おんせんめぐり!

黒飛清兎

文字の大きさ
7 / 26

7話 やせいせいぶつ

しおりを挟む

「あっ、見て見て! これってもしかして じゃない!?」


  どうやらアニがまた何かを発見したみたいだ。

  アニは私の事を気遣ってか事ある毎に報告してくれる。

  僕は目が見えないのでその殆どが見えないのだけれど、なんだかんだ言ってちょっと嬉しい。

  ただ運ばれている荷物じゃなくて、みんなと同じ旅の仲間なんだって教えてくれているように思えた。


「えっ、!? どれどれ!?」

「ほら、これ!」

「うわー、珍しいねー。」


  みんなはそのとやらを物珍しそうに観察していた。

  それはそんなにも珍しいものなのだろうか?

  僕は興味が出てきてしまった。


「ねぇルカ、もうそろそろ見ても大丈夫かな?」

「うぅん、もう結構経ってるし大丈夫だとは思うけど…………。」

「もおー、ルカは心配しすぎだよ! あたしが使ってた時はそんなに危ないものじゃなかったし、大丈夫だよ!」

「うーん、そうだね、このサイズの可愛いなんかこれから見る機会なんて殆ど無いだろうからね…………。」


  ルカはもう一度唸った。


「分かった、良いよ、けどその代わり、絶対に無理はしないでね!」

「うん、分かった!」


  ルカの許可を獲た僕は早速見ようとするのだが、よく考えたらまた見えるようにする方法が分からない。


「アニ、これどうやって見えるようにするの?」

「んーとね、こう、目にぐぅーっと力を入れて、目の中の目を開くみたいな感じ?」

「…………何それ?」


  アニの説明はよく分からなかったけれど、とりあえず何とかやって見ることにした。

  何となく目を瞑るような感じで目に力を入れてみるが、特に何も起こらない。

  今度は逆に目を開けるように力を入れてみるが、やはり何も起こらない。


「あ、アニぃ、出来ないよぅ。」

「うーん、なんでだろう、あたしの時は簡単に出来たんだけどなぁ。」

「アニの説明が抽象的すぎるんだよー、えっとね、目を凝らす時みたいな感じで目に力を入れてみてー。」

「こ、こう?」


  僕はサナの指示に従い、何も見えはしないけれど目を凝らしてみる。

  すると、目の真ん中辺りに何かがあるのを感じた。


「そしたら目になんかある感じがすると思うんだけど、それを動かそうとしてみてー。」

「うん、分かった!」


  僕はその何かを動かそうとしてみた。

  すると、不思議な事に今まで感じたことの無い部分が動いているのを感じた。

  そして、その度にチラチラっと周りが少しだけ見えた。


「あっ、何だか出来そう!」

「うん、良かったねー。」

「うおー! サナはやっぱり説明が上手だな!」

「まぁね、伊達に長年一緒にいる訳じゃ無いからねー。」


  僕はサナの説明のおかげでコツを掴み、何とか少しづつだけど見えるようになってきた。


「あっ、そうそう、一気に周りを見たりしたら負荷がすごいから、一旦は地面だけを見るようにしてね!」

「はーい!」


  僕は首を下に向けて地面だけに集中した。

  コツを掴んでから直ぐに僕は周りが見えるようになった。

  僕はいま座っていたのが大きな石だったのを確認して、そーっと立ち上がった。


「こっちだよ!」


  アニが僕の手を引いてやせいせいぶつの所まで連れていってくれる。

  僕はドキドキしながら1歩1歩着実に歩いていった。


「ほら、これだよ、可愛いよねー!」


  ルカが嬉々として指さす方を見てみると、そこには…………。


「何……これ?」


  僕は思わず絶句してしまった。

  何故ならそこには拳大ぐらいのうねうねとした生物が居たからだ。


「これが……やせいせいぶつ?」

「そうそう、可愛いよねー。」

「う、うん…………。」


  僕以外のみんなは可愛いと言っているし、これはきっと可愛いものなのだろう。

  ただ、僕にはどうしても気色の悪いものにしか映らなかった。

  まだしっかりと周りを見ることが出来ないから気持ち悪く見えているだけかもしれないけど…………。

  ……いや、きっとそうだ。

  僕はルカの近くに言って周りを見えなくした。

  平衡感覚が一気に失われ、ルカの方に倒れ込んでしまう。


「あれ、もういいの?」

「うん……もう十分かな?」


  本当は気持ち悪くてもう見たくないから見ないようにしただけなんだけど、それを可愛いと思ってみているみんなに言うことでも無いと思って僕は黙ってルカにぎゅっと抱きついた。


「メグ? 何か嫌な事でもあった?」

「え? ううん、何でもないよ。」

「……そっか、ならいいんだけど。」


  そう言ってルカは僕を抱き上げ、頭を撫でてくれた。

  それだけでさっきの不快感はすっと消えていく。


「ねぇ、僕早く温泉に入りたいな、もう出発しない?」

「ええっ、あたしもうちょっとだけ見てたいんだけど…………。」

「んー、僕はもういいかなー、うん、出発しよー。」

「えー、こんなに可愛いのに…………。むー、じゃあ、出発しようか…………。」


  アニは悲しそうにそう言った。

  アニには申し訳ないけれど、あの気持ち悪いやつとは少しでも早くおさらばしたい。

  アニは最後までまだ残りたいと言っていたが、僕はルカに抱き抱えてもらい、その場を去った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

処理中です...