おんせんめぐり!

黒飛清兎

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16話 最後の温泉

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  サウナから出た僕達はサッと体に付いた汗などを流してからこの温泉宿を出た。

  残念ながら今回の温泉宿も目的の病気を治す温泉では無かった。

  ここら辺にある温泉はもう後数箇所になってしまった。

  多分もうここら辺には目的の温泉は無いだろうけど、万が一ということもあるし、一応1箇所1箇所入っていくことにしている。

  そのため特に焦りなども無く、ただ純粋に温泉を楽しむ事が出来ている。

  特に温泉が好きな僕は目が治らなかったとしても温泉に入れているだけで大満足なので苦痛は一切感じていない。

  1箇所、また1箇所と温泉を巡っていくが、やはり目当ての温泉は無い。

  そして、遂に最後の温泉に来てしまった。


「…………これで最後だね。」

「そうだね、この温泉が違ったらまた結構歩かなきゃだな…………。」

「まぁ、この温泉があってることを願うしか無いよねー。」


  僕達は祈りながら最後の温泉宿に入っていった。


「…………イラッ……シャイ……マ…セ……。」


  外装はかなりボロボロであったが、なんとおかみさんは居るようだ。

  ただ、そのおかみさんも外装と同じ様にかなりボロボロの状態の様だ。

  声もとても震えており、しっかりと聞かないとなんて言っているか判別できない。


「…………メグサマ……デスネ……。」

「んえっ!? 僕!?」


  突然名前を呼ばれ、僕はびっくりして変な声をあげてしまった。

  このおかみさんとは初めて会った筈なのに、何で僕の名前を知っているんだろう…………。

  僕は疑問に思いつつも、それ以降のそのおかみさんは他のおかみさんと変わらない対応をしていたため、そこまで気にしない事にした。

  僕たちはそのままおかみさんにお金を渡し、温泉へと向かった。

  その温泉は何だか少し甘酸っぱくて爽やかな香りに満ちていた。

  扉を開けた瞬間、その香りが僕達を包み込み、まるで僕達を温泉へと誘い込んでいるようだった。

  ゆっくりと温泉に入ると、他の温泉よりもかなり温度が低い事に驚いた。

  他の温度の高い温泉とは違い、ぼーっとリラックス出来るような程度の温度になっており、とても入りやすい。

  この温泉に入っていると何だか…………胸が温かくなる。

  何でだろうと不思議に思った次の瞬間、1つの説が浮上する。

  …………もしかしてこの温泉は目的の温泉なのでは無いかという説だ。

  僕はルカの方をパッと向き、ルカにその説を話した。


「…………えっ、あぁ、えっと、この温泉は違うね、メグも目が見えるようになってないよね?」

「…………うん。」


  そうだった、良く考えたら病気を治す温泉何だとしたら僕の目が見えるようになるからすぐ分かるんだった…………。

  今までの温泉とはかなり違った感覚になったから少し動揺してしまっていたみたいだ。  

  僕は温泉に入ったこととは別に頬が熱くなるのを感じ、温泉の中に顔を突っ込む。

  温度がちょうどいい為、顔をつけても辛くはならない。


「もー、拗ねないでよ、そんな恥ずかしいことでも無いでしょ?」

「うー、そうだけどさー。」


  何だかこの会話をしているこの時がとても幸せに感じる。

  温泉に入っている時や何か面白いことを見た時よりもずっとだ。

  さっきの説が出た時、僕はもちろん嬉しかったが、それと同時に治って無ければ良いのにと思ってしまっていた。

  本心ではあるのだけど、やっぱりこんな考えは僕の為に頑張ってくれているみんなに失礼な気がする。

  特にルカは文句一つ言わずに僕の事を運んでくれている。

  負い目を感じた僕はついついルカに甘えてしまう。

  僕はルカにギュッと抱きついた。

  ルカは何かを察したのかただ黙って僕の頭をナデナデしてくれた。


「なールカ、そういえば次は何処行くんだ? ここら辺の温泉は行き尽くしたわけだし…………。」

「えーっとね、こっからさらに南の温泉はもう全部とっくの昔に枯れちゃってるみたいだから…………次は東の方に向かおうかな?」

「東っていうと、あのだだっ広い草原がずーっと広がってるとこだよねー? あんなところに温泉なんてあるのー?」


  話についていけない僕はルカに頭を撫でてもらいながら何となく話を聞いていた。

  頭の中でだだっ広い草原とやらを想像しながら、そこにある温泉を想像したりしてみる。


「地図には一応あるって書いてあるんだよねー、そっちから行けば多分無駄なくこの大きな島をまわれるはずなんだよね。」

「へー、やっぱりルカはしっかり考えてるんだな!」

「ルカは頭がいいからねー。」

「えへへー、みんなありがとー!」


  みんながルカを褒めているのに、僕はそれに乗遅れて褒めることが出来なかった。

  僕は慌ててルカを褒める。


「え、えっと、ルカはいっつも僕の事を守ってくれてて、とってもかっこいいよ!」

「えへへ、メグまで褒めてくれるなんて、照れちゃうなぁ。」


  ルカは僕の頭を更にわしゃわしゃとした。

  僕達は和気あいあいとその温泉を楽しみ、次の温泉へと旅を続ける。


「よぉし、それじゃあ、出発進行ー!」

「「「おー!」」」


  僕たちの旅は遥か彼方の温泉まで続く…………。
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