小春日和

葉月玖実

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ドラゴン桜・広島版

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次男が9歳の時、【ドラゴン桜】というドラマを観て、ふざけた調子で、

「俺も東大に行く!」

と、ひとこと。

そりゃあ、目指すのは、勝手だし自由だし。


まぁ、地方で、ど田舎に住んでる次男みたいな子には状況的に無理な話だろう。


東大って言えば、東京在住の裕福な家庭の子が赤ちゃんの時から英才教育を受けて入る物だと、私は勝手にイメージしてた。

我家は長男も次男も小さい頃から、ど田舎の自然な環境の中、伸び伸びと育ってきたから、東大だの、京大だの、全く無縁の存在だった。


それでも周りの友達が、色々な習い事や塾に通い出し、息子たちも少しは影響を受けると思ったけど、いかんせん、勉強は学校だけで十分だという。

まあ、無理強いは良くない。

小学校六年間は二人とも公立で、学校と自宅を往復するだけ。

帰宅すれば、宿題をしただけで、あとは、ゲームと漫画三昧。


まあ、宿題だけでも成績は、そこそこ良かったから、そう口うるさく言わなかった。

長男は、小学校の時から天才肌なところがあって、それほど、ガリガリ勉強しなくても成績はクラスでも上位だった。

ただ、田舎の小学校だ。上位といっても都会の子と比べたら、どの位の位置にいるのかは、わからない。

彼が頭角を現したのは、中三の時だった。

学年ではトップだか、どの辺の高校を受験できるか。

果たして、担任教師は、県内トップクラスの高校も大丈夫だろうと、太鼓判を押してくれた。

けれど長男は、トップクラスの高校よりも中堅どころの高校に進学した。

学校見学して、自分に合った高校だと判断したらしい。


一年の時、進路相談で担任から、

「東大か京大を目指してみないか」

と言われ、京大を志望し、結果、三年間、塾にも予備校にも通う事なく京都大学法学部に合格した。


五歳下の次男は、この兄の姿をずっと見てきた。

「お兄さんは、頭が良かった」

と、兄と同じ、小学校、中学校に通ってきた次男は、兄を知っている教師陣から、ずっと言われてきたらしい。


私たち夫婦は、次男はスポーツに長けていたので、学習面より、そちらの方に期待していた。


だが、次男も中三の受験の時に頭角を現した。

彼は県内のトップクラスの高校に合格した。


進学校だから当然、入学した間なしに進路指導会があり、三者懇談の時に、ドラゴン桜を思い出し、

「東大を受けたい」

と、冗談めかして言った。

担任は、大学を出て二年目の若い教師だったが、

「そうだな、始めからトップクラスの大学を目指せば、東大じゃないにしろ、良い大学には入れるからな」


と、これまた、冗談めかして言った。


二人の会話を聞いていた私も確かにそうだなと、妙に納得していた。

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