桜咲く社で

鳳仙花。

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第一章

第十話 後悔は誤りの確信


 「ねーちゃん!雑炊のお椀!」
「ありがとう菊太きくた。そこ置いといて」
お椀を重ねてきたよわい十二程の少年に礼を言い、薫子はお玉で鍋をかきまぜた。鍋の中の雑炊は、米と麦が混じっており、さらにかさ増しとして大根と人参、山で採れた山菜が入っている。
 薫子はズッとお玉から雑炊をすすって味を確かめた後、お椀に一杯ずつよそっていった。
「ねーちゃん、運んでもいい?」
「いいよ」
菊太と呼ばれた少年は、お椀を二つ持つとそのまま走り出す。
「暗いんだから、転ばないでね」
「大丈夫!」
ペッと草履ぞうりを起用に脱ぎ捨てると、菊太は月光に照らされた廊下を駆けて行った。
 その背中を見送った後、薫子は足元へ視線を落とす。パチパチと燃える釜戸の火が薄暗い台所を照らしていた。
(これからどうしようかな)
自然と溢れるため息は、ここ数日で何度吐いたか分からない。薫子は一旦頭の中を整理しようと、鍋を片付けながら数日前のことを思い出していった。

 時はさかのぼり、数日前。
薫子が村へと帰還したその日、そのままの足で家に戻っていた。案の定兄妹たちは泣いて走り寄って来たし、村人たちから話を聞いてすっ飛んできた両親の眼下がんかにはくまがあった。悪い事をしたと思ったが、まる二日間音信不通で家を空けた事について薫子に非はない。
 これから謝らなければならないのは、家を無断で空けてしまった事でも、何の連絡もなく帰宅したことでもない。もう二度と、ここに戻ってこないという事である。
 「許せるわけが無いだろう」
予想通り、返ってきた父の言葉は否認だった。
(そりゃそうだ)
薫子は父の否認は当たり前のことだと思う。嫁入り前の娘が家を出るなんて、異常以外の何者でもない。
 だが薫子だって、両親が望んでいるであろう幸せの形を想像し無かったわけじゃ無い。普通に暮らして、誰かの元へ嫁いで、子を産んで、人並みに苦労し、小さな幸せをつむいでいくことも考えていた。
 しかし、どうして神をあのままにしておけようか。未だに理由は謎のままだが、それでも薫子はあの社との縁をここで断ち切りたくなかった。
「薫、お前には沢山苦労を掛けてきたし、負担も背負わせてしまっていた。だからこそ父さんと母さんは、自分が幸せだと思える選択を取っていいと、お前に言い聞かせてきたんだ…」
父は辛そうな顔で、対面して正座する薫子を見つめる。その隣では耐えきれなかったのか、母が畑仕事で汚れた着物の袖で涙を拭っていた。
「でもな、薫。それは、自由に家を捨てても構わないってことじゃない」
(やっぱり、そうなるよね)
分かっていた。家族をないがしろにする行為だと。親不孝と言われても仕方のないことだと。
「薫……せっかく帰ってこれたのよ。お願いだから、ここに居て頂戴」
ボロボロと涙をこぼす母を見て、ぐっと唇を嚙みしめる。今までだって一度たりとも、強く優しい母のこんな涙を見たことはない。自分がそうさせているのだと思うと、胸が張り裂けそうだった。
「神様が良い方なのも、史さんが素敵な方なのも十分わかった。だけど……だけどね…」
母は薫子の元へ寄ってくると、薫子を力いっぱい抱きしめる。下の兄妹が産まれてから、甘える事をやめてしまった薫子にとっては久方ぶりの母の温もりだった。ふわりと首筋から香る母の汗と優しい匂いに、薫子は目頭が熱くなる。
「私は貴女や、菊太達に幸せに生きて欲しいの。特別な事なんて何も望まない。みんなが笑って幸せなら……それだけで、私は生きてきて良かったと思える」
「母、さん」
母の涙と嗚咽おえつでぐちゃぐちゃの告白を受け、薫子は迷ってしまった。
(私がした選択で、不幸になる人がいる)
そう思うだけで、自身の中の決意が大きく揺らいだのが分かった。
 黙り込んでしまった薫子を見て、父は「母さん」とさとすように呼んだ。母は袖で涙を拭いて父の隣に座り直す。
「薫、お前が考えなしにその選択をしたわけじゃ無いっていうのは分かる。だけど、俺たちの気持ちもよく考えて欲しいんだ」
「……」
床の板の目を見つめて黙ったままの薫子。父は目を伏せた。
「とにかく、お前を社へは行かせない。話は終わりだ。俺は仕事に戻るよ」
そう言って立ち上がり、草履を履き始める。薫子はハッとして「父さん」と呼び止めたが、一瞬足を止めただけで、振り返ることなく家を出て行った。
 「……父さんは、貴女が大好きなのよ」
母は真っ赤な目を擦り、薫子の肩をポンと撫でる。そして何か言いたげにしていたが、えるように畑へと向かっていった。
 一人取り残された薫子は、がっくりと肩を落とす。
(どうやって説得したら…)
あの様子じゃ何を言っても取り合ってはくれない。両親の気持ちを考えたら仕方のないことだし、もし薫子が同じ立場であっても同じことを言ったと思う。
(だけどここで、はい分かりましたなんて言えない。帰ると約束した)
懐に手を当てて、神と交わした約束を思い出す。預け渡された神力の結晶は、焚火のほむらの様に温かい。
 「あ…」
その時、襖の隙間から覗いている視線に気が付く。振り向くと、兄妹たちが涙目で薫子を見つめていた。
「菊太、藤助ふじすけ菖蒲あやめ
名前を呼ぶと堰を切ったように泣き出し、走り寄ってくる。わんわんと泣きじゃくる兄弟たちをまとめて抱きしめ、薫子は固く唇を噛みしめた。

