猫かぶりのライオン

翠華

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前試合

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「俺らとタイマン張ろうってか?」


「別にいいんじゃね?こんなヒョロい奴1人で十分だろ」


「仕方ねぇなぁ。今の聞いたか?生徒会よぉ。聞いてたよなぁ?こいつからタイマン張ろうって言い出したんだぜ?こりゃあ結果次第で特待生入れ替わっちまっても文句ねぇよなぁ?」


言いながら出席番号2番が前に出てきた。


全く、特待生の俺が"提案"すればこいつらはあくまで俺の"提案"に乗っただけ。生徒会も教師もこいつらを止める必要が無い。特待生の俺から言い出してんだから。


こういうのがあるから力が全ての学校は面白いよなぁ。


生徒会のメンバーは全員黙ってこちらを見ている。


え?何?何も言わないの?全部勝手にやって下さいって事?


「じゃあ俺かお前のどっちか1人が戦闘不能になったら試合終了って事で。人生まで終了しねぇようにちゃんと気をつけろよ」


いや、何か本当に話進んでるんですけど。本当に誰も止めないの?親善試合遅れちゃいますよ?


てか、出席番号2番じゃなくてじぃに人生終了させられちゃうんですけど。


「では、私が審判を務めましょう」


ちゃっかり副会長が出てくる。


いや、このタイミングで出て来てしかも審判かい。


いつの間にか周りに人が居なくなり、俺と出席番号2番だけが真ん中に取り残される。


「それでは、試合開始!」


合図と共に出席番号2番が手をボキボキ鳴らしながら近づいてくる。


「手加減なんて期待すんなよ」


言うと、思いっきり殴りかかってくる。


それをしゃがんでかわし、出席番号2番の胸元に入り込む。


隙だらけじゃん。自分より小さい相手と戦う時は力じゃなくて頭を使うんだよ。ま、こういう時本当に体が小さいのも悪くないなと思うんだけどね。


そのまま潰れない程度に大事な所を蹴り上げる。


「っぐぁぁ!」


大事な所を押さえながら後ずさりし、ドスンと大きな音を立てて倒れ込む。


「そこまで!」


呆気なく試合が終わり、周りはかなり驚いた様子だ。


「いやぁ、無事終わって何よりです。大丈夫ですか?」


「…くっ、そ…」


「ああ、あんまり動かない方がいいと思いますよ。多分痛いですから」


出席番号2番は涙目になりながら俺を睨みつける。


「さ、次は誰が相手をしてくれるんですか?」


「今何が起こったんだ!?」


「てめぇ何しやがった!」


「何か武器隠し持ってんじゃねぇか!?」


「もういい」


低い声が体育館に響く。会長だ。


「本当ですか?良かった。安心しました」


自分で終わりにしちゃうとカッコつかないしなぁ。なんて。


「それでは、今から親善試合を行います。試合に参加する生徒は先程説明した順に試合を行いますので、体育館中央に集まって下さい」


まだ落ち着かない空気の中、淡々とプログラムを進めていく副会長。


しっかりしてんなぁ。


集まっている周りからの視線に居心地の悪さを感じながら体育館中央に向かう。
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