不器用な大富豪社長は、闇オクで買った花嫁を寵愛する

獅月@体調不良

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ペットショップを出る寸前、スタッフの人に声を掛けられた。

「 宜しければ、ペットサロンをご利用しませんか? 」

そりゃ、見る限り遊び終えた汚らしい犬が、カートの中とは言えど居ると気になるでしょう。

けれど、この姿は…まだ前菜に過ぎない。

「 いえいえ、遊んでる最中に寄っただけですので、これからまた汚れると思います。自宅で洗いますので大丈夫ですよ 」

「 おや、そうですか…?では、只今割引キャンペーンとお菓子のオマケ付きをやってますので、良ければ御利用下さい 」

「 ありがとうございます。では、失礼します 」

愛想笑いを向けた湊さんは、直ぐにその場を立ち去った。

店内を出て、カートの日陰カバーを広げながら、彼は呟く。

「 ド素人のやるペットサロンに連れて行くわけがないでしょう。それに、獣の姿で毛なんて切られたら…人型の時にショートカットになり過ぎてしまう。そんなの…… 」

「( へぇ、よく知ってるんだ…。まぁ確かに…今の姿の毛が長いのって…人の姿である私が、スーパーロングヘアだからなんだよね… )」

有名な、アフガンハウンドより長くは無いにしろ、モサッとした長毛種に似てるのは、人の時が、ロングヘアだからだ。

だから、見ず知らずの人が、犬の姿の時に切ると、人の姿になった時、かなり短めのショートヘアになってしまう。

でも…それを知ってるのは、よっぽど獣人について調べないと分からない事だ。

「( もしかして…この一ヶ月で、色々調べてくれてのかな? )」

湊さんにしろ、実那斗さんにしろ…。

彼等は、私が思ってる以上に、私の事を考えてくれてるのかも知れない…。

「 さて、この辺りから公園になりますので、歩きましょうか 」

「( おぉ!はいっ! )」

コートの横の部分の扉が開かれ、お散歩コースに辿り着いた事に喜んで、地面へと下りてみた。

「( !? )」

「 おや、どうしました?ってまさか! 」

両足が地面についた瞬間に、手足はバラバラに宙に浮かせ、直ぐにカートの方へと戻ると、何かを察した彼は、黒手袋を外すなり地面へと片手をついた。

「 これは…熱いですね…。申し訳ありません…確認不足で…。火傷はなせっていませんか? 」

「 クゥー…( それは大丈夫だけど… )」

そう、人工池が近いとは言えど、アスファルトは予熱を施されたフライパンみたいに熱かった。

火傷する程では無いにしろ、このまま歩くと、ジワジワと焼かれるような感覚が永遠にしそうだから、歩く気にもなれず耳は下がる。

「 そうですね…。もう少し先にある、木々が多く…木陰になってる場所まで行ってみましょうか 」

「( ありがとう…。お願いします )」

怪我が無い事に安堵した彼は、カートを押して歩き始めた。

「( そう言えば…この一ヶ月、引き篭もってエアコンガンガンの部屋にいたから気づかなかったけど…。今…7月の後半なんだ )…ハァ…ハァ… 」

昼過ぎとは言えど、7月後半の公園は暑い。

本来なら遊んでる人も多いだろうが、散歩してる人は殆ど存在せず、居るのはベンチで座ってるお年寄りぐらい。

そんな中で、彼は大きめのカートを押してるのだから、私より暑いのでは?と考えてると、木陰に入ったタイミングで、カートの動きは止まった。

「 流石に、暑いですね 」

「( 大丈夫ですか…?)」

フッと息を吐いた彼に、日陰カバーの中から顔を向けようとすると、カートのフチにバサッと音を立てて、黒い布が掛けられた。

それは紛れも無く、彼が着ていた燕尾服の上着だ。

「( 普段、キチンとしてる執事さんもやっぱり人間なんだ…良かった )」

此の真夏に、燕尾服を汗一つかかず着てるような人なら、どんな超人なのかと驚くけど、ちゃんと暑がってくれてるなら安心するほど。

いや、安心以上だった…。

「 室内生活に慣れ過ぎてしまっていた…。こんなに…外が暑いなんて… 」

「( ……………どれだけ着てたんだろ )」

カートに掛けられていく黒のジャケット、黒のピケベスト、ネクタイ、黒手袋等が、
次々に置かれ、終いにはサスペンサーの紐までも、カートの中へと落ちた。

「 さぁ、ドックランに着きましたよ。どうぞ、遊んてくださいな 」

「( もう貴方、帰って方がいいんじゃないかな!?全身毛で覆われてる私より暑そうだけど!? )」

ニッコリと微笑んだ彼の顔色はあまり良くない為に、そっちの方が心配でしかない。

「 私の事は気にせずに、どうぞ 」

「( 本当に…大丈夫かな、ちょっと遊んで…。疲れたフリをして帰ろう )」

此処まで連れてきてもらって、直ぐに帰るのは申し訳ないから、取り敢えずひんやりとした地面に下りて、言われた通りに大型•超大型犬専用のドックランの敷地へと入った。

「 では、どうぞ 」

「( ありがとうございます… )」

