転生したら召喚獣になったらしい

獅月@体調不良

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一章 聖獣への道のり編

1話 召喚獣になったらしい

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雪がちらつく寒い冬に
高校時代からの友達に誘われ夜の海へとやって来た

『 なんで敢えて海なんだ…… 』

「 冬の海って気持ちいいって言うだろ?それに御前は、フラれたばっかだし 」

『 それは言うなって……身体も冷えてんのに心まで冷えるわ 』

砂浜付近で友達が運転していた車を駐車し、厚着のファー付きの黒いコートの釦をしっかりと止め車から降りた

横風が吹き抜ける度に手足から冷えていく感覚がし、ポケットに両手を突っ込み身震いする
こんなことならもう少し着込めば良かったと後悔するほどに寒い

「 ははっ、気分転換って大事だと思うんだよなー 」

他人事のように笑い
後から続くよう降りては俺の横に立ち、
同じく身震いしては足元を見ながら石段から下へと降りていく友達

俺がつい最近に二年間付き合っていた彼女からフラれた事を話したら
それじゃ気分転換に行こうぜ、と気前よく誘ってくれたのはほんの三十分前のこと

いい奴だと思ったのだが、場所を選べよ……

確かに夜遅くまで開いてる店なんて飲み屋しかない、こんな海辺の田舎
気晴らしとして行く場所が無く、海になるのは不自然ではないが他に場所は無かったのか……

互いに住む家、なんて言っても普段は都会の寮生活
大学生の冬休み期間中に実家へと帰還してる為に
こんな夜に男二人でわちゃわちゃ騒いだら傍迷惑にも程がある
やっぱり海かと自身で諦めながら友達の後を追う

常夜灯がポツポツとある程度で、真っ暗と言ってもいいほどに人気もなく薄気味悪い

冬の海はこんなにも、身も心も冷たくさせるものなのかと改めて海へと視線を向け思う

『 気分転換だからこそ、実家に帰ってきたんだ 』

「 初心に戻るってか?御前って案外、繊細だよなー 」

『 五月蝿い……悪かったな 』

白い息を吐き独り言の様に呟いた言葉は拾われた
繊細だと言われ否定は出来ないが、其なりの時期を付き合ってた彼女に突然とフラれたんだ
直ぐに立ち直れる訳がない

お気楽に笑った友達の横顔を見ては常夜灯に沿って沖の方に歩いていく

今は満潮なのか、常夜灯に照らされた海へと続く階段の上付近まで有り、足元まで来てるようにも見える

「 それで、理由はなんだったんだよ?御前は顔は良いのに、夜が下手だったとか? 」

『 なわけないだろ……結婚するまで手は出さない 』

「 えっ、じゃ……童貞? 」

『 ……あぁ、そうだよ。って、それは関係無くてな! 』

心が弱ってるのか、つい流されて言ったが
童貞だと笑われても仕方無い

その辺りはキチンとケジメを付けてる為に将来結婚を決めた相手しかヤらない、と考えてたら二十三歳を過ぎても童貞のまま
周りは経験してる話を聞くし、この友達からも聞いた記憶がある
それを羨ましく思ったことは何一つない

いや、そんな童貞だからって言う話はどうでもいいと友達へと視線を向ければ
立ち止まり此方を見詰める友達は首を横へと捻る

その容姿を見てはふっと違和感に気付く

寒くて目が霞むのか、其とも暗くてよく見えないのか分からないが
こいつの顔がハッキリ見えない気がする

それに、こいつの名前は……なんだったか

「 じゃ、なんだ?ーーにフラれた理由は……」

元カノの名前を告げたのだろ、だが風の音で聞こえない

『 待ってくれ……何か、可笑しい…… 』

「 ーーー、どうした? 」

俺の名前すら聞こえない、呼ぶ声が遠くに聞こえてくる

フラれたことのショックで寝不足だったのが原因か、いや此方に来てしっかり寝てるのだからそんな事はない筈だ

急に酷く痛み始める、頭の頭痛
頭に響くように聞こえる高い耳鳴り

『 いっ…… 』

「 おいっ……急に…… 」

片手で押さえていた手を、両手へと変えて頭の米神辺りを押さえ付け
フラつく足取りをなんとか動かしこの場から離れようと歩くも
視界すらぐにゃりと揺らぎ上手く元の道に戻れない

真っ黒の絵の具に白い色を垂らし、混ぜたように白い灯りを灯す常夜灯は暗闇に飲み込まれていく

『 っ!! 』

一瞬、足元がズルッと滑る感覚を感じ
頭の血の気は引き真っ白になった

海へと落ちる、と思った思考と落下までの速度が遅く感じるほど
その僅かな時間で様々な事が頭に過る

スマホに防水カバー付けていれば良かった、とか 
部屋の電気を切ってなかった、とか
明日の昼飯はそろそろ、おせちではなく別の料理だろうか、とか

考えてる間に身体は背中から暗い海へと水飛沫を上げ落ちていた

「 ーーー!! 」

俺の名前を呼ぶ声は、やっぱりちゃんと聞き取れなかった

冷たい海水によって身体は一瞬で動く機能を失った

常夜灯の灯りがまるで月のように照されてるのが遠くに見える

嫌な耳鳴りも頭痛も無くなり
聞こえてくるのは徐々にゆっくりとなる心音だけ

『( あぁ、俺は……ここで、死ぬらしい…… )』

全てを悟ったときには
意識は暗い闇の中へと落ちていた
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