6 / 116
第一章
第六話 虚しさは尽きず
部屋に入ると、神は縁側に腰掛けるよう薫子を促した。薫子は会釈をして部屋を通り過ぎ、風光明媚な絶景の広がる縁側に腰を下ろす。
(どうしよう)
コンと軽やかに夜空へ響く鹿威しの音色とは裏腹に、薫子の心の中は不安と焦りでどん底だ。
「先ほどの話、どこまで聞いていた」
「…史さんが、私を村へ返したいという下りからです」
誤魔化したところで神には通用しないだろう。薫子が震える唇で正直に答えると、神は一言「そうか」とだけ呟いた。
薫子は横目で神を見る。彼は何かを考えているようで、まっすぐと揺らぐ水面へ注がれていた。再び鹿威しが軽やかに鳴く。静まった屋敷と庭は、ここではない遠い異世界を彷彿とさせた。
「薫子」
「は、はい」
長い沈黙が続き、何度目か分からなくなった鹿威しの音色が響いた頃。神は口を開いた。
「お前は帰りたいか、自分の家に」
突然の質問に薫子は思わず目を見開く。神は水面から薫子へ顔を向けた。布の覆面のせいで表情は何も見えないが、どこか酷く寂しそうだった。
(ここで頷けば、返してくれるのだろうか。そんな簡単に生贄が人の世に戻って良いのだろうか)
色んな考えがぐるぐると脳内を駆け回る。そんな時、奔走する頭の中から一つ不思議なものが見つかった。
「…どうして、それ程までに寂しそうなんですか」
「は…?」
ポロッと零れる言葉。神も流石に驚いたのか、呆気に取られたような声が返って来る。
そして同時刻、薫子も自分の後先考えない発言に驚いていた。昔から脳と口の間に挟むものが少ない娘だと言われてきたが、ここまで自覚する日が今までにあっただろうか。
(まずい、怒らせたかもしれない)
中々に無礼な発言をした気がする。薫子は急いで神に身体ごと向いて床に手を着いた。
「寂しい、か」
土下座をしようとしていた薫子の耳に届いたのは、怒りの声でも、冷めた声でもなく、ただただ無気力な声。顔を上げると、神は銀色に輝く月を見上げていた。
「もう、この世にも疲れてきた。何千年と繰り返される人間達の取るに足らない抗争や怨恨、賊心、悲憤慷慨、私欲にまみれた卑しい願望。私は奴らを見ていると、どうしようもなく虚しくなる」
月から池へ視線を移す神。泳いでいた鯉が一匹水面を弾いた。薫子はそんな神の独り言にも近い言葉を聞き、心が締め付けられるようだった。
「最初は人の世の濁りを少しでも消し去ろうと、願いや望みを叶えてやった。雨を降らせ、植物を増やし、人が住みやすくなるようにこの地を変えた」
ふわっと風が木々をすり抜け、水面を揺らす。コツンと鹿威しと岩がぶつかり合う音が響いた。
「だが人間達は貪欲だった。叶えれば叶えるほど私に縋り付き、自分の足で進まなくなり、遂には争いを起こした。動植物は次々と息絶え、再び空気は淀みを生み出した」
薫子は淡々と語る神を見て、ふと察しがついた。
(ああ、きっとこの神様は)
人の世を、人間を、とても愛していたのだろう。でも干渉し過ぎた結果、人間の汚い部分を引き出してしまった。それは彼の優しさと、最も相性の悪いものだったかもしれない。
「…随分と、遠い昔の話だ。四千年くらいだろうか」
(また、四千年…)
桜の巨大樹を植えたのも、それくらい前の事だと昼間言っていた。もしかしたら、あの桜の木は人間から親睦の証にと貰ったものなのかもしれない。だから今日に至るまで、ずっと切り倒せなかった。自身の愛情はなくとも、そこには確かに人間達の想いが在るはずなのだから。
「……あの鳥居を一歩でも出れば、外は人の世。外界からは容易に入れぬが、内から外へは好きに行ける」
「え…?」
また沈黙が続いたと思えば、神は神楽鈴の様に美しい声音で薫子に告げる。薫子は一瞬理解できず聞き返した。
「今夜はもう遅い。明日の朝支度をして元居た村へ帰れ。そして忘れろ、ここで起きたこと全て」
「か、神様…」
神は立ち上がって縁側から部屋に入り、衣桁に掛かっていた金の刺繍が美しい羽織を手に取る。そして縁側に正座して座っていた薫子の肩に掛けた。
「神様…!」
「羽織無しで出歩くな。ここは春の気候だが、夜風は体を冷やす」