広い方に行こうとして、彼の方に振り返ると、ドックランの外にカートを置き、彼自身はドックラン内にある、木陰の下に設置されたベンチに腰を下ろした。

ちゃんと日陰で座ってくれる様子を見て、少しだけ遊んでも大丈夫そうだと判断し、
此の昼間でも、遊びに連れて来られてる短毛の犬達の方へと行ってみる。

「 ワフッ!! 」

「 ワゥ? 」

「( やばい、私…犬と、会話できないんだ! )」

獣人だからって、犬と喋れる訳じゃない。

ずっと人間として生きてきて、只犬の姿になれるってだけの獣人。

そんな獣人が、いざ…獣化した時に同じ犬科と喋れるのかって問われたら、紛れもなくNOだ。

犬達の方に近付いたのはいいけど、向こうが興味津々に寄ってきた事に硬直してると、
犬は普通にお尻の匂いを嗅ごうとして来るから、無意識に拒絶するように身を翻し、交わしてしまう。

「( 犬の挨拶、断ったと言うことは… )」

「 ヴッ…… 」

「 ヴォンッ!! 」

「( うわー!ごめんなさい!! )」

挨拶をしない奴は仲間じゃ無いとばかりに、急に社交的な態度から、不機嫌になって同時に吠えられると、私は急いで逃げようとすると犬達は追い掛け始め、中には飛び掛かって咬もうとして来る者も現れた。

「 キャゥンンッ!!( ごめんなさい!挨拶が嫌なわけじゃなくて! )」

「「 ヴォンッ!!ヴォンッ!! 」」

どんなに私が謝ったところで、犬達に言葉が通じる訳でもなく、ドッグランに悲鳴と吠える声が響くと、それまで暑さバテしていた飼い主達の視線は向けられる。

「 ジョン!!追い掛けたらだめだって!カモン!! 」

「 アポロ!!おいで!! 」

其々の飼い主は、自分の犬達を呼ぼうとするも、何故か、犬達はその声に聞く耳を持たず、目の色を変えて、私の方へと向かって来ると一頭が首元に噛み付こうとし、その両手は腰の方へと向けられた。

「( ちが、これ…盛ってんだ!!っ…!? )」

走りながら、重量のある犬が被さって来た事に、身体のバランスは崩れて転倒すると、その一頭が乗ろうとしてくると、視線の端で何かが動いた。

「 キ"ャウンッ!!! 」

雄犬の悲鳴が響き、その犬が地面に倒れた事で、他の犬達の動きは止まった。

「( え、湊…さん? )」

そう、私がちらっと見た時には百m以上先にあるベンチに座っていたはずなのに、気づいたら何故か超大型犬を地面へと転がせていたんだ。

余りの早業に、飼い主さん達も硬直して驚く程。

「 飼い犬如きが…ウチの子に、盛らないで頂きたい… 」

地面へと倒してる犬に向け、静かに圧を掛けたような声で告げた彼は、犬が耳を下げて尻尾を丸めたのを見て、そっと離した。

その犬は急いで立ち上がり、呆然としてる飼い主の後ろに隠れては、私もまたゆっくりと立ち上がってから、湊さんの足元に行く。

「 俺の…アポロがすみません!!普段は、こんな事…しないので、びっくりして…。本当にすみません 」

「 いいえ、お互いに怪我が無くて良かったです。此方こそ、つい止めに入ってすみません 」

「 いえいえ!!寧ろ、ありがとうございます 」

アポロと呼ぼれた犬は、恐らくグレートデーンと言う犬種だろう。

その体格は、私より遥かに大きくて重みもあるが今は湊さんに怯えて縮まっている。

見た目より幼いのだと思う。

「 では…私達は、他の広場に行きます。行きましょう 」

「( はい…。ドッグランは、私には向かないな… )」

彼を見上げては、少しだけ肩を落とし、その場を後にし、カートの横を歩きつつ犬が余り居ない場所を探した。

結局、離して遊べるところなんてなくて、
子供達が遊んでる公園の付近にあるベンチで、
少し休むことになったんだ。

彼の足元におすわりをして、その光景を眺めていると、小さく問われる。

「 獣人というのは…珍しいが故に、生きづらいですね 」

「( ……そうですね )」

子供じゃないから、子供とは遊べない。

犬じゃないから、犬とも遊べない。

犬のふりをしてるけど、子犬でもない大きな成犬だから、人とも遊べない。

公園に来たところで、寂しいだけだ。

「( 私は…人にも、獣にもなりきれない…。遊びたかった事は…もう、大人になり過ぎたから無理なんだ… )」

「 ふぅー……仕方ないですね 」

「( ん? )」

落ち込んでる私は、急に膝に手を当て立ち上がった湊さんを見上げると、彼は白いシャツの袖を捲り上げる。

「 私と遊びましょう。それで我慢してくださいね? 」

「 !!ヴォッフ!!」

そうだ、此処はドッグランではないけれど…
飼い主の傍にいるなら遊べるんだと思い出した。

彼は砂場の方に行くと、両手が汚れる事を気にせず掘り始めた為に、私も真似て穴を掘って遊んだ。

「 わー!おーきなあなぁ!」

「 このすなで、ぴらみっどつくろうぜ! 」

「 いいですね?作り方、教えてくださいな 」

「「 うん!! 」」

自然と子供は集まって来て、一緒に砂遊びをすることになった。

それが楽しくて、時間を忘れて楽しめたんだ。


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