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動き始めた影
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七代目の部屋。
花見から帰って来てすぐ報告に来た。
「今日は落ち着かないようだな。どうした?」
「七代目に急ぎで報告があります」
「何だ?」
「今日花見に行ってきたのですが、その際、森の中に黒薔薇組の倉庫を見つけました。黒い薔薇の模様が倉庫に書いてあったので間違いありません」
「それで?」
「倉庫の中に密輸されたと思われる武器や戦車がありました」
「数は?」
「武器は見ただけでも数百万、戦車は数十台です。もしこのまま奴らが仕掛けてきた場合、勝ち目は薄いかもしれません」
「戦車なんてよく密輸出来たな」
「最近静かだと思ったらそういう事の」
「奴らついに動き出したか」
七代目は深刻そうに考え込んでいる。
それはそうだ。これは桜組や中桜区に住んでる人の命に関わる事だ。非道で知られている黒薔薇組が大量の武器と戦車を得た事で中桜区は確実に破滅に近づいている。
「おい、何してる」
七代目が言うと、障子が開いてとっち達が入って来る。
「俺達に出来る事はありますか?」
「ったく、聞いてやがったな」
「俺達に出来る事やらせて下さい」
どうしたんだろう。とっちの様子がおかしい。いつもより不安定に見える。
「お前らは普通の学生だ。ヤクザじゃねぇ。出来る事は首を突っ込まねぇ事だ」
「でも…」
「聞いちまったもんはしょうがねぇ。忘れるんだ。いいな?」
「………」
七代目の圧力に皆立ち尽くしている。
「まだ情報が足りねぇ。武器や戦車の正確な数と保管場所をはっきりさせたい。翠、頼めるか?」
「はい。かしこまりました」
「ではこれで解散。お前らも早く寝ろ」
叶真は悔しそうな、悲しそうな表情だ。
七代目の部屋を出て、とっち達の後ろを歩く。
「……とっち」
皆足を止める。
「ちょっと時間ある?」
「………」
「皆、ちょっととっち借りるよ」
とっちの手首を掴んで引っ張って行く。
「お、おい」
「分かりました」
「僕はもう寝る」
「……俺も」
さっちは不安そうだったが、皆先に部屋に戻った。
「ね、ちょっとウチのお気に入りの場所行かない?」
「………」
とっちは黙ったまま頷いた。
それから少し歩いて大きな桜の木が立っている庭に着く。
すぐ近くの縁側にとっちを座らせ、ウチも隣に座る。
「ここさ、毎日母さんが桜見る為に座ってたんだ。ウチのお気に入りの場所」
「………」
「桜、綺麗でしょ。昼間に見ても綺麗だけど、夜見ても綺麗なんだ」
「………」
「母さん、ほんとにこの桜の木が好きだったんだ。桜が咲いてない日も毎日ここに座って眺めるくらい」
「………」
「だからさ、一度だけ聞いた事があるんだよね。何で桜咲いてないのに木見てるの?って。そしたらさ、『桜が咲いてなくても木は立派に立ってるでしょ?母さんはこの桜の木の全部好きなんだよ』って。正直よく分かんなかったけどさ、いつの間にかウチもこの桜の木が好きになってたんだ。だから桜が咲いてる時も咲いてない時もたまにこうやってここに座って見るんだ」
「…全部好きなのか」
「そう。珍しいよね。皆桜の木は桜が咲いてる時しか見ないのに、母さんは毎日見てたんだよ」
「そうか」
「ね、とっち、不安な事があるなら話して。ウチ、この桜の木と同じように皆の事好きなんだ。だからさ、いつも笑ってて欲しい」
「ふっ、俺はこの桜の木と同じって事か」
笑ったとっちの顔は苦しそうだった。
花見から帰って来てすぐ報告に来た。
「今日は落ち着かないようだな。どうした?」
「七代目に急ぎで報告があります」
「何だ?」
「今日花見に行ってきたのですが、その際、森の中に黒薔薇組の倉庫を見つけました。黒い薔薇の模様が倉庫に書いてあったので間違いありません」
「それで?」
「倉庫の中に密輸されたと思われる武器や戦車がありました」
「数は?」
「武器は見ただけでも数百万、戦車は数十台です。もしこのまま奴らが仕掛けてきた場合、勝ち目は薄いかもしれません」
「戦車なんてよく密輸出来たな」
「最近静かだと思ったらそういう事の」
「奴らついに動き出したか」
七代目は深刻そうに考え込んでいる。
それはそうだ。これは桜組や中桜区に住んでる人の命に関わる事だ。非道で知られている黒薔薇組が大量の武器と戦車を得た事で中桜区は確実に破滅に近づいている。
「おい、何してる」
七代目が言うと、障子が開いてとっち達が入って来る。
「俺達に出来る事はありますか?」
「ったく、聞いてやがったな」
「俺達に出来る事やらせて下さい」
どうしたんだろう。とっちの様子がおかしい。いつもより不安定に見える。
「お前らは普通の学生だ。ヤクザじゃねぇ。出来る事は首を突っ込まねぇ事だ」
「でも…」
「聞いちまったもんはしょうがねぇ。忘れるんだ。いいな?」
「………」
七代目の圧力に皆立ち尽くしている。
「まだ情報が足りねぇ。武器や戦車の正確な数と保管場所をはっきりさせたい。翠、頼めるか?」
「はい。かしこまりました」
「ではこれで解散。お前らも早く寝ろ」
叶真は悔しそうな、悲しそうな表情だ。
七代目の部屋を出て、とっち達の後ろを歩く。
「……とっち」
皆足を止める。
「ちょっと時間ある?」
「………」
「皆、ちょっととっち借りるよ」
とっちの手首を掴んで引っ張って行く。
「お、おい」
「分かりました」
「僕はもう寝る」
「……俺も」
さっちは不安そうだったが、皆先に部屋に戻った。
「ね、ちょっとウチのお気に入りの場所行かない?」
「………」
とっちは黙ったまま頷いた。
それから少し歩いて大きな桜の木が立っている庭に着く。
すぐ近くの縁側にとっちを座らせ、ウチも隣に座る。
「ここさ、毎日母さんが桜見る為に座ってたんだ。ウチのお気に入りの場所」
「………」
「桜、綺麗でしょ。昼間に見ても綺麗だけど、夜見ても綺麗なんだ」
「………」
「母さん、ほんとにこの桜の木が好きだったんだ。桜が咲いてない日も毎日ここに座って眺めるくらい」
「………」
「だからさ、一度だけ聞いた事があるんだよね。何で桜咲いてないのに木見てるの?って。そしたらさ、『桜が咲いてなくても木は立派に立ってるでしょ?母さんはこの桜の木の全部好きなんだよ』って。正直よく分かんなかったけどさ、いつの間にかウチもこの桜の木が好きになってたんだ。だから桜が咲いてる時も咲いてない時もたまにこうやってここに座って見るんだ」
「…全部好きなのか」
「そう。珍しいよね。皆桜の木は桜が咲いてる時しか見ないのに、母さんは毎日見てたんだよ」
「そうか」
「ね、とっち、不安な事があるなら話して。ウチ、この桜の木と同じように皆の事好きなんだ。だからさ、いつも笑ってて欲しい」
「ふっ、俺はこの桜の木と同じって事か」
笑ったとっちの顔は苦しそうだった。
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