慌てて立ち上がり、羽織を返そうとする薫子だったが、ぴしゃりと神が言いつける。
大人しく羽織に腕を通し始めた薫子を見ると、神は徐に手を伸ばした。史に切り揃えて貰った髪が、神の細長く美しい指に掛かる。
「え、あれ」
指が触れた瞬間、湿っていた髪が乾いた。さらさらと指の隙間を流れていく髪の毛。
(すごい、一瞬で…)
しかも男達に荒っぽく切られていたので少し痛んでいたのだが、今は髪の質感も元通り以上に良くなっている。
「…行くぞ」
神は薫子の髪から手を引くと、そのまま部屋を通り過ぎて廊下へ出て行った。長い白髪が背中で揺れている。
「どこへでしょう」
薫子は急いでその後ろを追いかけて廊下へでた。
「お前の部屋だ」
「え」
まさか、と頬が赤くなるのを感じる。しかし、そんなわけあるかと自分を律し、表情を元に戻した。百面相もいいとこである。
「ここにいる限り安全だが、人間は些細なことで死ぬ。念のため、部屋に入るまで私が見送ろう」
それに史はお前のことになると五月蠅いからな、と付け足した神は部屋の襖を閉めた。
それから二人は無言で薫子の部屋まで向かった。銀木犀と紅葉が見える部屋に辿り着き、神は振り返る。
「良い夜を」
定型文のようにそう伝えた神は来た道を辿った。思わず薫子は神に声を掛ける。
「神様」
その場で足を止めてくれた神。なぜ呼び止めたのか。その理由を自分の中で探ったが、なにも出てこなかった。
「おやすみなさい、良い夜を」
結局ぎこちない挨拶をする薫子に、神は振り返らず「ああ」とだけ返してそのまま歩いて行く。廊下の角を曲がる彼の背中を追うように、月光に反射した白髪がサラリと舞って消えた。
薫子はそれを見送ると、室内に入って布団に倒れ込む。
「明日、村に帰れる」
素直に嬉しい。二度と戻れないと思っていた家へ帰れるなんて喜ばしいことだ。
(母さんたち、きっと心配してる。弟達も…もしかしたら泣いているかもしれない)
次々に浮かんでくる家族の顔や、村の人々の笑顔。帰りたい。帰りたいはずなのに。
「それなのに、どうして」
何故あの寂しそうな大きな背中が浮かぶんだろうか。
ふと薫子は自分の着ている羽織を見つめた。純白の生地に施された金の刺繍は、薄暗い部屋の中でも輝いている。流石にこのまま寝転がっているのはまずい。
裾を踏まぬようゆっくりと起き上がり、部屋の隅にある未使用の衣桁に丁寧に掛けた。史に貸し受けた羽織と神から貸し受けた羽織を並べ、薫子は改めて布団に入り直した。
急に襲ってきた睡魔に抵抗せず、目を閉じる。ふわりと香るお香と桜の匂いは、何故か懐かしさを感じる匂いだった。
(どうしよう)
コンと軽やかに夜空へ響く鹿威しの音色とは裏腹に、薫子の心の中は不安と焦りでどん底だ。
「先ほどの話、どこまで聞いていた」
「…史さんが、私を村へ返したいという下りからです」
誤魔化したところで神には通用しないだろう。薫子が震える唇で正直に答えると、神は一言「そうか」とだけ呟いた。
薫子は横目で神を見る。彼は何かを考えているようで、まっすぐと揺らぐ水面へ注がれていた。再び鹿威しが軽やかに鳴く。静まった屋敷と庭は、ここではない遠い異世界を彷彿とさせた。
「薫子」
「は、はい」
長い沈黙が続き、何度目か分からなくなった鹿威しの音色が響いた頃。神は口を開いた。
「お前は帰りたいか、自分の家に」
突然の質問に薫子は思わず目を見開く。神は水面から薫子へ顔を向けた。布の覆面のせいで表情は何も見えないが、どこか酷く寂しそうだった。
(ここで頷けば、返してくれるのだろうか。そんな簡単に生贄が人の世に戻って良いのだろうか)
色んな考えがぐるぐると脳内を駆け回る。そんな時、奔走する頭の中から一つ不思議なものが見つかった。
「…どうして、それ程までに寂しそうなんですか」
「は…?」
ポロッと零れる言葉。神も流石に驚いたのか、呆気に取られたような声が返って来る。
そして同時刻、薫子も自分の後先考えない発言に驚いていた。昔から脳と口の間に挟むものが少ない娘だと言われてきたが、ここまで自覚する日が今までにあっただろうか。
