淡い瑠璃唐草の如く

獅月 クロ

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考えろ、と言われたが考えた所で分からなかったし
客が使わなかった布団に押し倒された時には、瑠璃はいつものように被さり身体を開かせた。

「 ぁ、あっ…!ンッ…! 」

「 帯を解かなくてもいい、立場だと言っただろ?俺ぐらいになれば枕をする相手など選べるんだ 」

ごく普通に言葉を繋げれながら、挿入した内部を擦り上げる瑠璃に悩ましげな表情を向け、喘ぐしか出来ない俺は彼の言葉を解読するほどの余裕は無い。

「 ぁあっ、じゃ…なんで、あの人は……。通うの…ンッ! 」

「 枕だけが目的じゃない者はいる。他人に話せない会話や、女とは違う癒やしを求める者。そしてなにより、通う男娼に好意を持つ者だと様々だ 」

「 こう、い?……ッ…ぁ、あっ…! 」

奥を突かれるだけで目の前は光ったように真っ白になり、後孔だけで快楽を拾うようになった身体は簡単に欲を高め、勃起した陰茎から先走りを垂らす。 

それを彼が片手で擦り上げ、促すから、
全身に力が入り、爪先を丸めれば、矢を放ったように跳ねた。

「 あァ、あぁッ…!! 」

何度も行われた行為によって、薄くなった量の少ない精子は瑠璃の手を汚し、ソレを擦り付けるように亀頭を擦るから、掻き立てられる欲に戸惑う。

「 いっ、らめっ……!あぁ、もぅ!るり……やだ、ぁっ、あっ! 」

「 はっ…相手が客なら、拒否権など存在しないぞ。嫌がるな、受け入れろ 」

「 むり、むりっ…やだ、しんじゃう、ぁあっ! 」

達したばかりで陰茎も、後孔も擦られて頭が馬鹿になるぐらい攻め立てられる快楽に戸惑って、
逃げたくても逃げれない程に中を擦られると理性が砕けて解けていく。

射精じゃないモノが込み上げれば、彼の着物を握り締め、喉を反り、腰を震わせながら先端から何かが飛び出す。

「 ン゙ンッ~~!!! 」

「 覚えろ、潮吹だ 」

「 ぅうっ……はっ、ぁはっ、ぁ!るり、もう、やめて…やだ、ぁ、あっ!ごわれる、から! 」

グズグズに泣いて、其れでも腰を揺すぶるのを止めなくて、俺の好きだという場所を突かれ、
先端を擦られると、尿意に似たものが迫り、
それを我慢した後に油断すれば潮吹きと言われた透明なものを吐き出しては、散らしてしまう。

「 あぁあっ!! 」

俺が何度もイッても、結局…瑠璃が射精することは無い。
風呂場で言われた通りに俺だけが、イかされ続けるんだ。

瑠璃にとって、この行動に教育以外の理由が無いから欲が高鳴ることは無いのだろう。
挿入するから勃起する、まるで機械仕立てのカラクリのように彼は何度も俺の内部に゙ 男 ゙を教え込んでいく。

「 蘭、いい子だ 」

けれど、終わる頃に此処に来て付けられた名を呼び、優しく額へと口付けを落す瞬間だけは、胸が満たされる程に心地がいい。

散々、ヤられた後に気を失うように寝てしまえば、起きた頃には見覚えのない部屋だった。

誰かしらに運ばれたのだとぼんやりと思い、起き上がれない程に痛む腰に眉は寄る。

「 っ……いっ…… 」

腰も痛むけど喉も痛い
場所を気にせず喘いだ結果、喉を痛めてることに水でも貰おうか、と着物を整えて部屋を出て通路を歩く。

結局、まともな事は教わらなくて……
好意の意味を知るより先に、行為の方を教え込まれた。

「( 俺は、こんな調子で客を相手に……いや、したくないけど…… )」  

時間はもう…残り二日。 

客を相手にすることに腹を括らなければ此処で食っていけない。
他の男娼が稼いだ金で飯を食わせて貰うと思うと、申し訳ないと思う。

「( 稼がなきゃ…… )」

結局俺は、濡れ衣を着せられ売られた男。 
それ以上でも以下でも無ければ、瑠璃のように相手を選べる立場や、振り袖新造や禿かむろのようにまだ枕をしなくていい年齢でもない。

遅咲きと言われる程に商品価値として低い年齢の俺を、相手にしてくれる客が現れるだけマシなのか。

台所にある水桶の前に来て、水を飲みながら
フッと水面に映る自身の顔を見る。

「 ほんと、色気も無いよね…… 」

俺みたいな者は下働きとして雑務をこなしていた方がいいぐらい、色気も無ければ美貌も備わってない。
何故、こんな俺が男娼になれると思って売ったのかさえ疑問だよ。

溜息を漏らし、顔を洗っていれば雇われの台廻しがやってきた。

「 おや、これは瑠璃太夫のお墨付きの新入りだったな? 」

「 あ、うん…… 」

頷いていいか分からないけど、新入りって部分だけを納得すれば、俺より若い少年は熱燗の乗ったお盆を向けて来た。

「 これ、瑠璃太夫の部屋で注文があったやつ。持っていってくれよ、俺は料理運びたいから 」

「 はい……。部屋はどこですか? 」

「 一緒に着いていくからちょっと待ってなー 」

受け取ったお盆を突っ立って持っていれば、台廻しの少年は軽い軽食の料理を並べて置き、歩き出した。

「 こっちのお座敷。瑠璃太夫の馴染みの人が来てるから、いい部屋だぜ 」

「 そうなんですね…… 」

「 お忍びだろうけど、いい立場の役人だろうなぁ。お侍さんの雰囲気あったぜ 」

クツクツと笑いながらどんな相手が来てるのか話すけど、俺はそれが気に入らなかった。
どんな人が来ようが興味がないからだ。

瑠璃が、俺が寝てる間に他の人を相手してると思うと……何故か、胸が痛む。

「 この部屋って……ちょっと、入るの待った方が良さそうだな 」

「 え?っ……! 」

座敷の前で立ち止まった台廻しは俺を歩くのを止めれば、密かに開いている襖の隙間から中を覗いた。

俺は、その光景に硬直し息を飲んだ。


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