不器用な大富豪社長は、闇オクで買った花嫁を寵愛する

獅月@体調不良

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10 見守る者から救う者へ

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- 実那斗 視点 -


彼女と初めて出会ったのは、彼女がまだ物覚えがハッキリする様な、年齢では無い頃だろう。

湊には、歳の離れた妹が居た。

「 みなと様!今回、初めて妹を連れてきました! 」

当時8歳だった湊は、上級階級の者達が集まる夜のパーティーに、眠そうな子を抱っこしては、
6歳の俺に見せに来た。

「 妹…?妹が…いたのか? 」

「 はい!この春で1歳になります。とても
可愛らしいでしょう 」

黒髪の湊とは違い、色素の薄い金の髪をした子供は、目を擦りながら小さく欠伸を漏らす。

「 まぁ…子供は可愛いな。だが、随分と…似てないな? 」

「 私と母親が違うので…。父の再婚相手の子供です 」

「 あぁ…、なるほど… 」

再婚する事は上級階級だろうとある為に、気にはならないが…
余りにも、その母親の方に似ているから、湊の面影は、当時は無かったと思う。

「 でも、可愛いのです…。私は勉強があり、殆ど会えませんが…こうして会える日は、すごく嬉しいのです 」

世襲貴族である神樹家は、代々男は金鈴院家の側近として過ごしてきた。

先代に恩があるらしく、その繋がりからボディーガード兼執事をしてる為に、湊も幼い頃から英才教育を受けていたんだ。

だから、妹が生まれても一緒にいる事は出来ず、こうして会える日は何よりも嬉しいのだと…。

そう、普段見ないような笑顔で話してきた。

「 御前は喜んでるが…その子供は、複雑そうな顔をしてるじゃないか 」

「 色んな音や匂いがしますもんね……。使用人の元に戻して来ます 」

「 そうしてやれ…。あ、そいつの名は? 」

幼馴染みの様な湊が、紹介した子だ。

少なからず、名前を覚えてやろうと問うと、彼は子供の片手を動かす。

「 歌奈かなちゃんです、歌奈ちゃーん。はーいは? 」

「 んん、ぁーい 」

適当な返事をした歌奈と言う子に、湊は笑顔でその頬に口付けを落とす。

「 んーー!可愛いですねぇ~!お返事出来て偉いですねー! 」

「 ぁい……にぃー……くちゃい… 」

「 あー、此処は臭いですもんね。移動しましょう。ちょっと連れていきます 」

「 嗚呼… 」
 
小さな手で鼻を押さえた子供に、湊は直ぐにこの場が良くないと判断し、ホールを出ては通路に向かった。

探すように彷徨いていた、彼の使用人に子供を渡すと、安堵したように何処かに連れて行く。

「 また会えるといいな… 」

「 会えばいい。さっさと勉強を終えてな 」

「 そうですね!妹の為にがんばります! 」

湊は、その日からよく妹の話をしたり、学校にスマホを持ってきては、写真や動画を見せてきた。

鬱陶しい程に聞くが、俺の側近になれば、妹と会う時間はかなり減るのだから、今だけは許そうと…その話を適当に聞いていたんだ。

そんな日々が続く、
湊が、中学1年に上がる3月上旬。

朝から、暗い顔をしている湊に何かあったのかと問い掛けた。

「 何も無いって事は無いだろ?如何かしたのか? 」

「 ……そうですね 」

最近、余り元気もなく…
妹の話をする回数が減っていたから気になってはいた。

その答えを求めるように、湊の口から話すまで待っていると、彼は沈黙を破って告げた。

「 …父が離婚したんです。母の浮気をきっかけに…でも、父は…あの女に似た妹を手元に置きたくないって理由で…別の女性に渡したらしいんですよね… 」

「 は、それ…どういうことだ? 」

「 私にもよく分から無いんですけど…。只…妹は今…神樹家から離れてるのは事実です。家に帰ったら居なくて……他の女の場所にやったって聞いて……私、歌奈ちゃんに…何も出来なかったなって…きっと、寂しいはずなのに…。ごめんね…歌奈ちゃん…… 」

