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しおりを挟む社会人の一週間はあっという間に過ぎると思う
仕事、仕事と追われて過ごしたこの一週間
残りも後僅かだと徹夜続きの土曜日
眠いと欠伸を漏らし書類とにらめっこしていれば太股で振動するバイブレーション
『 ん? 』
取引先からの連絡かとスマホを出し、開けば画面上にはすれ恋にメッセージが一通届きました、と言う内容を見て
そのままなんとなく開いた
『 カイからだ....あ....! 』
俺は仕事に追われて、肝心なことを忘れていた
土曜日、今日は彼と食事をする約束をしてたんだとメッセージの内容を見て思い出す
" 今日、楽しみです!19時30分に駅前の時計塔前ですよね! "
俺が其処にしようと、時間と共に決めていたのにその俺が忘れているという失態を犯した
『 あー、19時.... 』
スマホにも時計が有るにも関わらず腕時計を見る俺は、現在既に18時半を廻ってることに眉は寄る
目の前には残っている書類、土曜日だからと気力が抜けてスピードをいつもより遅くしていたから残ったんだと思うのは早い
「 社長。月曜日の会議にて使う書類の....ってどうしましたか? 」
社長室へと入ってきた黒澤君に俺は、眠いのなんて忘れて顔を上げる
『 19時半までに終わると思うか? 』
「 この書類ですか?社長次第ですね。手伝うので頑張りましょ 」
『 ....滅茶苦茶、頑張る 』
遅れたらごめん、と謝罪のメッセージを机の下にスマホを置き打ってから本格的に書類へと目を通していく
「 本気になるなんて、誰かと約束でもしてました? 」
『 ....していた。だから焦る 』
「 貴方は時間に煩いですからね 」
遅刻されるのも、するのも気に入らない俺は特に自分の約束をすっぽかすのが好きじゃない
他人事のように軽く笑う黒澤君に笑い事じゃないと思いながら、何度か時計をチラ見しては書類を確認はしてはサインを書く
『 これ、此所が間違いだからやり直しを.... 』
「 これは明日になりますね。出勤しましょう 」
『 今週休みなしかよ....まぁ、仕方ないか 』
自分の会社なのに自分でブラック企業にしてると思うが、今は逸れどころじゃない
この無駄に溜めてしまった書類の整理を優先するべきと脳をフル回転させていく
腕時計に19時30分のアラームをつけた為に、鳴り響いた音に舌打ちを漏らす
『 ギリギリ終わったか? 』
「 終わりましたね。途中まで送りましょう 」
『 頼む 』
運転免許書は持っているが、車を後から代行に頼むのも面倒なために黒澤君によって駅まで送ってもらうことにした
コートを羽織り、駆け足でエレベーターへと行きそのまま車へと乗り込めば腕時計へと視線を落とす
『 20時か.... 』
向こうに着く頃には20時前
もし、前みたいに10分前からでも待っているのなら待たせてしまってると思う俺に、黒澤君はルームミラーをチラ見し告げる
「 焦った貴方を見るのは久々ですね。もう北風が強いので風邪を引かないようにしてくださいね 」
『 あぁ....ボックスに入ってる香水とってくれるか?汗臭いのはな.... 』
「 これですね、本当これ好きですね。まぁ、俺も匂いは嫌いじゃないですよ 」
色んな人に出逢うときに使う香水であり
30代になって尚更、体臭を気にするようになった為にほんのり香る程度の香水を使うことにした
受け取った香水を手首につけ首筋へと擦り付けてから、くんっと身体の匂いを嗅ぎ
多少は誤魔化せるかと思い、香水を元の場所に直して貰い外へと視線を向ける
駅の近くで止まった車から降れば黒澤君に礼を言う
「 社長、明日の仕事はどんな事があっても来てくださいね? 」
『 分かってるさ。俺が遅刻するわけがない 』
「 ではまた、デート頑張ってくださいね 」
『 デートじゃねぇけど....ありがとう 』
相変わらず一言多いなと、車から離れてその車が信号の方へといけば俺は振り返り少し早歩きで向かった
『 はぁ.... 』
時計塔の直ぐ下、其処には周りの視線など気にもしない少年は、敢えて一度着替えてきたように白い息を吐き待っていた
焦って、只待たせたことを謝りたくて脚を向けた
密かに響く靴の音と共に此方へと顔を向けた、その姿に驚くも同時に察していた俺は密かに笑みを画く
和泉 海斗 やっぱり御前がメッセージ相手だったんだな
俺の顔を見るなり小さく笑みを溢す彼に近付く
『 カイ.... 』
「 リクさんですね? 」
『 っ....! 』
「 カイ、改めて海斗です。御仕事お疲れ様です。焼肉屋でお会いした方ですよね? 」
この子は、なんて礼儀正しくて優しい子なんだと思った
遅れた相手を何一つ嫌な顔せず微笑んだことに、俺は色々考える余裕なく
近づき、年下である妹を可愛がる感覚でその身体へと抱き締めていた
「 えっ、 」
『 ....焼肉屋で会ったことは覚えている。すまない、遅れた.... 』
「 あ、いいえ!御仕事忙しいのご存じなので!! 」
『 ....あ、そうか.... 』
抱き締めてしまった事にハッとすれば、何事もなく離れてからそのコートに触れ笑う
『 近くで見るとデカかったんだ。187㎝だっけ?190あるかと思った 』
「 ギリギリ無いですよ。リクさんは.... 」
ふっと俺を見下げた海斗の様子が変わったことに、首を捻るも彼は直ぐにはにかみ目線を外す
「 あ、オススメの店教えます! 」
そう言って歩き出した、海斗は戸惑ってるようにも見える
そりゃ、男に抱き付かれたら戸惑うか
其れにしてもメッセージの内容がすっと入ってきた理由は納得できて、満足だ
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