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84話 しーちゃんって呼んでもいいよ
しおりを挟む「それで……話してくれるんだよね?」
「……うん、根浜さんなら……」
「あ、ストップ!」
紫恵はいたずらっぽい笑みを浮かべる。
「命ちゃんは特別に………私の事、しーちゃんって呼んでくれていいよ?」
「……もう離さないよ?」
「あー、ごめんごめんうそうそ!」
紫恵はすっかりいつもの調子で命に話しかけていた。
不思議とその姿を見ると場が和むような気がする。
……多分、これは紫恵なりの気の遣い方何だろうな。
「はぁ……じゃ、紫《・》恵ちゃん、話すよ?」
「っ! う、うん!」
あ、珍しく命がデレた。
紫恵も嬉し半分恥ずかしさ半分って言った感じで顔を赤らめてる。
…………これはなんと言うか、俺の場違い感が凄いのですが!?
こんなキャッキャウフフな空間に俺みたいな男がいていいものだろうか……いや、良いわけないだろう。
だからといってこの空間から逃げるわけにもいかないため俺は部屋の端っこでちょこんと座っているのであった。
それから命は今まで起こっていたことを紫恵に教えた。
流石に俺が毎日この家に居たこととかそういう事はあまり喋っていなかったが、ちらちらとそういった事が特定出来そうな内容も含まれておりその度にヒヤヒヤした。
紫恵もおちゃらけた態度は鳴りを潜め、暫く黙って真剣に命の話を聞き続けていた。
「…………それってさ、やっぱりもっと人に頼るべきなものだよね?」
「…………うん、今は私もそんな気がしてる、話してみればちょっと頭の中で整理もできて……やっぱりみんなに助けてもらうべきだった」
私生活やネットなどで干渉される場合は警察でも対処不能な事も多々ある。
そうなってしまえば頼れる人は身近な人しか居なくなる訳だ。
だが、命には親が居ないし、そうなると必然的に頼れるのは俺たちだけだったというわけだ。
まぁ、その頃はそんなに仲良くなかったというのもあるのだろうけど…………。
「ま、けどもう安心してよ、私が居るか………」
「あ、いや、大丈夫、多分もう解決した」
「「え?」」
「…………ん? あ、いや、まって、今のなし」
ま、不味い、勢い余って『ドリーマー』を使ってあいつら全員にトラウマを残そうとしていることを言ってしまいそうになってしまった………。
すぐさまはぐらかしたが、流石に俺の様子がおかしい事に気づいたふたりは俺を問い詰める。
「そういえば、よく考えてみれば私達がここに来たのって彩斗くんが配信を始めたことが原因だよね…………なんであんなことしたの?」
「私に相談もしてくれなかったし………一人でやって彩斗くんが危ない目にあったら私、どんな気持ちになるかわかるよね?」
う、うぅ、2人とも目が怖いよぅ、ハイライト! ハイライト付け足そうよ!!
「や、ただ何となくああいう動画を上げたら少しは被害が減ってくれるかなぁって思っただけだよ……そ、それにコメント欄でも改心してそうな人が………」
「居なかったよね?」
「ブチギレてる人ばっかだった」
「…………はい」
何とか誤魔化そうとするも、『ドリーマー』を使うためという目的以外にほぼ目的は無かった為、なんとも言い訳をしにくい。
「あ、と、というかそれどうやってみつけたんだよ! アーカイブは残してるけどそんなに人が居たわけでも………」
「ほら、コレ見てよ」
紫恵は俺に向かってスマホの画面を見せつける。
そこには……「謎の美少女」という文字があった。
「今まで何にもしてなかった可愛い女の子がこんな衝撃的な登場したもんだからすぐネットニュースになっちゃってるみたいだよ? ほら、再生回数見てみなよ」
紫恵の言葉に俺は慌てて自分のスマホで昨日の動画のアーカイブを見る。
そこには昨日の数百倍以上の再生回数が記されていた。
「な、なんだこれ…………」
「ま、当然だとは思うよ? 今そういう配信の最前線を走ってる人と可愛さでいったら劣らないし、更に加工も一切してない……これは好感高いよ!」
「そ、そうなのか?」
ぶっちゃけそんなに知識がある訳では無いが、そういうの詳しそうな紫恵が言うのだったらそうなのだろう。
え、てかこれもしかして収益とか入ったりするのか?
こんなに見られるんだったらもしかしたらコンビニバイトの収益よりもこっちの方が…………あとで見てみよう。
とにかく、俺の動画はそんなに人気になってしまっていたのか…………。
「それにさ、内容も内容だからね…………」
「私の炎上って結構大きな騒ぎだったみたいだからね……それに乗っかって炎上商法的な感じで伸びたみたい………まぁ、彩斗くんは全然炎上してないみたいだけど」
確かにライブ中のコメント欄は酷いことばかり書かれていたが、終わったあとのコメントには非常にポジティブなものが良かった。
これは『配信の恵み』効果なのだろうか?
まぁ、とにかくこれで俺の事を見た人が増えたということは命に敵意を持つものの判定も早いというわけだ。
…………今夜が楽しみだ。
俺は不敵な笑みを浮かべる。
そんな俺を2人は不思議そうに見つめていた。
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