すれ違った相手と恋に落ちました

獅月 クロ

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番外編

13

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あれから陽妃には連絡をいれてはなかった

正確には、出来なかったんだ

俺にはそんな勇気は無く、只嫌われる事を望み俺と会わなくても忘れてしまって欲しいからこそ、自然消滅を狙っていた

けれど、それは同時にボスから目をつけられる事になるのも分かっていた

「 今日は随分と外れてるっすね。颯先輩のパネルじゃないのに 」

「 分かってるよ.... 」

「 命中率って気持ち一つで変わるの、本当面倒っすよね 」

いつものように射撃訓練をしてる最中に、学校が始まる前に遊馬はやって来た

気を荒くしてる俺の元に来ては欲しく無かったのだけど、言われることは其こそ的に的中してるからこそ
態とらしく溜め息を吐き実弾を入れ直し手元に置けば視線を向ける

「 そうだね。それで、様子を見に来ただけじゃないんでしょ? 」

「 流石勘がいいっすね。面白いの入手したんで、あげます 」

「 ん? 」

軽く笑い学生服の胸ポケットから小さな紙袋に入ったものを取り出し、差し出してきた
それは僅かな厚みがあり、まるでお金の札でもくれるのかと思う位だが
後輩であり、部下の彼がそれはすることはない

なら別の物だと推測は出来、紙袋を受け取り遊馬をチラリと一度見てから中を開けば数枚の写真が入っていた

女性の顔と姿が写った姿、けれど体格だけでも写っている男の雰囲気にも見覚えはあり息が止まるような感覚がした

「 これって.... 」

「 俺が直接見た訳じゃないっすけど、仲間が偶々見掛けて写真撮ったらしいっす。片方の女性は多分、つーか、絶対....颯先輩っすよね? 」

「 .... 」

女性、いや女装してる姿はまさに颯そのものだった
上手くウィッグやらメイクで誤魔化してるけど、俺達は彼の息子である陽妃ちゃんの女装姿を見ている
その姿や雰囲気によく似た颯の女装姿を間違えるわけがない

それに、片方の男性は海斗なのは雰囲気で分かる

「 海斗が女性に会った日だね.... 」

「 やっぱり片方、海斗っすよね。いや~余りプライベート踏み込みたくないけど、偶々写真貰ったからさ 」

偶々、いやきっと颯を見張っている者が撮ったのだろうね

随分と遠回しに俺へと写真が届くと思う

直接渡すか話せばいいのに、海斗の友達である遊馬にも見せると言うことは
悪意があってこの写真を撮ったのだろ

人の感情を揺するには丁度いいからだ

「 それで俺にこの写真見せてどうしたいの?二人が出逢っても気にしないんだけど 」

数枚の写真を全て見れば俺が予約したレストランで話してる部分やラブホテルまで入るところまである

颯のことだから監視がいることを知ってると思うんだけど、写真の様子からは気付いて無いようにも見える
よっぽど、慣れない女装に気を向けていたか、海斗に気を取られたかしないと
颯は匂いや音で、俺達の同族は見抜くはずだ

それ以外と考えるなら、この写真を撮った人は颯にとって身近な人間だと思う

匂いが近くにいても気にしないほどの人物か....

「 俺もどうでもいいんですけど、ボスから海斗にアプリを紹介しろって言われたので....怒られる前に、拓海さんに許可貰おうかなって 」

「 は?アプリって、あの? 」

「 そそ、今流行りの" すれ違いアプリ "っすよ 」

ボスが何を考えてるか分からなくなりそうだ

運命的な演出をするのにアプリを使ったらいいと進められ、俺も使いそして陽妃も使っていた

確かに運命的な演出は出来たけれど、今度は海斗に使うことを遊馬が進めると言う

待てよ....なんでボスは今回、二人が出逢ったことがアプリ以外の方法だと知ってるんだろ?

それに海斗にアプリを紹介するってことは、必然的にもう片方の人にも会わせると言うこと

不意に手元にある写真を見れば颯の姿がある

「 ....ボスは颯にアプリを.... 」

もし、俺の推測が間違ってなければ
ボスは俺と陽妃が運命的なように出会うようにして、そして陽妃の好意を引く事を命令してきた

それが、颯にも同じ事を下された命令だとするなら俺と颯は同じレールの上を歩いているの?

「 そんな....また、" 同じ事 "をさせようとしてるのかな.... 」

「 またってなんっすか? 」

俺と颯は正反対であり、同じだった
そして任務もまた似ていた

それは互いに感情が生まれ消すときも同じだった

颯の息子を俺へと好意を向けさせ
俺の息子を颯へと好意を向けさせるのが目的なら....

此は全てボスが仕組んだ事なんだ

そんなのあんまりだ....

「 陽妃を傷付け、そして颯や海斗にも傷付けるなんて....俺が好きな人達を....っ! 」

あぁ、違うんだ....

全部、俺がこんな気持ちになることを
あの人にとって計画通りなんだ....

「 No.646、話があるんですがいいですか? 」

当然と現れたその姿

全て知ってるのに態と何も知らない顔をして、俺の無くした感情を見るために玩んで
楽しんでるのだと分かる

俺はそれに、抗う術を知らない

「 なにかな?ボス 」

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