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17話 やせいせいぶつ?
しおりを挟む涼しい風が勢いよく吹き抜け、僕の体から熱を奪っていく。
ついこの前までは蒸し暑かったのに、今ではもう寒いとまで感じてしまう。
僕達はこの前まで居た場所を離れ、はるか遠く、東方にある温泉へと向かっている。
そこへ行くためにはとても長い距離の草原を抜けなければいけないらしく、僕達はまったりとその草原を歩いていた。
「うぅ、ルカ、なんか寒くない?」
僕はルカの腕の中で丸くなりながらそう呟いた。
「んー、もう秋だからねぇ、うぅん、何か暖まれる物とか無いかなぁ。」
「これを使いなよー。」
僕のすぐ側でサナがそう言うと、次の瞬間僕の体をふわっとしたものが覆った。
それが僕の体に触れていると何だかポカポカとして暖かい。
「わ、何これ、バスタオル?」
「うん、最後に入った温泉のおかみさんがくれたんだー。」
「えっ、て言うかそれどこから出てきたの?」
「…………それは乙女の秘密だよー。」
そう言うとサナは意地悪そうにふふふと笑った。
僕はバスタオルの中で丸くなり、寒さを凌いだ。
「サナ、ありがと。」
「んー、どういたしましてー。」
サナのおかげで何とか暖は取れたが、ずーっと同じ風景が続くというのも少し辛いものだ。
山の中を進んでいた時は色々なものがあったりしたため、退屈はしなかった。
時々機械が襲ってきたりした為、ある程度の緊張感もあり、退屈だなんて思える暇も無かったからかもしれない。
ただ、今はただただ同じような草が広がっている草原をずーっと歩き続けている。
たまにあるとするなら草の種類が変わったり、ちょっとだけ花が咲いていたりとそのくらいだ。
僕は危険も無いため、ちょっとずつ周りを見る時の範囲を変えてみたり、極端に範囲を小さくして長い時間使ってみたりしていた。
使い過ぎると頭がクラクラしてくるけど、ちょっと休めばまだ範囲は小さいが、使えるくらいまでは上達した。
とはいえ、まだ歩いたりは一切出来ないため、そっちの訓練も必要だろう。
「ねぇルカ、今どのくらいまで来たの? 結構歩いたと思うんだけど…………。」
僕の体感ではもう森を歩いていた時と同じくらいの時間が経ったように感じる。
退屈なのも含めればそこまでは経っていないとは思うけど、それでも中々の距離は歩いてきたはずだ。
「えーっと、分かんないけど、多分半分……いや、半分いかないくらいかなー?」
「ええっ!? まだそのくらいしか経ってないの!?」
「え、うん。」
もっと進んでいると思っていた僕は愕然とした。
いや、別にみんなといるのが嫌な訳じゃないし、何も無くてもみんなと話せていたら楽しいんだけどさ…………。
それでもやっぱり、これだけの期間温泉に入れないのはきついよぉ。
僕がルカの腕の中で項垂れていると、次の瞬間、僕達の前を歩いていたはずの足音の1つが聞こえなくなった。
「…………みんな、止まって。」
アニが珍しく真剣な声をあげた。
僕達は不思議がりながらも足を止める。
アニが小声で話し始めたので、僕達も何かあったのではないかと思い、小声で話し始めた。
「…………ねぇ、何か聞こえてこない?」
「…………特に何も聞こえないよー。」
「…………アニはこの中で多分1番耳が良いし、アニが何か聞こえてるんだったら、多分本当に何かがあると思うんだけど…………。」
僕が兄の方を見ると、アニは耳の辺りに手を近ずけ、キョロキョロとしながら周りの音を必死に聞き取ろうとしていた。
「…………んーと、あっちの方からブーンっていう音が聞こえるんだけど…………あれ、なんか近づいてきているような…………。」
「…………ブーン、ね。」
ルカは頭に手を当てて何かを考え出しているようだった。
「…………その音ってさ、どのくらいの速さで近づいてきてる? ちょっとづつ? それとも結構早い?」
「…………うーん、多分あたしたちが歩くよりは早い…………かな?」
「…………そっかぁ、それはまずいかも知れない…………。」
ルカは困ったようにそう言った。
僕はどういうことか分からず、ルカに聞き返した。
「…………ねぇ、まずいってどういう事なの?」
「…………ここら辺でそんな感じの音を出すのは2種類のものだけなんだよね。」
「2種類のもの?」
「うん、1つ目は出来ればこっちであって欲しいんだけど、芝刈り機っていう機械がここら辺の草を切って行ってるだけっていうやつかな。その時にブーンっていう音を出すんだけど、その機械自体古いものだし、こっちだとは考えにくいんだ…………。」
「じゃあ、2つ目の可能性が高いってこと?」
「そうだね、2つ目はやせいせいぶつの音だって事なんだけど、こっちだったら結構まずいんだよね…………。」
…………どういう事だろうか?
この前見たやせいせいぶつは気持ち悪くはあったけれども、そんなに危険なもののようには見えなかった。
僕以外の3人は可愛いと言っていたほどだ。
しかし、今回はそれに会うのがまずいと言っている。
僕は疑問に思いつつも、しばらくすると僕も耳にもブーンという音が聞こえるようになり、そちらに集中し始めた。
「…………やせいせいぶつだ。」
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