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番外編
06
しおりを挟む歩いて帰ってもやっぱり足首は痛くて、階段から落ちたときに捻挫でもしたんだと思った
町行く人々は気に求めず歩き去る横をゆっくりと左足を引き摺って歩く私は情けなくて涙が流れ落ちた
「 陽?どうした? 」
『 っ....お兄ちゃん....! 』
聞こえてきた車は私の直ぐ横で止まる
真っ黒なベンツに貼られたプライバシーガラスは下がり、顔を見せたお兄ちゃんの姿を見て限界だった涙は溢れ落ちる
「 陽妃!?おい、どうしたんだ! 」
車から降りてきたお兄ちゃんに只抱き着いて泣く私は、言葉を言えなかった
朝から怖くて逃げてたのに都合良く解釈できたと喜んでたら男子達の些細な苛めや、無くなった自転車とか、痛む脚とかに色々あって全ては伝えれなかった
それでもお兄ちゃんは優しく頭を撫でて、車に私を乗せれば黒澤さんは車を走らせた
どうした?その言葉は優しくて、色々あったと掠れた声で答えた
どうやって家に戻ったか余り覚えてなくて、ソファーに座ってお兄ちゃんから渡された冷たく濡れたタオルを顔に当て、泣いていればお兄ちゃんは床に膝を付き足首の捻挫をテーピングして手当てしてくれる
「 晩御飯は俺が作りましょうか? 」
「 んや、冷蔵庫に昨日の残りあるからそれ温めてくれる? 」
「 これですね、分かりました 」
冷蔵庫の前に立つ黒澤さんに頼んだお兄ちゃんはテーピングが終わり軽く包帯を巻けば顔を上げ私の片手に触れてくる
少し泣き止み落ち着いた呼吸と共にタオルから顔を出し、お兄ちゃんを見れば親指で目元をなぞり眉を下げ笑みを向けてきた
「 辛いことがあったのか?俺でよければお兄ちゃんに言ってみ?聞いてやる 」
『 ....っ、お兄ちゃん 』
優しいお兄ちゃんを少しでも疑った自分を殺したくなる
こんなにも触れる手が声が温かい人が人を殺す訳がない
『 ....クラス、違う男子に階段で脚引っ掛けられて、こかされたり....自転車、不注意なのにとられて....お兄ちゃん買ってくれたのに.... 』
「 自転車位また買ってやるさ。そうか、痛かったな....よく頑張って歩いて帰ってきた.... 」
お兄ちゃんが入学祝いにと買ってくれた自転車だった、それが不注意で取られて
立て続けに痛む脚に泣いてたのに優しく撫でてくれる手は心地好かった
『 ん.... 』
銃を持ってたことを聞こうと思ったけれど、それはお兄ちゃんから言わないのなら止めた
撫でてくれる手に落ち着けば、お兄ちゃんは横へと座り直し私の肩を抱き寄せ胸元へと耳を当てるよう抱き締めてきた
『 っ.... 』
聞こえてくる心音に安心すると同時に色んな感情ゴタゴタになり、涙はまた流れ落ちる
「 陽は可愛いから皆が虐めたがるのだろ....俺の弟だもんな.... 」
『 私が....不出来だから、どんくさくて何も出来ないから....お兄ちゃんみたいに、優れてない.... 』
可愛くもなければ、お兄ちゃんみたいな程に完璧でもない
だからこそ胸元を押して首を振れば彼は少し眉を下げ困った表情を見せてから私の手を取り自らの頬へと当てた
「 俺だって完璧じゃない。御前が泣くと悲しくなる....仕事だって失敗して黒澤君によく叱られてる。でも....守りたいものの為に俺は努力でそれをカバーするんだよ 」
『 努力....? 』
「 そう、陽だって努力して可愛くなった。メイクもいつのにか上手くなって。お兄ちゃんより勉強熱心なのも知ってる....陽妃は努力の天才だよ 」
お兄ちゃんにメイクを褒められたことは無かった
可愛いとは言ってくれるけど、ケバいとかもう少し薄くしろとか言われてた為に驚いたし
それよりも仕事で失敗して黒澤さんに怒られると言ったお兄ちゃんに、本当なの?とばかりに彼へと目を向ければ頷いた
「 えぇ、陽妃さんの前では完璧な兄を気取ってますが仕事では怒られてばかりなんですよ 」
『 お兄ちゃんが.... 』
「 俺が完璧だって?馬鹿を言うな、完璧な人間等....この世には居ないんだよ。皆何処かに欠点を持ってるから其をカバーしあって生きていくんだ 」
お兄ちゃんは完璧だからこそ一人で生きて私を育ててくれたのかと思っていた
仕事も出来るのをモデルの時に知っている
けれど、それがもし全部私の前だから頑張ってただけならお兄ちゃんは相当な意地っ張りだ
『 そっか、そうだね.... 』
「 そうさ。人は自分より優れる人を見ると嫌になる。陽が苛められるのは向こうにとって陽の方が優れてるから。だから陽は堂々とするといい 」
私の顎に触れ顔を上げさせたお兄ちゃんと目が合う
拓斗さんが言ってた通りの事をお兄ちゃんが言ってることに何となく嬉しくなった
「 自信を持て。御前の行動は間違いでもなければ優れてないわけでもない。苛めぐらい嘲笑ってやればいいんだよ 」
『 そんは無茶な....私はお兄ちゃんじゃない.... 』
「 んや、俺も小さい頃は相当苛められてたからなぁ。陽は俺と似てるよ 」
『 えっ? 』
「 泣きはしなかったけどな? 」
お兄ちゃんが苛められてた?
そう見えないし、思ったこともなかった
寧ろ初めて聞いたような幼い頃の話に耳を疑った
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