すれ違った相手と恋に落ちました

獅月 クロ

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朝から起きてからおはようございます!と連絡をしたのはいいが、よくよく考えたら朝一に連絡するなんて気持ち悪いんじゃないかと思う

向こうから返事が来ないまま朝の支度していれば、玄関ではなく窓から入ってきた兄と目が合う

「 おはよ!海君ー!ってなに!? 」

「 どういう心境で帰ってきやがったくそ兄貴! 」

床へと脚をついた瞬間にその胸ぐらを掴み引き寄せる
俺より身長が低いがスラッとした体系は高く見えるが今そんなことは関係無い
こっちがどれだけ心配したか、分かってるのか!?と問いただせば兄は苦笑いを浮かべる

「 ごめんね、ちょっとネット喫茶で隠れてた....あ、でもちゃんと家賃や光熱費は払ったよ? 」

「 また誰かに借りたんじゃねぇだろな? 」

「 ....大丈夫!貰ったから! 」

「 貰ったって.... 」

経済面を誰からか援助されてると言うか、お金を貰ったり借りたりして過ごしてるのは知っていた
けれど、俺からしてみたら正直嫌だ

「 ....家賃なら俺が払うし、光熱費までは....もう少しバイトの時間増やせば払える。もう、借りないでくれ 」

「 兄として弟にそんな事、押し付けるなんて出来ないよ! 」

「 兄なら一ノ瀬さんみたいにしっかりしろよ!! 」

「 !! 」

我慢の限界だった
金を払い続けるのは俺のため、弟の気持ちなんて何一つ考えてないんじゃないかって思う兄に腹が立ってつい名前が出た

「 一ノ瀬、って....颯のこと? 」

「 リク?そうだよ....陽妃さんのお兄さんで.... 」

兄が何故知ってるか分からないが、名前を知ってるなら何かしら面識はあるのだろ
俺は謝ることを忘れ、目線を外し学生鞄を持てば玄関へと歩いていく

何も言わない兄にやっぱりそんな程度なのかと呆れる俺は鍵を開けて外へと出ようとすれば告げた

「 海君は颯みたいな完璧なお兄さんがいいんだね....ごめんね、こんなお兄ちゃんで.... 」

「 !! 」

俺が怒ったのに何故、謝るのか分からない
振り返った時には窓のカーテンは揺れ動き兄は何処かへと立ち去った

「 違う....完璧じゃなくてもいいんだ.... 」

弟である俺も完璧な人間ではない
なのに兄にそんなスペックを求めてる訳じゃ無いんだ

只、金銭面でバイトをしてる身である俺も協力できればそれでいいと思ってたのになんでこんな事になんだ....

「 くそっ!! 」 

ガンッ!と鉄の扉を殴りジンッと痛む感覚に自然と鼻先は痛くなる
兄が借金取りから追われてないか、とか色々心配してたのに何事もないように笑うから腹が立つんだ

いや、一番腹が立つのは俺自身なんだ

「 金持ちになりたい.... 」

金があれば困らない
こうやって意味のないことで喧嘩することもないのに....

もっとバイトしよう、土日もバイトの時間を朝から21時まで入れれば入れば多少給料
も増えるだろうと思った

玄関の扉を閉め、重い足取りで学校へと向かった

「 よう!海斗!今日はいつにも増して暗いなー? 」

「 あぁ、はよ....ちょっとな 」

「 なんかあれば頼れよ?おっ、御前の好きな社長の到着だぜ 」

「 別に好きじゃ.... 」

友達と出逢う場所はいつもあの会社の前
道路を挟み、高級車は通り過ぎればビルの前へと止まる
毎日見るから好きだと言われても可笑しくないが、別に社長が好きなわけでもないのだが....

「 !! 」

昨日見た、秘書らしき人の後に出てきた社長である一ノ瀬さんは何処か眠そうに欠伸を漏らしていた
そして今日は少し後ろ髪に寝癖がある

可愛い、と一瞬思ったこの気持ちはなんだろうか

「( 寝癖あるって言ってあげたい.... )」 
 
跳ねた後ろ髪を指摘すればどんな反応をするだろうかと考えていれば、二人はいつものようにビルへと入っていく

「 ....遊びに誘ったら来てくれるだろうか 」

「 えっ、誰を誘うんだよ? 」

「 あ、いや....なんでもない 」

リクさんの話を口実に、遊びに誘えばあの人は来てくれるだろうか

仕事が忙しくて来ないかもしれないとそう思いながら、立ち止まりふっとスマホを見ればリクという名の、昨日遅くまで話をしてくれた人とすれ違った時間を見てもう一度振り変える

「( やっぱり、そうだ.... )」

すれ違った人はあの一ノ瀬さんに間違いないと確信し、ポケットにスマホを入れ学校へと向かう

" 昨日話していた女性を食事に誘う前に、俺のオススメの店を紹介して検証して欲しいんですがダメですか? "

" いつ? "

" 土曜日とかどうでしょ? "

" 仕事終わりならいいよ "

" ありがとうございます! "

嘘を塗り固めた大学生として会う約束は出来たけれど、彼を金持ちだと知らないフリをしてオススメの店に連れていくのは少しだけ気が引ける

それでも、このチャンス....逃したくはなかった



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