俺だけ使える1万円で超能力を買える怪しいサイトを見つけたら人生が変わった件

黒飛清兎

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47話 仲直り

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「…………ごめん、話せない」
「…………そっか」

  命は絞り出すようにそう小さく呟いた。
  命の身に何があったのか、それが分からない自分がたまらなく惨めで、矮小な存在に感じられ、そんな命を助けられないことが酷く悔しかった。
  ほんの少し話せるようになっただけの仲の癖に一丁前にもっと頼って欲しいなどと考えてしまう。
  そんな思考にいつもなら恥ずかしいと一蹴するはずの俺の理性はこの時は吹き飛んでしまっていた。

「俺、何があっても命の味方だから…………」

  俺の言葉は、命には届かないかもしれないと感じつつも、どうしても伝えたくて口に出してしまった。
  命の表情は少し硬くなり、目を逸らして肩を震わせる。

「…………なんで、なんで優しくするのさ」

  命は、俺を見ずにそう呟いた。
  その声は、今までにないほど疲れ切っていて、どこか悲しげだった。

「なんでって…………」

  なんでなのか、それはもうほとんど俺の中では決まりきってしまっていた、だが、それは口からは出てきてくれない。

「もう、私に構わないで、そっちの方が……綾瀬くんも幸せでしょ……?」
「そんな事は絶対に無い!」

  それだけは確実に言えた。
  少し大きな声を出したからか命の体がピクっと震える。

「命が初めてなんだよ、ここまで話せてるのも、クリスマスケーキを一緒に食べたのも…………命のお陰で俺は何回も救われてるんだ…………だから、俺にも恩返しさせてくれよ」
「…………嘘だよ」

  命は自嘲気味に言う。

「…………根浜さん、すごい仲良いみたいじゃん、いっつもよく話してるみたいだし……それに、この前の電話だって!」
「いや、それは…………」
「綾瀬くんは私なんかと居るよりも根浜さんと居た方が絶対に良いの、私なんかといたら綾瀬くんまで…………」

  その言葉が少し引っかかった。
  まるで、命と一緒にいるだけで何か悪いことがあるかのような、そんな言い方だった。

  命は口を閉じ、しばらくの間沈黙が続く。

「命……」

  俺は立ち上がり、命の前に歩み寄る。
  そして、静かに命の手を取った。

「俺は、命がどういう人でも、どうなっていても、そばにいたい、何があっても気にしない。俺は命と一緒に居たい。だから、お願いだ、少しでも頼ってくれよ」

  命はしばらく黙っていたが、俺の手をじっと見つめ、震えるようにその手を握り返した。
  その感触が、少しだけ温かくて、俺の心は少しだけ軽くなった気がした。

「……ごめん」

  命は小さく呟いた。

「謝らなくていいよ」

  この暗い雰囲気を打ち消すためにも俺は少し笑いながらそう言う。
  俺は命を見つめながら、やっと自分の中の不安が少し落ち着くのを感じていた。
  命の目に、少しだけ明るい光が見えた気がした。

「……そうだ、綾瀬くん」
「ん、なんだ?」
「……バイトは?」
「…………あ」

  俺は急いで時計を確認する。
  時刻はバイトが始まる数分前、ここからバイト先までは五分ほどかかる、走ればもしかしたら間に合うかもしれない距離だ。

「くっ、どうしよう…………」
「綾瀬くん、走ろうよ?」

  命がそう提案する。
  …………もうそれしかないか。
  俺は急いで命の家の外へと向かう。

「あ、ちょっと待って」

  俺が今にも走り出そうとしていると、命が俺の所へやってきた。
  そして…………。

「っ、な、なに?」
「…………私も行く、やっぱりバイト辞めたくないなって思って」
「け、けど手は繋がなくても……」
「いいじゃん……それとも嫌なの?」
「いや、そんな事は…………」

  命は俺の手を握る力を少し強める。

「じゃあ……行こ?」

  命が少し照れくさそうに微笑んだ。
  その表情が少しだけ俺の心を温かくした。

「…………あぁ、行こうか!」

  俺も笑いながら答えた。

  急いで外に出ると、冷たい風が頬を撫でたが、それ以上に俺たちの体温は高まっていた。
  バイト先までの距離はまだ少しあるが、命と一緒にいるだけで心が軽く感じた。
  走りながらも、なんとなく胸が熱くなるのを感じていた。
  命がそばにいるから、どんな困難も乗り越えられそうな気がして、自然と足取りが軽くなった。

  走り続けて数分後、バイト先が見えてきた。
  まだ少し距離があったが、俺たちの足は確実に近づいている。

「やっぱり、間に合うかもね!」

  命が笑いながら言う。

「あぁ!」

  俺も気持ちを込めて答え、最後の一歩を踏み出した。

  店に入ると直ぐに、鬼の形相をした店長が待ち構えていた。
  時間は……数分オーバーしてしまっている。
  間に合わなかった……か。

  俺が必死に店長への謝罪の言葉を考えていると、店長は俺達のことを見て、「あっ、へー、ふーん」と呟いた後、直ぐにニマニマとこちらを湿った感じの笑みで見つめてきた。

「店長、この前言ってたことなんですけど…………」
「あぁ、うん、もう分かったよ、やめないんでしょ?」
「え、あ、はい」
「あー、良いもん見せてもらったから今日の所は2人とも許すよ、ほら、綾瀬くん、早く着替えておいで」
「は、はい!」

  俺は店長の掛け声とともに疲れた体にムチを打って直ぐに事務所へと向かった。

「…………それで、いつからなんだい?」
「いつから……とは?」
「ほら、綾瀬きゅんとだよ、全然そんな素振りなかったからびっくりしたよ……あ、もしかしてクリスマスの時の夕勤も綾瀬くんが入っていたからとか…………ひゃー、熱いねぇ!」
「えっと…………何を勘違いしてるか分かんないんですけど…………私たち、付き合ってないですよ?」
「…………え?」
「というか、多分綾瀬くんは私の事そういう目で見てないと思いますよ」
「…………え?」
「…………まだまだこっからです」

「…………嘘だろう?」
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