俺のお嬢様はおとめげーむ?の『悪役令嬢』らしいです

杏音-an-

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第二章 学園生活始動

29 癒しかわいい子犬系男子? ④

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「そうだったんですね。あ!もし良ければ皆さんで今度の休みに、うちの領地へ遊びにきませんか?」

「「……え?」」

 レイラ様とフローレス嬢は突然の提案に思わず声を揃えて聞き返した。

「実は『マルセイル領』では新鮮な魚をそのままお店に卸した海鮮料理が味わえる専門店があるんです!オススメのお店があるので、是非おふたりにも食べて頂きたくて、観光がてらに」

 マードゥン様は無邪気な笑顔を浮かべながらそう言った。

「えっと……それはとても魅力的なご提案ですが……」

 レイラ様はあまりに急な提案で少し目を泳がせながら戸惑っている。

「マードゥン様」

 俺はそんなレイラ様を見て、思わず口を挟んだ。

「皆様のご歓談中、口を挟んで申し訳ありません。少しだけ私の意見を申し上げてもよろしいでしょうか」

「ノア君……うん!勿論!ここはなんだもの。平民と貴族の身分の差……なんて関係からね」

 マードゥン様はそう言ってにこりと微笑んだ。しかし、その目は笑っていない。ここは貴族と魔力を持つ特待生の平民が分け隔てなく、交流することが許される学園だ。しかし、この学園を一歩出れば今の俺の発言は絶対に許さないぞ?という意味合いがチクチクと伝わってきた。
 しかし、主が困っている以上それを手助けるのが、従者の役目だ。

「ありがとうございます。マードゥン様のお心遣いに感謝致します。マルセイル領ですが、確か今いる首都からだいぶ距離があるかと。日帰りで行くには、お嬢様のお身体に負担が掛かかるのではと心配なのです。かといって泊まりで行くとなると、生憎ですがマルセイル領の近くには公爵家の別荘がありませんので少し難しいかと」

「あ、あ~!そうよね!確かに!」

 レイラ様は慌てて俺に賛同した。
 断罪を逃れたいレイラ様はこれ以上、攻略対象とはあまり関わらない方がいいだろう。そして、これはフローレス嬢にも言える事だ。『ひろいん』であるフローレス嬢はマードゥン様と関わる事で、攻略対象の1人と仲を深め、『好感度』というものを上げてしまう恐れもある。ましてや学園外で平民と貴族の男女が会うとなると、周りの貴族にもあらぬ誤解を生み、根も葉もない噂を流される可能性だってある。

「ですので……今回は」

「あ!それなら、子爵家の別荘を皆様でお使い下さい。公爵家の別荘に比べれば小さいかもしれませんが」

 マードゥン様は少し申し訳なさそうな表情を浮かべそう言った。

「え!いえ、でもそんな急にご迷惑なんじゃないかしら」

「大丈夫です。先程、ルウ君も申し上げておりましたが、シモン卿やルウ君達もよくその別荘を利用しておりますので、掃除や管理も行き届いております。あ、勿論別荘では領地で釣れた新鮮な魚を使った料理を振る舞いましょう。今おふたりが頂いている海鮮丼や刺身、煮付け、天ぷら、海鮮しゃぶしゃぶなどご用意させて頂きます」

「て、天ぷら!?」

「か、海鮮しゃぶしゃぶって!?え、美味しそう!!」

 レイラ様とフローレス嬢はマードゥン様の言葉にキラキラと目を輝かせた。こらこらこらこら。

「それに……ルウ君のお友達として皆様をご招待すれば、変な誤解を生むこともないでしょう。ね?ノア君」

 マードゥン様はそう言って俺に笑顔を向けた。
 なんだか、見透かされているようだな。

「し、しかし……」

「わぁ!いいなぁ!うん、皆で食べに行きましょう!」

 俺が話すと同時に、今度はルウ様が先程のふたりのようにキラキラと目を輝かせ、ズイと前屈み気味にそう言った。

「行きます。行きましょう。是非」

 すると、間髪入れずにフローレス嬢がそう答えた。
 おい、こら。フローレス嬢。目が本気じゃないか。いいのか?攻略対象の事も忘れんな?

「し、仕方がありませんわね。皆様がそんなに行きたいのでしたら、今度の休みに行きましょう!?……て、天ぷらなんていつぶりかしら。まさかこの世界で天ぷらが食べられるなんて。しかも、海鮮しゃぶしゃぶって……鰤しゃぶとか聞いたことがあるけれど、食べたことないのよね。え、美味しそうしかないじゃない。どうしましょう」

 レイラ様、漏れてる漏れてる。心の声漏れてますよー?
 
「わぁ!決まりですね!ふふ、楽しみです。では次の休みの日にしましょう。精一杯おもてなし致しますね」

 マードゥン様は天使のような満面の笑みを浮かべてそう言った。俺には天使の皮を被った小悪魔が笑っているようにしか見えないが……一体何を企んでいるんだか。

「はぁ」

 俺は思わず大きくため息を漏らした。
 もう、これは仕方がない。今度の休みは、とにかく注意深く見ていなければ。と、その前に泊まりとなれば急いで泊まりの準備と荷造り、馬車の準備と……あぁ、子爵家の手土産の手配もないとな。くそ、下僕達を使うか。あー帰ったら、ララさんにも急いで相談しないといけないな。

 あー。もーどーにでもな~ぁ~れ~。

 俺はそう思いながら、静かに牛肉ステーキを口に含んだ。


    
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