 それが数日前の話だ。社に関する話はあれ以来ろくに取り合ってもらえず、まだ幼い兄弟たちですら空気を察し、その話には干渉してこない。
(流石にもう神も待ってないよな)
村まで送ってくれた上に結晶まで預けてくれたというのに、当の本人は音信不通で帰ってこないときた。神の怒りに触れて村にいかづちが落ちて来ないだけまだマシだと心中で思う。
(冗談言ってる場合か)
額に手を当ててため息を吐くと、どたどたと騒がしく走ってきた菊太に残りのお椀が乗ったお盆を渡した。無残に脱ぎ捨てられた菊太の草履を整えながら、薫子は片手で前掛けを外して廊下に上がる。
(とにかく、早く説得しなければ)
慎重にお盆を運ぶ菊太の後姿を見ながら、薫子はもう一度父と話すことを決心し、家族が待つ居間へ向かった。

 「薫、ありがとう」
「どういたしまして」
薫子が自分の場所に座ると同時に、自室で針仕事をしていた母が藤助に手を引かれて居間にやってきた。まだ背の低い藤助に引っ張られると腰が前かがみになるので、かなり歩きづらそうだ。
 ふと父を見ると、仕事終わりに水浴びをしてきたらしく、髪に雫が付いている。
「人参、入ってるな…」
「食べなきゃだめですよ、貴方」
「わかってるさ。子供じゃあるまいし…」
母にぴしゃりと言われている父。それを見た菊太が笑った。
「とーちゃん、人参嫌いなのいつになったら治るんだよ。俺でも食べれるのに」
「いいか?菊太。人間苦手なものは苦手なんだよ」
でも薫子の料理なら頑張って食べるぞ、と腕まくりをする父を見て薫子は顔を伏せた。
 (良い人なんだ。本当にみんな…)
賑やかに食事を始めた家族を見て、改めて痛感する。
 菖蒲は最近箸が扱えるようになり、一生懸命自分の口に雑炊を運んでは薫子に「おいしーね」と笑ってくれるし、藤助はそんな菖蒲を気にかけつつ、苦手な大根を頑張って咀嚼そしゃくしていた。
 薫子は向かいの席の菊太へ視線を移す。彼は最近母について回って畑仕事を手伝うようになり、肉刺まめだらけの手を自慢げに両親に見せびらかしている。父も母もそれを見て嬉しそうに菊太の頭を撫でてやっていた。
 (私は、どうしてこの家族の元へ帰る選択じゃなく、社に戻る方を選んだんだろう)
雑炊を見つめながら、ふと自分自身にたずねる。
(どうして、神様あの人を放っておけないんだろう)
くるくると箸先で雑炊をかき回し、お椀に口をつけて啜った。暖かいいつもの家の味が口に広がる。
 (あの晩、緊張しながら神の隣に座っていた。だけどどこか懐かしい気持ちもあって、とても不思議な感覚だった)
鹿威ししおどしが鳴り響くあの庭の空気。自分よりも遥かに大きい上背うわぜいの神の体。美しく反射する水月すいげつ。風に乗って香る、桜とお香。
 初めて訪れた場所と空気に触れて、薫子は疑問を抱いた。
何故なにゆえ懐かしいと思うのか)
至極普通の疑問である。人間は来たことのない場所を見て、落ち着く景色だと思う事があるそうだが、あの時感じたのはその程度ではなかった。例えるなら、遠い昔に訪れた事があるような感覚に近い。
 そしてその疑問と共に、ひとつ確信したことがあった。
(私とあの社は、何かしらのえにしがある)
本能に近い感覚ゆえに根拠や証拠は一切ないが、どうしてなのか、すんなりと腑に落ちた。
 とはいえ、そんなぶっ飛んだ話を両親にしたところで聞いてもらえないだろう。当たり前すぎて赤子でもわかる。要約して運命ですと伝えて、はいそうですかと送り出す親はまず居ない。
(…それでも)
薫子はお椀を膳に置いて懐に手を当てる。中には史から預かった結晶があった。ほのかに温かい結晶が、薫子の緊張を少しほぐしてくれる。
(私は、約束した)
鳥居の前で送り出してくれた神の姿を思い出す。一度ちぎった約束を破るような真似はしたくない。
「父さん、母さん」
「ん?」
にこにこと笑う父と母を見て、罪悪感が押し寄せる。薫子は押し切るように口を開いた。
(ごめん。父さん、母さん)
「やっぱり私は、社に戻ろうと思う」
その瞬間、水を打ったように静まり返る居間。薫子は冷や汗が頬を伝うのを感じる。居心地が悪かった。
 暫く無言が続いたのち、父のお椀と箸を置く音が静かな居間に響く。
「……なぜ?」
返ってきた父の声音こわねは、頭ごなしに怒鳴りつけるような声ではなかった。だがいつもの優しい雰囲気とは随分と遠い。
(引くな、薫子)
自分を鼓舞こぶして振るいだたせる。
「約束した。戻るって」
「どうしてただの人間の娘が、あの場所に留まる必要があるんだ?」
「……それは」
押し黙ってしまった薫子。理由をひねり出そうと頭を回転させたが、何も出てこない。
(そう、父の言っていることは何も間違っていない。客観的にみたら間違っているのは私の方)
分かっているからこそ、反論が出てこなかった。今すぐ家を飛び出して社に行く事は可能だが、それでは本当に家族を捨てる事になる。それだけは絶対にしたくなかった。
 「結論から言う、だめだ」
ため息と共に出た父の結論は、ここ数日の返答と同じものだった。
「父さん」
「だめと言ったらだめだ。絶対に行かせない。大事な娘に生贄まがいの真似はさせないよ」
「生贄なんかじゃない。話をちゃんと聞いてよ父さん。私は」
「黙りなさい薫子」
ビリビリとした空気が走る。滅多に見せない父の怒りに、兄妹たちは青い顔をしている。薫子ですらもここまで怒っている父を今まで見たことが無かった。
「…俺はだめだと言ったんだよ。聞こえなかったのか?」
「……でも」
「でもじゃない。聞き分けなさい」
父はそう言うと再びお椀を手にして雑炊を啜る。薫子は膝に置いていた手を握りしめ、ぽつりと声を零した。
「…私は、この家族が大好きだ」
「薫…?」
心配そうな母の声が聞こえたが、回り始めた口は止まってくれない。
「両親は私の幸せを心から願ってくれるし、兄妹たちは私をしたってくれる。こんな良い家族、他に居ない、二度と会えない。……だけど」
薫子は顔を上げ、立ち上がる。
「私の幸せは私の物だ。誰かに嫁いで普通の生活を送ることも幸せかもしれないけど、それは父さんと母さんが決める事じゃない。私が、人生を掛けて見つけていく事」
「薫子……」
父は目を見開いて唖然としている。薫子は下唇をぎゅっと噛んで父を見下ろした。
「私は後悔しない生き方をするって自分に誓ってる。今までだってそう生きてきた。それで自分が不幸になったって別に構わない。そこから這い上がって、絶対幸せになって笑ってやる」
薫子が勢い任せでそう言うと、父は辛そうな顔で俯く。母も泣きそうな顔で薫子を見上げていた。
(親不孝者で本当に、本当に…ごめんなさい)
指をさされてののしられても仕方がない。だけどあの社を忘れて生きていくには、心に引っかかることがあまりにも多いのだ。
 感情が高ぶりすぎたのか、目頭から涙があふれる。それを拭いながら思い出したのは、自分を可愛がってくれていた祖父の最後の言葉。
「死ぬまで覚えている後悔は、選択を誤ったという確信かもしれない」
その言葉は、幼かった薫子には到底理解できぬものだったが、年を重ねるごとに分かってきた。
 人間は間違いを必ず起こしてしまう生き物だ。しかし、回避することが出来る可能性を秘めているのもまた、人間という生き物。無限に広がる選択肢の数だけ正解があり、失敗がある。もしもそのせいを終える瞬間まで、後悔し続けていたとしたら。それは選択を誤ったという自分の中に唯一残された証拠であり、確信なのである。
だから薫子はなるべく自分が納得できない選択を、今まで一度もしてこなかった。そしてそれは、今回も同じこと。社へ戻るという選択以外を選んだら、死ぬまで後悔すると思ったのだ。
 「薫子……お前は」
顔を上げた父は、酷く悲しそうな顔で薫子を見上げている。ここまで来たらもう後には戻れない。
「父さん、母さん、私…」
薫子が涙を拭って口を開いた瞬間だった。急に外が騒がしくなり、縁側から見える空が不自然に明るくなった。どうやら大量に松明を灯しているようだ。
「え、何?」
「どうしたのかしら」
菊太は縁側の方を振り向く。母も立ち上がって庭に出た。
「おい!みんな出てこい!早く!」
外から聞こえた声に、父は「もしかして火事か!?」とハッとした様子で立ち上がる。火事という言葉を聞いて菊太と藤助が固まった。まだ意味が分かっていない菖蒲はきょとんとしている。
 しかし。
「茜鶴覇様だ!茜鶴覇様がご降臨なさった!みんな早く表へ!!」
耳に飛び込んできた村人の伝達にその場の全員が目を見開いた。
そしてこの前代未聞の神の行動が、薫子の人生を大きく変えていくことになる。


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