父の言葉に反する事も、妹を探す手立ても子供にはない。

今回の浮気や離婚をきっかけに、俺の父は彼の父親を側近から外したことで、彼の父はかなり荒れたそうだ。

そして、代々執事だった家系を守る為に、湊は中1としての若さでありながら、俺の執事となった。

学校に通う事も無く、只身の回りの世話や護衛をするだけの存在。

俺の周りの同期からは、学校にも行かない先輩が、門の前で待ってると噂や笑い者になっていたが、湊は嫌な顔を一つもしなかった。

寧ろ、此奴からは" 感情 "と言うもの全てが、失われたんだ。

彼にとって唯一の兄妹である妹が、自分の手の届かないところに連れていかれ…。

立場を含め…
良い生活は出来てないと察していたからだ。

「 早く給料を貯めて…早く自立して、早く妹…歌奈ちゃんを探したいです… 」

「 その為には俺も、父の七光ではなく…自分で会社を設立しないとな。湊と妹の為にな? 」

「 お優しいですね…… 」

「 いや、これは俺の為でもある。だから別に優しくない 」

そう、俺だって父が彼の父を解雇しないように止めれば、もう少し湊に学生生活をさせる事が出来たかも知れないし、彼の父が出ていく前に引き止めて、湊の妹の場所を聞く事が出来たかも知れない。

それは俺が子供だった事による、理由でしかないから腹立たしい。

だから、優しくはない。

俺が、自分を自立する為の理由でしかないんだ。

お互いに勉強し、そして何気無く歌奈の行方を探していた。

そんな中、先に見つけたのは湊だった。

「 多分、いいや…歌奈ちゃんがいました!! 」

「 ほぅ、どこに?」

「 私が休日に行った…。地元の小さな祭りで、売り子してたんです!すごく張り切ってて可愛かった…。可愛すぎて…焼きそば5杯食べちゃった 」

当時22歳を過ぎた頃の湊が見つけたなら、
その売り子は、恐らく15歳ぐらいだろう。

「 それは食い過ぎな。で、詳しい場所を教えてくれないか?住んでる付近を特定しよう 」

「 えぇ、もちろんです 」

この頃は、俺も設立した会社の方が安定してた為に、他の事に時間を費やすことは出来た。

ものの3日程で、歌奈の住んでる地域と学校まで特定する事は出来たが、彼女が母親と暮らしてるのを知って、少し距離を置くことにしたんだ。

俺達はあくまでも、歌奈が辛い暮らしをしていたなら…
手を貸そうと思っていた程度だったから。

湊は、俺の許可を得ては、頻繁に彼女に会いに行っていた。

直接ではなく、遠くから観察したりする程度だが、
それは最早…ストーカーと言えるレベルのものだったが、手が出せない兄のもどかしさなのだろう。

「 歌奈…ちゃん、かわいい…… 」

「 盗撮写真を待ち受けにしてる執事…。なんか嫌だな… 」

「 でも、聞いてくださいよ。最近、仕事してる量が多い気がするんですよね。そりゃ私もいつも睡眠3時間程度で働いてますけど…彼女はまだ学生なのに、いくつか掛け持ちしてるみたいで… 」

「 なんかすまん。だが…それは少し気になるな、調べるか… 」

棘のある言い方に、申し訳なく思うが…
学生である彼女が複数の仕事を掛け持ちしてるのは、気になる部分もある。

案の定、調べると4つの仕事を掛け持ちしてるのに、彼女だけが貧乏人の様な格好をして、母親は着飾っていると…。

「 里親…典型的な、毒親だな 」

「 殺していいですかね?許可ください。誰にも知られす…完全犯罪やってみせますから 」

「 それはしないでくれ。ん、どうするべきか……取り敢えず働いてる店に、仕事中の休憩時間、彼女に食事の許可を出してもらうか。まともに食ってないようだし 」

「 表向きはまかないってことですね?その費用は、私の給料から出しましょう。歌奈ちゃんの為に貯金してたので 」

「 あーうん、その辺は任せた 」

別に俺から出してもいいのだが、兄なりに何かしてやりたいらしく、各お店のまかない分のお金は、湊の給料から支払っていた。

それ以外にも、湊は他の使用人を使って、常連客を装ったお菓子の差し入れを渡したり、度々映画のチケットや商品券なども、当たったフリをして贈っていたらしい。

まぁその殆どは…その毒親に取られていたことも、俺達は知っている。

「 おい、てめぇ……俺の妹に手ぇ出してみろ。去勢した後に殺すぞ? 」

「 ひぃぃ!!すみません!!! 」

彼女の里親は、更にエスカレートして行き、終いにはキャバクラで働くことも進めたらしく、
湊は、彼女の客になろうとした奴を片っ端から蹴散らしていた。

「 湊…御前、荒れてないか? 」

「 アハハ、大丈夫です。荒れてないですよ。ちょっと…身の程知らずがウチの妹に手を出そうとしてるのを見て、胸糞悪いだけですよ。ついでに言うと、そろそろあの毒親…葬っていいですかね? 」

