91 / 97
91話 尊厳の危機
しおりを挟む「ん?」
命があまりにもキョトンとした顔で画面を見るので俺は一応もう一度スマホの画面を確認する。
しかし、やはりそこには今までと同じ事が書かれているだけだった。
「……いや、俺が見てたのはこれだぞ?」
もしかしたら命も何か少し勘違いしてしまっていたのかもしれない。
だから俺はもう一度しっかりとその画面を見せた。
しかし、命はムッとした顔をする。
「ねぇ、彩斗くん、流石にこれじゃ私は騙されないよ? 誤魔化すにしてもさ、もうちょっと普通のサイトにしなよ、こんな真っ暗な画面ずっと眺めてるわけないでしょ?」
「…………は?」
俺はもう一度しっかりと確認する。
が、そこには真っ暗な画面など映っておらず、先程と同じ胡散臭いサイトがあるだけだった。
そこ事に俺はますます混乱してしまった。
「ほら、早く白状しなよ、別に怒ってる訳じゃないから」
「いやいやいや、待てよ、もう1回ちゃんと見ろ? ほら、ちゃんと文字あるだろ?」
「…………バカにしてる?」
ここまで言っても伝わらないということは…………本当にこのサイトは命に見えていないのか?
命にだけ見えないというのもおかしいし、もしかすると、俺にだけ見えているのかもしれない。
よく考えてみればこんなサイトが本当にあるのだとしたらもっと話題になっているはずだ。
一昔前に1万円ガチャなるものが流行っていた時代があった。
1万円なんて大金を払ってまで引きたいものか? と当時の俺は思っていたが、ブームだったからなのか分からないが、かなりの人がそれをやっていたのを記憶している。
そういう人たちが居るくらいなのだから、このサイトを見つけることが出来る日本人が居ればその中の何人かはこのサイトを使用しているかもしれない。
もしかするとその人達もみな俺と同じようにこの力を独占しようとして誰にも言わないようにしているのだと思っていたが、やはりそれにも限度はある。
今回の命の様な感じでたまたま見られてしまうようなケースもあるはずだ。
だが、それでも一切その情報は出回っていなかった。
サイトのことについてはネットで何回か調べてはいるが、その時には一切そういう情報はヒットしなかったのだ。
となると…………このサイトは俺だけが使えるという事なのか?
「…………彩斗くん、どうしたの? 白状する気になった?」
「あ、いや……」
心臓が激しく高鳴っているのを感じる。
この力が俺だけのものなのだとしたらとんでもない事だ。
明らかに人間とは思えないほどの能力を手に入れていっているわけだし、このままだと俺は本当にとんでもない高みまで至ってしまいそうだ。
「…………むぅ、分かってるんだよ? ちょっとムッとはしてるけど、男の子だししょうがないと思うから…………」
「いやいや、ちょっと待て、何の話?」
俺が超能力サイトの事で頭がいっぱいになっている時、気が付くと命は少し悲しそうな顔をしながらそんなことを言っていた。
そこまで深く話を聞いていなかったのでどうしてそんな話になったのかさっぱり分からない。
命の表情には、どこか諦めの色が滲んでいた。
「……だってさ、わざわざ画面真っ暗にしてまで、隠したいってことは……そっち系の、アレなんでしょ?」
「はっ!? なんでそうなるんだ!?」
俺は慌てて首を振る。
違う、絶対に違う。
どこをどうしたらそういう発想に至るのか分からないが、命が何か勘違いしているのは明白だ。
まず、知り合いの女の子の家に泊まっとる時にそんな事するバカがいるわけないだろ!?
そういう性癖ならまだしも、俺は至ってノーマルだ!
「じゃあ、何なの? 本当は何見てたのさ」
命は問い詰めるように覗き込んでくる。
俺はもう一度スマホの画面を命に向けて見せる。
だが命は、そこに何も見えていないようにただ首をかしげるばかりだ。
「…………俺は本当にこの画面を見ていたんだ、何も隠してない!」
「嘘だよ、そんな顔してるもん、彩斗くん」
ドキリとする。
確かに、さっきからずっと心の中は気を抜いたら、声に出して叫んでしまいそうなほどには混乱と興奮とでごちゃごちゃだった。
「……ほんとに、見えないのか?」
俺はもう一度だけ、静かに尋ねた。
命もまた、真剣な顔で首を縦に振る。
「うん、見えない、ただの真っ暗な画面」
やっぱり……これは、俺にしか見えないサイトなんだ。
それが知れたのは1つの収穫だ。
だが…………その、俺がそう言うサイトを見ていたっていう誤解を持たれたままなのは非常にまずい。
俺は頭がいつも以上にフル回転しているのを感じる。
こういう時の男の子は思考能力がいつもよりも何倍にもアップするのである!
それから俺は小一時間かけて命に弁明をした。
本当にそんなサイトは見ていないので嘘はついていないのだが、それでも超能力サイトを見てましたなんて言っても信じて貰えないだろうからそこは伏せたまま喋らなければいけないので弁明にかなり時間がかかってしまった。
最終的に命は理解したのかしてないのか分からないが、何とか引き下がってくれた。
本当に、俺の尊厳とか諸々の危機であった。
20
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる