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第二章 学園生活始動
26 癒しかわいい子犬系男子?①
しおりを挟む「……えー……今日はここまでにしておきましょう。授業を終えます。解散」
そう言って、先生は教科書を閉じて授業を終えた。学園に入学してから数日が経ち、この学園生活にも少しずつ慣れてきていた。
「ノア」
隣の席で授業を受けていたレイラ様は、教科書を閉じてこちら向いた。
「はい。お嬢様」
「お昼に行くわよ」
「かしこまりました、お嬢様。えっと……今日もまた食堂ですか?」
「ええ!勿論」
レイラ様は満面の笑みで答えた。
「あ、食堂?私も行くー!いくらとサーモンの親子丼食べたーい!」
そう言ってレイラ様の前の席に座っていたフローレス嬢がこちらへと振り返った。すると、レイラ様もパァと表情を明るくさせて立ち上がった。
「なら私、今日はマグロづくし丼にするわ!」
おふたりで盛り上がっている中、俺は深くため息を漏らした。
「……まさか、またあのとんでもなく生臭い、生の魚が乗ったものでしょうか……」
「なによ、美味しいじゃない。ねー?」
「ね~!まさかこの世界に転生して白米……ましてや、海鮮丼が食べれるだなんて……はぁ、幸せ」
レイラ様とフローレス嬢は顔を見合わせて幸せそうな表情を浮かべていた。
「私にはあんなゲテm……いえ、口には合わないようです」
「まぁ、異国の料理だしノアはそう思うかもね。まぁ、いいじゃない。貴方は好きなものを食べなさい?さ、さっさと食堂に行きましょう!」
そうして俺達は食堂へと向かった。食堂に到着すると、授業を終えた生徒達でとても賑わっていた。
「早めに来たのにけっこう席埋まってるね~」
「そうね、どうしようかしら」
「あちらの奥の方なら空いてるかもしれません。少し見て参ります。おふたりはこちらで……」
「あら、ありがとうノア!なら、私達は先に海鮮丼を頼みに行きましょう!」
「うん、そうね!マーカス様、ありがとうございます!急ぎましょう!!」
「え?いや、ちょっと……」
そう言っておふたりは颯爽と人混みの中に消えていった。本来であれば主人の食事を頼みに行くのも俺の仕事だけど……どんだけ食い意地張っているんですか。
「はぁ、まったく。しょうがない人達ですね」
俺はため息を漏らして苦笑しつつも、そのまま席を探しに奥へと進んだ。
「あ!!」
探し歩いていると、突然後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。もしかしてこの声は……そう思いながら後ろを振り返るとそこにはマードゥン様が座っていた。やっぱりな。
「また会ったね!」
彼はそう言ってニコニコとしていた。以前お嬢様にマードゥン様の事を訊ねてみると、やはりマードゥン様は「おとめげーむ」の攻略対象らしい。そう聞いてクラスも違うし、なるべく関わらないようにしていたが……仕方ない。
それにしても……以前にも感じていたが、少し色素が薄く柔らかい金色の髪と瞳がキラキラと、とても綺麗で本当に美少年な方だ。それに加え小柄でなんだか可愛らしい印象でもある。これは噂だが、入学早々ファンクラブが出来たそうだ。
俺はそんな事を考えながら、軽く微笑み返して頭を下げた。
「ん?どうかした……ってノア君?」
頭を上げると、マードゥン様の真向かいの席でこちらの方を振り返っているルウ様が座っていた。
「ルウ様」
「ノア君じゃないか。あれ、2人って面識あったっけ?」
ルウ様が俺達の顔を交互に見ながら訊ねた。
「この間僕がナンパしてみたんだ~」
マードゥン様はえへへっと照れながら答えた。その返答に思わず俺とルウ様は思わずブッと吹き出した。それと同時に近くにいた周りの淑女の皆様がザワザワとし始めた。
「ど、どどどどういう意味かしら!?」
「もしかしてあの二人……禁断の愛?愛なの!?」
……何やら不本意な噂が立ちそうだ。俺は少しため息を漏らし、冷ややかな視線をマードゥン様に向けながら口を開いた。
「マードゥン様」
「ふふっ冗談だよ!じょーだん♪この間少し話しただけだよ。あはは、あーおかしっ♪」
マードゥン様はケタケタと笑いながら答えた。すると、ルウ様は安堵するように息を吐いて口を開いた。
「な、なぁんだ~。びっくりするじゃないか」
「ふふっ驚かせてごめんね、ルウ君」
そんな会話をしていると、周りで聞き耳を立てていた淑女の皆様は「なぁんだ~」と残念そうにしていた。
よし。とりあえず俺の名誉は保たれたぞ。
「ところでノア君は今日は食堂かい?」
「はい。左様でございます、ルウ様」
「へ~ノア君、食堂派なんだ~。あれ?でも1人なの?」
「いえ。あと、お嬢様とフローレス嬢も一緒です。なかなか席が見つからない為、私が席を探している間におふたりは先に食事を頼みに行っております」
「なるほど!あ、3人くらいならここのテーブル広いし座れるんじゃない?一緒にご飯食べよーうよ!」
「っ」
俺は思わず言葉に詰まってしまった。
まずいな。「ひろいん」のフローレス嬢もいるし、あまり接触は避けたいところ……でも、他に空いていそうな席もないし、俺が貴族からの誘いを断れる訳もない……
「……そんな、そのご一緒してもよろしいんでしょうか」
「うん!大歓迎だよ!ね?ルウ君!」
「うん、そうだね。このテーブル広いし、本当なら6人座れるしね」
ルウ様もこう答えているしな。
フローレス嬢にとってもルウ様と近づけるチャンスにもなるか……俺は覚悟を決め口を開いた。
「では……御言葉に甘えてご一緒させて頂きます。ルウ様、マードゥン様ありがとうございます」
俺はそう言って深々と頭を下げた。
「やった~!ノア君といっぱい話せる~♪」
マードゥン様は無邪気な笑顔を浮かべながら両手を万歳させて喜んだ。そしてそのまま万歳させていた両手で頬杖をついて、上目遣いでこちらに視線を向けた。
「僕ね僕ね、ノア君といっぱいお話して仲良くなってみたかったんだ~クラスは違うけどこれから同級生なんだし、仲良くしてくれたら嬉しいなぁ。あ、僕のこともマードゥン様じゃなくて、リオ君とかリオって呼んで♪」
マードゥン様はそう言ってニコニコと微笑んだ。そんな愛らしい様子を見ていた淑女の皆様は「リオ様かわいい~」「リオ君癒される~」と囁いていた。この美少年な顔と純粋そうな瞳でそんな事を言われたら、恐らく多くの者がキュンとトキメクであろう。
しかし、このあざとさ……話していて何となくだか恐らく計算されている気がする。以前は気が付かなかったが……腹の内では何を考えているのやら。これは俺の予想に過ぎないが、仲良くしたいのはこんな平民に過ぎない従者の俺ではなく、恐らくレイラ様……それか「げーむ」の「ひろいん」であるフローレス嬢か……
「ノア、君?」
マードゥン様は不思議そうな顔を浮かべて俺の名前を呼んだ。おっと、いけない、いけない。
「失礼致しました。マードゥン様にそんな風に思って頂けて恐縮です。これからよろしくお願い致します」
俺はそう言って負けじと微笑み返した。すると、マードゥン様の眉がピクリと動き、「ふーん」と意味深に呟いた。俺はそのまま聞こえないフリをして「それではおふたりを連れて参ります」と言ってその場を後にした。
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