終わりだ。

王様の弱みでもこの国の弱みでも何でもいい。使えそうなものは何でも使ってこの国から出る。

そう心に誓って首に巻かれたピンクのリボンを取り、サラサラの銀髪を1つにまとめる。

ブルーのワンピースを身に纏い、鏡の前でくるりと回ってみたりしていると、

ガチャ。

扉が開いて王様が悲しそうな顔で入って来る。

｢ルナ、本当に行っちゃうの？ここにいれば安全だし、俺もいるんだよ？｣

自分が好かれてると勘違いしてる。でもその方がこれから役に立つ事もあるだろう。

｢ありがとうございます。ですが、王様が大切にされている王都です。是非直に見てみたいのです｣

｢…そっか。寂しくなるな。なるべく早く帰ってくるんだよ。あと、約束は覚えてるね？｣

｢はい。帰って来たら王妃になる為の準備を始めます｣

｢うん。必ずね。俺は会いに行けないけど、彼らに護衛するように頼んでおいたから、何かあったらすぐに言うんだよ？あと、帰って来たくなったら帰って来ていいからね。準備はしてあるから｣

｢はい。ありがとうございます｣

準備するの早くないですか？

そう心で思いながらも笑顔で返す。

｢じゃあ任せたよ｣

王様が言うと、黙って聞いていたユーリ様ともう1人の美男子が返事をする。