おんせんめぐり!

黒飛清兎

文字の大きさ
20 / 26

20話 薬

しおりを挟む


「…………どこにいるか分からないって……どういう事?」

「さっき歩いていた所ってずーっと同じような平原が広がってるところだったからさー、さっきやせいせいぶつに追いかけられた時に方向がわかんなくなっちゃったんだよねー。」

「そうなんだ…………。」


  僕は青い顔をしながら話を聞いていた。

  今居る場所が分からないのなら地図を使っても意味が無いし、明らかに違う方向に進んでいたとしても気付くことが出来ない。

  何ならここら辺を一生彷徨う事になるかもしれない…………。

  そしたら僕の目もみんなの傷もそのままだ。

  僕があわあわしていると、そんな様子を見たサナが笑った。


「ふふふ、そんなに慌てなくても大丈夫だよー。」

「だだ、だって、このままじゃっ!」

「あの草原の周辺は東南西北全部特徴的な場所だから、とりあえず草原を抜けたらどの方向に行ってるか分かるんだよね。」

「…………ふぇ、そうなの?」


  よ、良かった、じゃあ僕達は一生彷徨う事は無いのか…………。

  僕は胸をなで下ろした。


「じゃあ、今はどっちの方角に向かってるの?」

「今は……北だね。北に行くほどどんどん寒くなってくから、分かりやすいんだよね。」

「へー、だからこんなに寒かったんだ。」

「今はアニとルカがあるものを探してくれてるから、僕はメグを見守ってたんだよねー。」

「あるものって?」

「んー、ないしょー。」


  うぅ、今は僕しかからかう相手が居ないからか、サナが全力で僕にイタズラを仕掛けて来ている…………。

  まぁ、僕は今サナに見守られながらぬくぬくしている訳だから、この境遇を甘んじて受け入れよう…………!

  最後に僕は、僕の身に何があったのかサナに聞いた。

  サナは何かを少し考え、教えてくれた。


「えっとねー、やせいせいぶつから逃げる時にルカが色んな道具とかを使って全速力で逃げたんだよー、その時にメグが起きていたら危ないから、眠り薬を飲ませてその間にここまで来たんだよねー。」


  …………そうだったのか。

  僕は目が見えないから何かがあった時にトンチンカンな動きをしてしまってルカ達に迷惑を掛けてしまうかもしれないし、妥当な判断だろう。

  だけど、やっぱり悔しいな。

  僕が足でまといになるのは十も承知でついて行っている訳だけど、それでもやっぱり役に立ちたいという気持ちは心のどこかにある。

  そんな事考えるのすらおこがましいことは分かってるはずなんだけどな…………。


「…………まぁ、メグに怪我がなくてよかったよー。」

「うん、ありがとう。」


  僕の中ではやっぱりルカに対する信頼が厚いからか、感謝の気持ちもルカにばかりいってしまっている。

  だけど、アニやサナだって僕を幾度となく助けてくれているということを忘れてはならないだろう。

  僕が感謝の念をサナに送りながらじっと見つめると、サナは不思議そうにコテっと首を傾げた。

  …………伝わって無さそうだ。

  僕達は極寒の中で温まりながら少し時間を潰した。

  すると、突然外から足音が聞こえてきた。

  僕はビクッと跳ね上がり、体を強ばらせた。


「ふふふ、大丈夫、アニとルカが帰ってきただけだよー。」


  そう言ってサナは僕の頭を優しく撫でた。

  …………分かってたもん、ただ、石橋を叩いて渡るみたいな事で、用心するにこしたことはなんというか…………。

  あぁ、もう、顔熱っついなぁ。

  僕は外の温度とは反対に急激に火照る頬を冷えた手で鎮火しつつルカ達が来るのを待った。


「あぁっ、メグ起きてる!」

「っ!? ほんと!?」


  僕が起きているという知らせを聞いてかルカは一瞬で僕の元まで駆け寄ってきた。

  そして、いきなり僕の体をぺたぺた触りだした。


「ちょ、大丈夫だって! 何ともない!」

「だ、だけど、いきなり薬飲ませちゃったし、副作用とか…………。」

「全然大丈夫だから、心配しないで! 僕の為にやった事なんでしょ? だったら問題無いよ。」

「うわぁん、ありがとうメグー!」

「もぉ、いいって…………。」


  本当に感謝を伝えたいのは僕の方なんだよなぁと、思いながら僕は抱きついてくるルカから離れようとする。

  しかし、ルカは一向に抱き着くのをやめない。


「はいはーい、お二人さん、イチャつくのはやめて本題にはいりましょーかー?」

「ちょ、イチャついてるんじゃなくて……。」

「あぁ、そうだったね!」


  サナの本題に入ろうという一言でルカは僕の事をあっさりと離した。

  …………むぅ、何だか納得がいかない。

  そんな僕の様子はよそにみんなは話し始めた。


「それで、ここに戻ってきたってことは…………見つけたんだねー?」

「ふっふっふー、このアニが着いてるんだから、あったりまえでしょ!?」

「ふふふ、そうだねー。」


  …………僕はまたもや話についていけずにいた。

  みんなは目が見えるからか、目が見えない僕とは少し話が噛み合わない時があるのだ。

  少しづつ僕の頬が膨らんできた頃、そのことに気がついてか、ルカが悪戯っぽく笑った。


「じゃあさ、どうせだからさ、今から見に行かない?」


  …………何を?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。 カレンと晴人はその後、どうなる?

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う

yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。 これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。

処理中です...