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5話 温泉へ
しおりを挟む「うぅん…………。」
私が起き上がるとまたもや周りは何も分からなくなり、立ち上がる事すらままならない状態になった。
それでも何とか座ろうと身体を起こした。
ズキリと頭が痛んだ。
すると、鼻の辺りから何か液体のような物が垂れてくるのを感じる。
「あっ、メグ、まだ起き上がっちゃダメだよ!」
「……え?」
僕は訳も分からずとりあえず声のした方向を確認しようとする。
「ああっ! それもダメっ! 何も見ないで!」
「うっ、うん、わかった。」
あまりの気迫に僕はたじろいでしまう。
僕は素直に何も見ない様にするが、僕の意志とは関係なく周りがシルエットの様になって頭に入ってきてしまう。
「ど、どうしよう、止まらない!」
「ええっ!? あ、アニ、これどうすればいいの!?」
「ええーっと、なんか眼鏡を外すみたいな感覚で目の辺りに手を当てれば止められるはず! 多分!」
僕は急いで目の辺りに手を当ててみる。
すると、何かが体から抜けるような感覚と共にまた先程のように何も見えなくなった。
少し残念だ。
「ごめんごめん、伝えるの忘れてたよ、そう言えばこれ使うのに慣れてない人が使うと結構負荷がかかっちゃうんだよね…………。」
あぁ、だからさっき僕は倒れたのか。
これからずっと周りが見えると思ったのに…………。
そんな事を考えていると、僕が明らかにシュンとしているのを察してかアニがあわあわしはじめた。
「えっと…………そうだ、ゆっくりと慣らしていけば使える時間も伸びるし、それにもっと範囲を狭めればもっと長く使えるようになるよ!」
「…………本当!?」
「うん! 次使う時に教えるね!」
「わかった、ありがとう!」
よかった、僕はまだ大丈夫みたいだ。
僕は安心してもう一度寝転がった。
その時、僕は地面が先程までと違う事に気が付いた。
先程までは固くて少し暖かい地面だったのに対して、今はジャリジャリして少し湿っている地面だ。
「ねぇ、ルカ、今は何処にいるの?」
「今はちょっと森の中だよ、アイツらがまたこっちに近づいてきてたからとりあえず逃げたんだよね。」
「…………アイツらって?」
「…………機械のことだよ。」
ルカの声のトーンが少し落ちた。
初めての事で少しドキッとしてしまう。
「まぁ、機械の中でも今のはせいそういんさんっていう結構危ないもの何だよね、そこらじゅうの人が作ったものを片っ端から破壊していっちゃうから近づかないようにしなきゃダメなんだよね。」
そんなものがいるんだ…………。
背筋に冷たい物が走った。
「さっきはメグのすぐ側までせいそういんさんが近づいてたから咄嗟に助けたんだよね。」
「そうだったんだ…………怖いね。」
「うん……とってもね。」
つまり、僕はルカに助けて貰えなかったらそのせいそういんさんの掃除に巻き込まれていたって事だよね…………。
そんな危険なものから救ってくれたルカには本当に感謝しかない。
僕がその話を聞いて怖がっていると、足音が近づいてくる音が聞こえてきた。
そして、僕の顔を何かふかふかした柔らかいものが包み込んだ。
「今綺麗にしてあげるから動かないでねー。」
「わっ、サナ、僕自分で拭けるよ!」
「いいからいいからー。」
僕はなされるがままに顔を綺麗に拭かれた。
「あれ? そのタオルどこで見つけたの?」
「んー? えーっとね、秘密ー。そんな事よりもさ、もうそろそろ出発した方が良いんじゃないかな?」
「そうだね、メグもずっと目が見えないのは大変だもうね!」
ルカが僕の事を考えてくれていることに僕は嬉しくてついつい顔が綻んでしまう。
しかし、それと同時にひとつ疑問が浮かんできた。
「あれ? 今僕たち何処に行こうとしてるの?」
「んーとね、はっきりいって私達の怪我を治す為のものは何処にあるのか分からないから、先にメグの目を治す為の場所に向かってるよ!」
「目を治す為の場所?」
この目を治せる場所なんてあるのだろうか?
僕には検討もつかなかった。
「はいはーい! あたしが思い出した事なんだけど、昔どんな病気でも治してくれる温泉があるって聞いたことがあって、そこだったらメグを治してあげられるかなーって!」
「えぇっ!? そんな所があるの!?」
それならすぐそこに行けば解決じゃないか。
もしかしたら僕の目も治って、記憶も戻って僕もみんなの怪我を治す事を助けられるようになるかもしれない。
「場所は分からないんだけど、ある事は確かだよ!」
「…………え? 場所分からないの?」
「え、うん。」
なんて事だ…………。
僕はがっくりうなだれた。
場所が分からないなら行きようが無いじゃないか、これじゃあ僕の目が治せそうに無いよ…………。
「だから今から私達は温泉巡りの旅をするんだよね!」
「え? けど、場所が分からないんじゃ…………。」
「んー、全部の温泉に入れば大丈夫だよ!」
僕はその言葉を聞いてキョトンとしてしまう。
そして、その意味を理解した時、僕は思わず笑ってしまった。
「あははっ、そんなの……そんなの無茶だよ。」
僕は笑っているのに何故か流れ出てしまう涙を拭い、満面の笑みを浮かべた。
「みんな……ありがとう!」
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