(まずい、怒らせたかもしれない)
中々に無礼な発言をした気がする。薫子は急いで神に身体ごと向いて床に手を着いた。
「寂しい、か」
土下座をしようとしていた薫子の耳に届いたのは、怒りの声でも、冷めた声でもなく、ただただ無気力な声。顔を上げると、神は銀色に輝く月を見上げていた。
「もう、この世にも疲れてきた。何千年と繰り返される人間達の取るに足らない抗争や怨恨、賊心、悲憤慷慨、私欲にまみれた卑しい願望。私は奴らを見ていると、どうしようもなく虚しくなる」
月から池へ視線を移す神。泳いでいた鯉が一匹水面を弾いた。薫子はそんな神の独り言にも近い言葉を聞き、心が締め付けられるようだった。
「最初は人の世の濁りを少しでも消し去ろうと、願いや望みを叶えてやった。雨を降らせ、植物を増やし、人が住みやすくなるようにこの地を変えた」
ふわっと風が木々をすり抜け、水面を揺らす。コツンと鹿威しと岩がぶつかり合う音が響いた。
「だが人間達は貪欲だった。叶えれば叶えるほど私に縋り付き、自分の足で進まなくなり、遂には争いを起こした。動植物は次々と息絶え、再び空気は淀みを生み出した」
薫子は淡々と語る神を見て、ふと察しがついた。
(ああ、きっとこの神様は)
人の世を、人間を、とても愛していたのだろう。でも干渉し過ぎた結果、人間の汚い部分を引き出してしまった。それは彼の優しさと、最も相性の悪いものだったかもしれない。
「…随分と、遠い昔の話だ。四千年くらいだろうか」
(また、四千年…)
桜の巨大樹を植えたのも、それくらい前の事だと昼間言っていた。もしかしたら、あの桜の木は人間から親睦の証にと貰ったものなのかもしれない。だから今日に至るまで、ずっと切り倒せなかった。自身の愛情はなくとも、そこには確かに人間達の想いが在るはずなのだから。
「……あの鳥居を一歩でも出れば、外は人の世。外界からは容易に入れぬが、内から外へは好きに行ける」
「え…?」
また沈黙が続いたと思えば、神は神楽鈴の様に美しい声音で薫子に告げる。薫子は一瞬理解できず聞き返した。
「今夜はもう遅い。明日の朝支度をして元居た村へ帰れ。そして忘れろ、ここで起きたこと全て」
「か、神様…」
神は立ち上がって縁側から部屋に入り、衣桁に掛かっていた金の刺繍が美しい羽織を手に取る。そして縁側に正座して座っていた薫子の肩に掛けた。
「神様…!」
「羽織無しで出歩くな。ここは春の気候だが、夜風は体を冷やす」
慌てて立ち上がり、羽織を返そうとする薫子だったが、ぴしゃりと神が言いつける。
大人しく羽織に腕を通し始めた薫子を見ると、神は徐に手を伸ばした。史に切り揃えて貰った髪が、神の細長く美しい指に掛かる。
「え、あれ」
指が触れた瞬間、湿っていた髪が乾いた。さらさらと指の隙間を流れていく髪の毛。
(すごい、一瞬で…)
しかも男達に荒っぽく切られていたので少し痛んでいたのだが、今は髪の質感も元通り以上に良くなっている。
「…行くぞ」
神は薫子の髪から手を引くと、そのまま部屋を通り過ぎて廊下へ出て行った。長い白髪が背中で揺れている。
「どこへでしょう」
薫子は急いでその後ろを追いかけて廊下へでた。
「お前の部屋だ」
「え」
まさか、と頬が赤くなるのを感じる。しかし、そんなわけあるかと自分を律し、表情を元に戻した。百面相もいいとこである。
「ここにいる限り安全だが、人間は些細なことで死ぬ。念のため、部屋に入るまで私が見送ろう」
それに史はお前のことになると五月蠅いからな、と付け足した神は部屋の襖を閉めた。
それから二人は無言で薫子の部屋まで向かった。銀木犀と紅葉が見える部屋に辿り着き、神は振り返る。
「良い夜を」
定型文のようにそう伝えた神は来た道を辿った。思わず薫子は神に声を掛ける。
「神様」
その場で足を止めてくれた神。なぜ呼び止めたのか。その理由を自分の中で探ったが、なにも出てこなかった。
「おやすみなさい、良い夜を」
結局ぎこちない挨拶をする薫子に、神は振り返らず「ああ」とだけ返してそのまま歩いて行く。廊下の角を曲がる彼の背中を追うように、月光に反射した白髪がサラリと舞って消えた。
