俺のお嬢様はおとめげーむ?の『悪役令嬢』らしいです

杏音-an-

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第二章 学園生活始動

28 癒しかわいい子犬系男子? ③

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 食事を取りに行き、席へと向かうとそこにはルウ様だけが座って待っていた。

「あ!」

 こちらに気がついたルウ様は目を細めながら、笑顔で軽く手を振っている。すると、フローレス嬢が隣で泣きそうになりながら口を開いた。

「うっ!う、うぅ……ルウ様……か、可愛いぃぃ」

「アリス、落ち着いて」

「あ、はい」

 レイラ様に一喝され、フローレス嬢の涙はスンと引っ込んだ。

「ごきげんよう、ルウ様。ノアから聞きました。是非席をご一緒させて頂きますわ。ありがとうございます」

「いえいえ。大人数で一緒に食べた方が美味しいですから。さ、こちらへどうぞ」

「ふふっそうですわね」

 レイラ様はそう言ってにこやかな表情で席へと着いた。俺もテーブルの端のレイラ様の隣へと席に着く。フローレス嬢はまだ立ったまま、頬を染めて緊張をしているようだ。

「ご、ごきげんよう……いえ、ご無沙汰?してます?ルウ様。えっと……その、席、嬉しいでs……じゃなくて!その、ありがとうございます!」

 フローレス嬢がしどろもどろになりながらそう言うと、ルウ様は少し笑って口を開いた。

「ははっ、どういたしまして。そういえば同じクラスなのに、話すのは久しぶりかもしれないね。僕もアリス嬢と話せて嬉しいよ」

「ルウ様……」

「さ、アリス嬢も座って」

 ルウ様にそう言われて、フローレス嬢はルウ様の真向かいの席へと座った。すると、隣で座っていたレイラ様がこそっと「良かったわね、目の前には好きな人よ」と耳打ちした。フローレス嬢はまたしても泣きそうな表情で、コクコクコクと凄い勢いで頷いた。

「そういえば……マードゥン様はどちらへ?」

「あぁ、彼は水を取りに行ったんだ。もうすぐ戻ってくるはず……あ、きたきた」

 後ろを振り返ると、水を持ってこちらに向かっているマードゥン様が見えた。

「あ、みんな来てたんだね!」

 こちらに気がついたマードゥン様はパァ!と満面の笑みを浮かべた。そしてレイラ様の姿に気が付くと、マードゥン様は水をテーブルへと置き、何も言葉を発せずに軽く頭を下げた。
 社交界では、身分が下のものから声をかけたり、自ら自己紹介をすることは無礼とされている。といっても、ここは交流が優先とされる学園である為、そこまで礼儀に厳格である必要はない。
 しかし、流石はマードゥン様。そこはしっかり礼儀を重んじての行為なのだろう。

 そんなマードゥン様の様子を見て、レイラ様は少しだけ微笑み口を開いた。

「はじめましてですわね。レイラ・エミリ・グロブナーですわ。今日は席をご一緒させて頂きます。貴方は確か……マードゥン子爵の……」

「はい。リオ・マードゥンと申します。お初にお目にかかります、グロブナー嬢。こんな素敵な方々と食事を共に出来るだなんて恐縮です」

 マードゥン様はそう言って口元に手を当てて、上目遣いでレイラ様を見つめた。

「あの……もし良ければですが、気軽にリオ君♪とかって呼んで下さい。これから仲良くして貰えたら、とっても嬉しいです」

 あざとい。あざといぞ。その恐らく計算された角度。普通のご令嬢であれば、これでイチコロなんだろう。しかし、レイラ様はそんなマードゥン様に対して、表情を変えずに口を開いた。

「ええ。としてこれからよろしくお願いしますわ。

 レイラ様はキッパリとそう言い放った。レイラ様に線引きをされたマードゥン様は微笑んだまま表情を崩さずに、そうですか、とだけ言って今度はフローレス嬢へと視線を移した。

「と……そちらは……」

「あ!えっと、はじめまして。アリス・フローレスと申します。本日は席をご一緒させて頂いてありがとうございます」

 フローレス嬢はそう言って慌てて頭を下げた。

「あぁ!ノア君と同じ特待生の子だね、よろしくね!君も僕の事は気楽にリオ君って呼んで♪」

 マードゥン様はパッと表情を変えて軽くウィンクをした。それに対しフローレス嬢は「ははは」と乾いた笑顔を見せた。

「それにしても……おふたりとも珍しいお料理を召し上がるのですね」

 ルウ様はそう言ってまじまじとおふたりの海鮮丼を見つめた。

「そうなんですの!実はこれ……」

「『海鮮丼』、という魚料理ですか?」

「!!ええ、よくご存知ですわね」

 レイラ様がそう言うと、ルウ様が「あぁ!」と思い出したかのように口を開いた。

「そう言えば、リオ君の領地は美味しい魚が食べられるもんね」

「あら、そうなんですの?」

「ええ。まあ、そうですね」

 マードゥン様はにっこりと微笑みながらそう答えた。
 マードゥン子爵家は確か……『マルセイル領』と呼ばれる領地を持っていたな。あそこは国唯一の海洋貿易の拠点として栄えている。漁業も栄えていて『マルセイル領』の魚料理は絶品だと有名だ。
 俺がそんな事を考えていると、更にルウ様は話を続けた。

「実は、僕の父が昔から魚料理には目がなくてですね。よく彼の領地に行ってはマードゥン卿と食事をしに出掛けているんです。僕もたまに連れて行かれては一緒に食事をしたり、子爵家の別荘に泊まりに行ったりもするんです」

「まあ。だから、ルウ様とマードゥン様も仲がいいんですのね」

「そうですね。幼なじみというやつです」

 ルウ様はニコニコしながらそう言った。

「でも羨ましいですわね。私達、こういった料理が好きなんですの。でもあんまりこういった異国の料理は食べる習慣がないでしょう?だからこの学園で食べれるだなんて思わなくて、つい頼んでしまいましたの」

 レイラ様はそう言って右手を自分の頬に当てながら、ふぅとため息を漏らした。その隣ではフローレス嬢が腕を組んでウンウンと頷いている。

「そうだったんですね。あ!もし良ければ皆さんで今度の休みに、うちの領地へ遊びにきませんか?」

「「……え?」」

 レイラ様とフローレス嬢は急な提案に、思わず声を揃えて聞き返した。




    
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