おんせんめぐり!

黒飛清兎

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15話 整う

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  突き進む僕はある一定のところで動けなくなる。


「…………。」


  そう、僕はルカが進んだ所までしか進めないのだ!

  僕は1人じゃ歩けないし、ルカが止まってしまえば必然的に僕も止まらなくてはいけなくなる。

  先程あれだけたんかを切っていたのにルカが少し止まるだけで僕は動けなくなってしまった。

  僕は気まずそうにルカに向き直る。


「ねぇ、お願い、僕サウナに入ってみたいんだよ…………。」


  僕はそう出来る限り愛嬌いっぱいにそう言った。


「うっ、わ、分かったよ、けど私も一緒に入るからね?」

「うん、もちろん!」


  僕は思いっきりルカに抱きついた。


「じゃあ、早速行こうか…………。」


  僕達はもう一度扉を開け放つ。


「くっ……やっぱり暑い……。」


  さっきはそこでびっくりしてすぐに閉めてしまったのだが、今回は違う。

  僕は暑さを堪えながら1歩、また1歩と進んでいく。

  横にはルカがしっかりと付いてきてくれているから僕は安心して進むことが出来る。

  そして僕はサウナに入ってすぐのところにある椅子に腰掛けようとした。


「っ! メグ、待って、ここには座れない!」

「ええっ、何で!?」


  さっきのルカの解説ではここに座ると言っていたのに…………。


「この椅子、凄く熱くなってる…………座ったら火傷しちゃうよ…………。」


  僕は試しにちょっとだけそこに触れてみる。


「あつっ…………ほんとだ、すっごく熱い。どうしよう、これじゃあサウナが楽しめない!」


  僕が焦っていると、突然僕達の元へ何かが飛んできた。

  何か板状のものだ。

  それを慌ててルカが受け止める。


「これ使ってよ、ちゃんと冷水で冷やしてあるからさー。」


  その板状のものを投げた主であるサナはグッと親指を立て、熱気から逃れるようにそそくさと去っていった。


「これを敷けば座れるね!」

「…………うんっ!」


  僕達は椅子の所にサナから貰ったものを敷いた。

  少しひんやりとしたそれは刻一刻とその冷たさを失っていく。

  僕達はそれが椅子と同じように熱くなってしまう前にそこに座った。


「…………。」

「……ふぅ…………。」


  しばし二人の間に沈黙が流れる。

  暑すぎて会話する事も出来ない。

  しかし、きついはずなのに何だか少し気持ちが良くなってきたかもしれない。

  体の奥の方から悪いものが体の外に押し出されているような感覚だ。

  ちょっとだけ肌を触ってみると、とんでもない程の汗をかいていたようで、まるでお風呂上がりかのようだった。

  僕は我慢出来ずに弱音を上げてしまう。


「る、ルカ、もうそろそろ出る?」

「…………メグはそれでもいいの?」


  僕はルカのその言葉にハッとした。

  そうだ、僕はこんな所で諦めていてはダメだ。

  ここで諦めてしまえば僕はこのサウナの真の気持ちよさに出会うことが出来ない。

  それだけは許してはいけない!


「…………ルカ、僕、まだ諦めない! もうちょっとだけ付き合って!」

「……ふふ、勿論! それでこそメグだよ! 」


  僕達はさらなる気持ちよさを求めてサウナに入り続けた。

  汗が滴り地面にポタポタと落ち始めた頃、隣にいたルカが立ち上がった。


「…………メグ、これ以上は危険そうだね、上がろっか。」

「いや、けど…………うん、分かった、出よう。」


  僕はフラフラになりながらもルカと一緒に外に出た。


「…………ふわぁっ、何これ、涼しい!」


  さっきまであの暑い中にずっと居たからかいつもなら暖かく感じる場所が涼しく感じる。


「まだまだ終わりじゃないよ! 次は水風呂に入るよー!」


  ルカに支えられながら僕は水風呂の中に入ろうとした。


「ひゃぁっ、ちょ、冷たすぎない!?」


  水風呂につま先をつけた瞬間、僕は反射的に飛び上がってしまった。

  今まで水風呂に入ろうとした時も冷た過ぎて断念していたのだが、今は更に冷たく感じてしまう。

  だけど…………。


「うぅ…………えいっ!」


  僕は意を決して水風呂の中に飛び込んだ。

  全身が縛れるようなほどの冷たさだ。


「くうぅっ、しゃっこいよぉ…………。」


  隣に居るルカもとても寒そうだ。

  しかし、少し我慢していると驚きの事が起こった。


「ふあぁ、な、何これ?」


  僕の体の周りに何か温かな膜のようなものが出来て僕の体を優しく包み込んだのだ。

  今まで味わったことの無い気持ちよさだ。


「ええっ、メグなんでそんな気持ちよさそうなの!? すっごい寒いんだけど!?」

「えぇー? こんなに気持ちいいのにー。」


  僕は緩んだ顔をそのままにその水風呂を堪能した。


「…………もうそろそろ出よっか。」


  僕を包んでいた膜が少しづつ冷たくなってきた為僕はルカと一緒に水風呂から出た。

  ルカは終始冷たそうにしていたが、僕は大満足だ。


「えっと、それから露天風呂のところにある椅子に座ればよかったんだよね?」

「…………うん、そうだよ。」


  次に僕達は露天風呂にある椅子に座った。


「おー、風が気持ちいいねぇ。」


  さっきの一連を踏んだからか、いつもの休む時よりも遥かにリラックスが出来ている。

  ぼーっとしていると体から力が抜けて、目の疲れもどんどんと取れていくような気がする。


「…………メグ、そんなに気持ちいいんだ……。」


  ルカはそんな僕を見て羨ましそうにしていた。
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