すれ違った相手と恋に落ちました

獅月 クロ

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海斗が選ぶ店に来て、もし俺(リク)へ、後にメールして来ようとなんて言われたら俺はどんな風に反応すればいいんだ

わぁ!初めて来た、なんてテンションは初日に会ったリクのキャラでは無いが無表情のまま食べ進めても、今回みたいに気にしてしまうのだろ

前の店でも良かったことは良かったが、海斗が誘う店の方がいい

「 此所です。焼肉屋 紅桜 俺は肉の事しか詳しくないので、是非食べて欲しくて 」

連れてこられたのは駅から15分ほど離れたらこじんまりとした外観の店

入り口も小さく、其なりに年期が経った店を教えられ少しだけ海斗が紹介する店のイメージと違った為に驚いた

俺がよく立ち寄るような店とよく似てるが、海斗はもっとこうハイテクな現代風の店を教えるのかと思った

『 ......焼肉 』

「 焼肉嫌いですか!?前に来たときにオススメ聞いてきたので、失敗したくないタイプなのかと.... 」

『 失敗?あぁ、確かにしたくない 』

ポツリと呟いた言葉に焦りを見せる海斗へと目線をやり頷く

変なの注文して味が微妙だったなんて嫌だからオススメを必ず食べようと思っている
そんな挑戦的な性格ではないからなと思う俺は自然と笑ってその広い背を軽く叩いていた

『 そこまで自信有るなら楽しみにしてる。入ろうぜ 』

「 はいっ! 」

明るく返事をし、先に扉を横へと開き
中へと入れば直ぐに足元は段差で靴を脱ぐようになっている
まるで旅館の入り口みたいな印象がある風情ある和室が広がる

外観は狭くてボロいのに内装はそんな事はなく、逆にちょっと心弾む

「 いらっしゃいませ 」

「 予約していた和泉です 」

「 はい、和泉様ですね。足元にお気をつけてお入り下さい 」

失礼しますと、丁寧に告げた海斗に続き靴を脱ぎ靴箱へと入れ、着物を着た女将のような老人の後ろを着いていく

「 完全予約制なんです。俺は元バイトしてたから一週間前とかでもいいんだけど、三ヶ月先とか予約が埋まってるんですよ 」

『 そうなのか? 』

完全予約制の店は材料に拘ってることは知っている
来る人数のお客相手にどれだけその時に一番いい品を提供するか拘っている

そんな内装や予約制だと言うことに高そうな店なんじゃないかと考えるが、海斗がバイトしてた場所なら本人は値段知ってるのだろうと気にするのを止めた

「 此方の席へどうぞ。直ぐに御持ちしますね 」

「 ありがとうございます 」

和の座敷へと入り、襖を開けば中は焼肉屋というイメージが余りない
部屋みたいで、目の前にはテーブルがある

女将は先にテーブルの中心部をスライドさせ、開けば中央には焼く部分が現れる
なるほど、こんなときは古風じゃないのかとちょっと面白いと畳に座り胡座を組めば
目の前に座った海斗は何処か緊張したように口元がひきつっている

『 どうした?御前が連れてきたのになんで緊張してるんだ? 』

「 それは....一ノ瀬さんだからですよ 」

『 ん? 』

俺だから緊張する意味がわからないと首を捻り答えを待つ
メニュー表がないこの店は店員が持ってくるまで待つのだろ

どんな肉が来るのか楽しみにしながら待ち
海斗の話を聞く

「 ....メッセージしてる時も緊張してました。こんな高校生の俺と話してくれることに.... 」

年齢差に少しだけ胸が痛んだ

あの日に遊んだときは緊張感はまるで消え去っていたのだが、それは飯を食い終わった後

結果、彼は背伸びをして胸を張るより自然体になれる場所が一番なんだ

『 そうか.... 』

「 あ、嫌じゃないですよ!俺がまだ子供で.... 」

『 出よう 』

「 えっ? 」

大人に合わせようと一生懸命に此所を選んできたのだろ
バイト代で生活してるような彼に、此所の値段はきっと無理をする

俺が払うと言っても誘ったからと払うと断固して貫きそうだ
そんな真面目な部分が彼には有るために俺は立ち上がり、海斗の方へと行き腕を取り引き上げるなり歩き出す

「 っ!?一ノ瀬さん!? 」

「 お客様!? 」

『 後で交代で他の2人を連れてくる。俺達は帰る 』

折角、予約してくれたが此所は御前には似合わない

悪いが場所を変えようと、
彼の手を引いたま外へと出た


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