薫子はそれを見送ると、室内に入って布団に倒れ込む。
「明日、村に帰れる」
素直に嬉しい。二度と戻れないと思っていた家へ帰れるなんて喜ばしいことだ。
(母さんたち、きっと心配してる。弟達も…もしかしたら泣いているかもしれない)
次々に浮かんでくる家族の顔や、村の人々の笑顔。帰りたい。帰りたいはずなのに。
「それなのに、どうして」
何故あの寂しそうな大きな背中が浮かぶんだろうか。
ふと薫子は自分の着ている羽織を見つめた。純白の生地に施された金の刺繍は、薄暗い部屋の中でも輝いている。流石にこのまま寝転がっているのはまずい。
裾を踏まぬようゆっくりと起き上がり、部屋の隅にある未使用の衣桁に丁寧に掛けた。史に貸し受けた羽織と神から貸し受けた羽織を並べ、薫子は改めて布団に入り直した。
急に襲ってきた睡魔に抵抗せず、目を閉じる。ふわりと香るお香と桜の匂いは、何故か懐かしさを感じる匂いだった。
あなたにおすすめの小説
亡き姉の身代わりとして嫁いだ私ですが、離縁状を置いた翌朝、夫が私の「真実」に気づいたようです』
まさき
恋愛
「サインはもう、いただきました。あとは私がこの屋敷を出るだけです」
五年間の結婚生活。侯爵令嬢エルゼが演じ続けたのは、亡き姉・ロザリーの「身代わり」という配役だった。
夫であるカイル公爵が愛していたのは、かつて雪の中で自分を救ってくれた初恋の少女・ロザリー。
生き写しの妹であるエルゼを娶りながらも、彼は一度も彼女を「エルゼ」と呼ぶことはなかった。
冷淡な視線、姉と比較される日々。
「君はどこまでいっても、ロザリーの代わりにはなれない」
その言葉を最後に、エルゼは静かに離縁状を置き、屋敷を去る決意をする。
しかし、彼女が消えた翌朝。
カイルは、エルゼが大切に遺していった古い小箱を見つける。
そこにあったのは、十五年前のあの日、彼が「命の恩人」に預けたはずの片方のカフスボタン。
そして、幼いエルゼが綴った、あまりにも切ない真実の日記だった。
――「あの日、雪の中で貴方を抱きしめていたのは、お姉様ではなく、私だったのです」
真実を知り、絶望の中でエルゼを追うカイル。
だが、すべてを捨てて「自分」を取り戻したエルゼは、もう二度と、彼の隣で微笑む仮面の妻には戻らない。
これは、名前を奪われた女が自由を掴み、愚かな夫が真実の愛を失うまでの、静かで鮮やかな再生の物語。
遺産は一円も渡さない 〜強欲な夫と義実家に捨てられた私、真の相続人と手を組み全てを奪い返す~ (全10話)
スカッと文庫
恋愛
「お前の価値なんて、その遺産くらいしかないんだよ」
唯一の肉親だった祖父を亡くした夜、夫の健一と義母から放たれたのは、あまりにも無慈悲な言葉だった。
四十九日も待たず、祖父が遺した1億2000万円の遺産をアテに贅沢三昧を目論む夫。だが、彼には隠し通している「裏切り」があった――。
絶望の淵に立たされた由美の前に現れたのは、亡き祖父が差し向けた若き凄腕弁護士・蓮。
「おじい様は、すべてお見通しでしたよ」
明かされる衝撃の遺言内容。そして、強欲な夫たちを地獄へ叩き落とすための「相続条件」とは?
虐げられてきた妻による、一発逆転の遺産争奪&復讐劇がいま幕を開ける!
「今更、あなたの娘のふりなどできません」〜ずっと支えていた手を、そっと引っ込めただけです〜
まさき
恋愛
父が死んだ日から、私は屋敷の「異物」になった。
継母は新しい夫に夢中で、義姉たちは私を使用人のように扱い、継父は三年経っても私の名前を覚えない。
気づいていなかったのだ、あの人たちは。
私の「静寂の手」がずっと、この家を守り続けていたことを。
ある夜、私は静かに荷物をまとめた。
怒りもなく、涙もなく、別れの言葉すら残さずに。
三ヶ月後、屋敷に原因不明の病が広がり始める。
「リーナを探せ」
今更、ですか。
私はもう、別の場所で別の名前で——ちゃんと生きています。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。