21 / 26
21話 喧嘩
しおりを挟む「…………ねぇ、今どこ向かってるの?」
「ふっふー、内緒。」
「…………。」
僕は丸くなったままルカに抱えられて運ばれている。
息をするだけで肺がちりちりするため、バスタオルの中に顔を埋めて寒さを凌いでいる。
僕がそんな風に寒がっている横で僕以外の3人はてくてくと歩いているのが驚きだ。
みんな、寒く無いのかな…………。
僕はバスタオルの中からひょっこりと顔を出して周りを見ようとした。
すると一瞬周りを見ることはできたのだけど、すぐに真っ暗になった。
…………どうやらルカが僕の目を塞いでいるようだ。
「ちょっと、見えないんだけど…………。」
「見えちゃったらせっかくのサプライズが台無しになっちゃうでしょー?」
「むぅ。」
別にここまで言っちゃってたらもうどの道サプライズにならないと思うんだけどな…………。
僕はもう一度バスタオルの中にくるまり、ふくれっ面をした。
僕は今この状況に憤りを感じていた。
しかし、ルカの腕に抱えられている身の上でそれを言葉に出来るはずもなく、ただ悶々としながら僕は運ばれ続けた。
しばらくすると、僕の耳に不思議な音が聞こえ始めた。
この音は…………水?
とても大きな音で水がはねている音が聞こえる。
そして、それとは別に複雑な轟音がなり続けている。
なんだか嫌な感じはしない。
「お、もーそろそろだね!」
「くふふ、あれ見たらメグ絶対に驚くぞー?」
「まー、何気に僕も見るの初めてだからちょっと楽しみだなー。」
うーむ、今行っている場所には何があるんだろう。
アニは絶対に驚くとか言ってるから凄いものなんだとは思うんだけど…………。
またちょっと経った頃、先程からなっていた音が徐々に大きくなっていった。
どうやら目的地はこの音の発生源みたいだ。
もうしばらくすると、ルカ達の足音が止まった。
「メグ、着いたよ!」
ルカがそう言ったので、僕はバスタオルから顔を出す。
冷たい風が僕の顔をいじめてくる。
僕はそれに耐えつつも周りを見渡してみた。
しかし、特に変わった様子は無い。
強いて言うならば、雪がチラホラ降っており、それが地面に積もっているくらいだ。
僕が不思議そうにキョロキョロしていると、ルカ達は少し混乱しているようだった。
「ありゃ、あんまりびっくりしてない…………?」
「…………そうみたいだねー、こんなに凄い景色なのにねー?」
ルカとサナは少しがっかりとした様子だった。
しかし、1番がっかりしそうだったアニは何も話さず、ただ黙っていた。
…………そんなにショックだったのだろうか?
先程まで自信満々に僕の事を驚かせるって言ってたからな…………。
僕は何だか申し訳なくなり、アニにフォローの言葉をかけようとした。
しかし、その必要は無かった。
「ねぇ、アニ、なんかごめ…………。」
「そうだ! 思い出した!」
「…………え?」
僕はアニが落ち込んでいると思っていたが、それは勘違いだったみたいだ。
アニはいつも通りの弾けるような元気な声で喋りだしていた。
…………僕の心配を返してくれ。
「そういえば、今メグは近くのものしか見えないんだった!」
「あっ、そっか。」
そういえばそうだった。
元々遠くまで見えていた記憶が無いから完全に失念していた。
僕は今負担を減らす為に意図的に近くしか見えないようにしているんだった。
前までは遠くまで見たら負担が大きかったけれど、そこ頃と比べて今はかなり慣れたから、ちょっとぐらいなら遠くを見ても大丈夫かもしれない。
僕はそう思って遠くを見ようとするが、突然目を塞がれてしまう。
…………ルカだ。
「ちょっとアニ! まだどのくらい使えるかどうかも分かってないのにいきなり遠くを見るなんて危険でしょ!?」
「大丈夫だって、あたしが使ってた頃だったらこんくらい余裕だったからさ!」
「アニとメグは違うでしょ!?」
「ちょっとちょっと、2人とも喧嘩しないでよ!?」
僕の事を巡っての喧嘩だ、少しむず痒い感じがする。
けれども、喧嘩はして欲しくない。
2人とも僕の大切な人なんだ、仲良くしていて欲しい。
「僕は別に見れなくても大丈夫だからさ、ね、喧嘩しないでよ…………。」
「「はっ!?」」
僕のその一言に2人はハッとしたような反応をした。
というか言葉に出してはって言った。
「…………ごめん、私メグの気持ちも考えないで心配した気になってた…………。」
「あ、あたしも、もっとメグのこと考えてればもっと慎重になってたのに…………ごめん。」
2人は口々に謝りだした。
「…………2人とも、謝るのは僕に対してじゃないでしょ?」
「…………ごめん、ルカ。」
「私もごめん、アニ。」
「…………ふふ、一件落着だね!」
2人とも仲直り出来たみたいで良かった。
僕は満足気に頷いた。
これで全部解決だね!
「…………まだ解決してない問題あるよねー?」
「「「え?」」」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる