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番外編
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しおりを挟む直ぐに海斗がアプリを始めたという事は遊馬から聞いた
それは、颯との距離が近くなることでもあり俺の心配はストレスへと変わっていた
けれど、どんなに悩んでも命令は休みを与える暇などなく下され
深夜に暗殺を終えた後に何気無く一度家に帰ろうと思い脚を向ければ
朝の支度していた海斗と、窓から入ってきた俺と目が合う
一瞬、人を殺してきたばかりの自身と会いたくは無かったのだけど
顔を背けて逃げれば、既にある溝が深まるだけで精一杯に普段通りに挨拶をする
「 おはよ!海君ー!ってなに!? 」
「 どういう心境で帰ってきやがったくそ兄貴! 」
それは一瞬の出来事で床へと脚をついた瞬間に胸ぐらを掴まれ引き寄せられた
疲れていたから簡単に掴まったのか、いや海斗だから何でも許せちゃうからこそ彼の行動には余り気にはならないんだ
こっちがどれだけ心配したか、分かってるのか!?と問う海斗な言葉に苦笑いは浮かぶ
なんか、怒ってるのかと思えば心配してくれてた事に素直に嬉しくなり
家に帰ってきてよかったとも思う
「 ごめんね、ちょっとネット喫茶で隠れてた....あ、でもちゃんと家賃や光熱費は払ったよ? 」
「 また誰かに借りたんじゃねぇだろな? 」
「 ....大丈夫!貰ったから! 」
「 貰ったって.... 」
実際に、仕事でもらった給料で光熱費とか払ってるのだけど海斗になんの仕事をしてるのかハッキリ伝えてないから、借りて来たんだと思われても仕方ない
「 ....家賃なら俺が払うし、光熱費までは....もう少しバイトの時間増やせば払える。もう、借りないでくれ 」
「 兄として弟にそんな事、押し付けるなんて出来ないよ! 」
そこまで考えるなんて、大人になったね
なんて染々に思っていたのだけど海斗の我慢の限界は切れたように、告げられた名前に張り付けた笑顔は消えた
「 兄なら一ノ瀬さんみたいにしっかりしろよ!! 」
「 !! 」
やっぱり、颯と面識は既にあって
海斗は颯の事が気になってるのだと察した
「 一ノ瀬、って....颯のこと? 」
「 リク?そうだよ....陽妃さんのお兄さんで.... 」
颯、彼だけは海斗が好きになっては駄目な相手なのだけど颯の優しさやお兄さん的な質は部下でも気に入る人が多い
遊馬が、父親だからという理由でベタ惚れするのが理由じゃない
けれど、こうなる運命だと分かって防げれないことや、海斗の憧れが俺が敵わない颯だということも寂しくなる
任務で疲れた後からなのか、尚更胸に突き刺さるような感覚に息苦しくなる
言葉を発しない俺に、目線を外し学生鞄を持った海斗は玄関へと歩いていき
鍵を開けて外へと出ようとしたときに振り絞った言葉は、いつもの俺では言わないような情けない言葉だった
「 海君は颯みたいな完璧なお兄さんがいいんだね....ごめんね、こんなお兄ちゃんで.... 」
「 !! 」
俺はどんなに嫌でも、暗殺を続け借金を抱えるような男だ
陽妃にもまともに顔向け出来ないし、連絡すら取り合ってない
駄目な兄であり、父親だけど颯はちゃんと陽妃と向き合い、そして海斗の事も気にかけてると思う
死にたがりや暴食さえなければ、完璧すぎる颯に、俺は何十年経っても勝ち目はない
「 今日は、駄目かも知れない.... 」
逃げるように窓から出て走って影に隠れ、何故か溢れる涙に笑ってしまう
息苦しい感覚と笑おうとしても泣いて、涙を流すのは男として、そして組織の犬として駄目だと理解してる
「 あぁ....どうしたら、いいの.... 」
海斗はきっと颯を本気で好きになるのは早い、それは海斗が素直であり恋愛経験が少ないわりには困った人を助けたいと思う正義感と、俺を気にしすぎたオカン気質もある
それに比べて、颯は恋愛に奥手で相手が俺の子であり海斗だと知れば少し距離を置こうとするだろ
でも、颯はどんくさくて守って上げたいと思いたくなる要素もある
二人が出会えばお互いをフォローしあって、好きになるのは必然的なんだ
それは颯も悲しむけど、海斗も悲しむ結末になったしまう
「 ....颯に海斗を殺させたくはないし、海斗が死ぬのも嫌だ.... 」
あの人の前では気にしないと言ったけれど、やっぱり我が子には変わらない
颯のように好きな人について語って欲しいし、俺に紹介するなんていい初めても良かった
「 なんで、颯なの....他の人を好きになるなら、まだ良かったのに.... 」
俺にとった親しい人がこれ以上、悲しんで死ぬのは見たくはないし望まない
なのに、それを回避出来ない気がして不安であり、失うのが怖くて震える
涙が止まらないほどに情緒不安定な感情をどう、誤魔化していいか分からずフラフラと行く宛など分からず歩き始めた
「 っ、苦しい.... 」
呼吸が上手くて出来なくて前から見れないほどに涙で濡れて
貼り付けた仮面は無意味な程に、今の俺はきっといつもの俺では無い
こんな情けない姿を、海斗や颯に見せたくないし誰にもバレたくはない
そう思うのに....そう、望みが叶わないのが現実だ
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