最有力王妃候補に転生しましたが、何がなんでも回避しようと思います

翠華

文字の大きさ
7 / 18

Episode6

しおりを挟む
ガタンガタン。

馬車で揺られながらほっと息をつく。

「大丈夫ですか?」

目の前に座っているユーリ様が心配そうに声をかけてくれる。

「はい。それより、そちらの方は…」

ユーリ様の隣に座り、馬車に乗り込む前からじっとこちらを見ている茶髪の美男子。

金色の目はとても綺麗だが、何だか少し怖い。

「挨拶が遅れ申し訳ありません。私は第一騎士団副団長、レイ・アーカーシュと申します。以後お見知り置きを」

丁寧な言葉遣いだが冷たさを感じる。

「私はルナと申します。こちらこそこれから宜しくお願い致します」

笑顔で挨拶するが、レイ様は1度頭を下げるとすぐに目を逸らす。

「申し訳ありません。レイは少し人見知りでして…」

「大丈夫ですよ。私も人見知りですから、気持ちは分かります」

ユーリ様が少し困ったようにフォローする。

アーカーシュって事はユーリ様とレイ様は兄弟かな。でも、全然似てないし、髪の色も目の色も違う。訳ありかな?どちらにせよ、あまり深く踏み込むのは良くなさそうだ。

それに、今聞いても多分教えて貰えないだろう。まずは心を開いてもらうのが先だな。

「ユーリ様、王都には何か特産物はあるのですか?」

「そうですね。ドゥーレという果物が有名です。他国との交易にもよく利用されています」

「それは甘いのですか?」

「はい。とても甘くて美味しいですよ。パイやジャム、デザート等にもよく使われています」

「それは是非食べてみたいです!考えただけでもお腹が空いてきます!」 

思わず舌なめずりしてしまう。

「「!?」」

すると、ユーリ様とレイ様が驚いた顔で私を見る。

「あ、えっと…」

いけない。ちゃんと静かでおしとやかな"ルナお嬢様"を演じないと。

「ルナお嬢様のそんな顔が見られる日がくるとは思いませんでした」

「…本当にあの"ルナお嬢様"ですか?」

ユーリ様は嬉しそうに笑い、レイ様は知らない人でも見ている顔だ。

私にとっては初めて会う人だけど、レイ様にとっては違うのだろう。

だから冷たい感じがしたのかな。

「申し訳ありません。つい取り乱してしまいました」

「何仰ってるんですか。私はルナお嬢様のそういう表情好きですよ」

ドキッ。

このイケメンめ。言う事もイケメンだよ。

「ふふっ、ありがとうございます。ですが、そういう風に言われるのは慣れません」

嬉しくてつい笑ってしまった。

「………」

「…どうかしましたか?」

何だか2人とも少し顔が赤い気がしたが、すぐに元に戻った。

気のせいかな。

「わぁ…」

外を見ると、色んな店が並び、見た事もない野菜や果物、魚や装飾品などが売られていた。

おおっ。これは凄いなぁ。後で色々見て回りたい。

わいわいと賑わう道を通り、馬車が止まると、

"黄金の輝き亭"と書かれた看板が目に入る。

あれ?見た事もない字なのに読める。そういえば言葉も通じてるし、これは異世界ものでよくある神様がこの世界に馴染めるようにしてくれたとかそういう感じかな。

にしても名前のセンスが凄い。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

私は逃げ出すことにした

頭フェアリータイプ
ファンタジー
天涯孤独の身の上の少女は嫌いな男から逃げ出した。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

処理中です...