ヤクザ娘の生き方

翠華

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嵐の前(黒田 優視点)

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「………」


「…あったかい…」


「目が覚めたか」

 
「あれ…とっち?」


「どうした?」


「何でこんな所にいるの?何でウチおんぶされてるんだっけ?」


「………」


「そういえば、ウチどっかに連れてかれてたような…」


「まだ少し寝ぼけているんですね。貴方は学校で眠ったままなかなか帰って来なかったので私達が迎えに来たんですよ」


「…そうなんだ。ごめんね、面倒かけちゃったね」


「ったく、全くだぜ。世話かけさせやがって」


「さっちも来てくれたんだ」


「僕もいるんだけど」


「まっち」


「………俺も」


「かっちも…皆ありがとう」


花子さんは本当に何も覚えていない様子でふにゃふにゃと笑う。


----2時間前----


桜組屋敷にて。


「ただいま帰りました」


「おぅ、叶真達か。入れ」


「失礼します」


俺達は桜組の七代目に引き取られ、空いた部屋を一人一部屋ずつ使わせて貰える事になった。


まだこの屋敷に来てほんの数日しか経っていないが、皆とても親切に接してくれる。本当の家族のように。


「今日の見回りはどうだった?」


「そうですね。あまり変わりありません」


「子供のくせに子供っぽさがねぇな。まぁ、今までの環境じゃ仕方ねぇだろうが、ここじゃもっとわがまま言っていいんだよ。全員好きに生きろ。俺ら大人がちゃんと受け止めてやるから」


「………」


「何でそこまでしてくれるんすか?引き取ってもらったとはいえ俺らは赤の他人すよね?」


咲也が言う。


「はははっ、こりゃ一筋縄じゃいかねぇな。ま、正直言うとお前ら全員の過去を調べさせてもらった。だから全部知ってんだ。それを承知の上でお前らを引き取った。もう家族だ。他人じゃねぇよ。それに…」


急に七代目は寂しそうな顔をする。


「…そうだな。俺はお前らに賭けたんだ。勝手な事だって分かってる。でも、情けねぇ事にそれ以外の策が思いつかねぇ」


「何の話ですか?」


訳が分からない。どういう事だ?俺達全員、そんな顔を七代目に向けている。


「…話さなきゃいけねぇな。お前らを引き取ったからって利用するような事をしていいはずがねぇ」


「七代目、それは…」


「翠、大丈夫だ」


「どういう事ですか?」


「…花子の事だ。あいつは…」


「飛春様」


その時、部屋の前から女性の声がした。


「鈴音か。どうした?」


「先程、少し嫌な予感が致しまして。花子お嬢様がまだお帰りではないのが心配です」


「…鈴音の予感はよく当たる。まずいな。今日は友人と遊びに行くと言っていたが、どこへ行くか聞いてはいないか?」


「いえ、何も聞いておりません」


「そうか」


「あの…」


「どうした優?」


「帰りに飲食店の中に友人三人と入って行くのを見かけました」


「それでは、私が探して参ります」


「いや」


少し考え込んでいた七代目は顔を上げて俺達を見る。


「叶真、皆で花子を探して来てくれないか?」


「分かりました」


「すまねぇな。大事な娘だ。お前らに任せたい」


七代目の姿は堂々としているが、俺はなんだか縋るような目に見えた。


「任せて下さい」


叶真もやる気だ。全く、昔から他人の事には本気になるのに、自分の事は疎かにする。そういう所は気に食わない。


何故もっと自分を大事にしないのか。今まで自分しか大事にしてこなかった俺からしてみれば、理解出来ない。


桜組の屋敷を出た俺達は中桜区の隅から隅まで探し回った。


「ったく!どこ行きやがったんだよあいつ!」


「これだけ探してもいないって事はまさか隣の北桜区とか南桜区まで行ってるんじゃないの?」


「可能性はありますね」


「いや、まだ探してないとこがある」


「え?もう遊びに行きそうな所は全部探しましたよ?」


「遊びじゃなかったら?」


「はぁ?ちょっと咲也、分かるように言ってよ。僕全然意味わかんないんだけど」


「だから、桜組の家政婦も言ってたろ?嫌な予感がするってよ」


「まさか…誘拐、ですか?」


「有り得なくはない話だろ。ここらを仕切ってる桜組の娘だぜ?」


「…そうですね」


「急ぐぞ」


叶真は少し焦って見える。


施設に花子さんが来てから叶真も咲也も雰囲気が少し明るくなった。それに、桜組の養子になって、皆前向きに将来の事を考え出している。


何だか少し寂しい。俺の世界が壊れていくようだ。


いっそ消してしまおうか。俺や真白には出来るだろうけど、叶真や咲也や奏明には無理だ。優し過ぎるから。


「優」


「?」


叶真が心配そうにしている。


「大丈夫か?」


「はい。大丈夫ですよ。早く行きましょう。花子さんが心配です」


「ったく、下手くそかよ」


咲也が頭をぽんと叩いてくる。


「僕の目は騙されないよ」


「……俺も」


「…そうですね。でも今は花子さんを見つけるのが最優先です。急ぎましょう」


叶真達が気に入ってしまったのなら仕方ない。


受け入れるというよりは、諦めという方が正確だ。


廃校になった学校に着くと、花子さんは友人に守られるように倒れていた。
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