「 まだ歌奈には、親がいなければ…ならない。もう少し…我慢してくれ 」

「 我慢ね…。私は出来ますよ…見てるだけなので。只、彼女の心と身体が壊れるのは見たくないんですよね… 」

「 分かってるさ…。俺も、それだけは避けたいからな 」

俺達は見てる事しかしなかった。

その結果、彼女の心と身体を壊してると知ったのは随分と後になった頃だ。

湊が、キャバクラを辞めた彼女が初めた、新しいバイト先が、リゾートホテルだった事を聞き付け、俺に客の素振りをして泊まってほしいと言われた時だ。

どんな仕事をして、立場であるのかは分からなかったから、
一週間程滞在してる期間に見つけられたのは、
最終日だった。

 「 っ…!すみません… 」

「 …構わないが、大丈夫か? 」

通路の曲がり角で、前から現れた色素の薄い金の髪をした、綺麗な女。
 
だが、その顔色は近くで見ればより一層、悪く思えた。

どうした?と聞く前に、彼女は膝から崩れ落ちるように意識を失い、咄嗟に抱き止めた。

「 なっ……ちょ、湊!来い 」

襟元に付けていた無線機で呼ぶと、湊は面倒くさいような顔をして来るが、俺の支えてる人物を見て駆け寄った。

「 え、歌奈ちゃん!?どうして…と言うか、麻酔でも打ったんですか!? 」

「 違うに決まってんだろ。運ぶから扉を開けろ 」

「 あ、はい 」

俺より戸惑ってる湊を呼ぶべきでは無かったと思うが、俺の使ってる部屋に連れて行った後に、彼は他の従業員に話を聞きに行った。

その間、目が覚めるまで近くで本を読むフリをしていたんだ。

金鈴院家専属の医師が訪れ、寝ている彼女の検査をすると、疲労と栄養失調だと告げた。

「 38.4℃の熱もありますし…。此のまま休ませて、起きたら食べれる物を食べさせるとよろしいかと 」

「 分かった。湊、厨房の方にビュッフェを作らせるように伝えておいてくれ。後、食えなかった時用にケーキやデザート類と和食も頼む 」

「 畏まりました… 」

笑みを失ってる湊に頼むのは気が引けるが、彼だからこそ、まともな料理を注文すると信じていた。

目が覚めた後、彼女は熱の影響からかぼんやりとして視界が定まってない様に見えるが、俺に向ける笑顔は、感情を失った湊によく似ていた。

「( 此処まで成長すると……湊に、少し面影が似てるな )」

二人共に色白の美形をして、髪質は柔らかく細い。

別に、湊の顔が好きな訳では無いが…。

彼女を見ていると、気になるものがあった。

リゾートホテルを立ち去るのは気が引けるが、
仕方ない。

彼女には、彼女の生活がある。

そう思った、ほんの一年後だった。

「 あのクソ、女……!!歌奈ちゃんを闇オークションに、売りやがった!!! 」

「 ……流石にもう、俺達が直接関与する必要があるな。少し派手に動くか 」

闇オークションの情報は、少なからず届くものがある。

だからって買う予定は何もなかったのだが、
あの母親が、借金を作った噂を聞いた時点で嫌な予感は的中した。

「 …私はどんな立場になっても構いません。妹が幸せになるなら…。なので、実那斗様のお力を下さい 」

「 その気持ちがあれば十分だ。御前に力を貸す。まぁだが…彼女の幸せを願ってるのは、俺も一緒だから、今後は俺に従って貰うぞ 」

「 承知しています 」

深く頭を下げた湊に、これ以上彼等が傷つくのは見たくない。

あの母親に、金の収入源を手放すと言う選択肢が出たのなら、それに乗る手はないと判断し、俺は闇オークションに参加することにした。

その時間帯、湊にはモニターは一切見せずに、いつでも移動できるように伝えて置いた。

なんせ、闇オークションに参加してる商品に、
人権なんてものは存在しないからだ。

俺も胸糞悪いと思った光景なら、
彼奴は発狂するのが目に見えているからな。

見せなくてよかったと、心底思った。

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