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第一章
第二十六話 あやかしと現世の均衡
茜鶴覇の部屋を退室した後、薫子は史の一歩後ろを歩き始めた。
「ごめんなさい、話について行けないわよねぇ…。要所要所で説明を挟みたかったのだけれど、難しそうだったの。許してね」
肩越しに振り替えた老婆がㇵの字に眉を下げる。
「い、いえ。私が理解せずとも良い話なのでしょうから」
そもそも神やあやかしの世界の事情も知らぬ人間が、話し合いの場に滞在している事自体本当はおかしな話なのである。薫子に聞かせても良い内容なのか、ギリギリの話題も上がっているので、こちらが肝を冷やしている状態だ。これで後から知りすぎたからと罰せられても困る。
「……いいえ、薫子さん。それは違うわよ」
「え…」
やんわりと否定する史。ぴたりと足を止めた。
「ここに来た以上、貴女はもう天界の関係者よ。茜鶴覇様はこの世界で重要な立場に着くお方、それはもう貴女にもわかっている筈。その身内となったという事は、人も神もあやかしも関係なく、この世界で起きている事を知らねばならない」
史は真剣な表情で語る。
「……でも、最初は知らなくて当然。だから今から少しだけお話をしながらお茶の支度を致しましょう」
ふわりと笑う史に、薫子は少しだけ笑い返して頷いた。
台所に到着し、月明りの挿し込む薄暗い中に、薫子は小さくなっていた釜戸の火を起こし直す。その間に史は火打石と火打金を打ち合わせて行灯を灯した。多少明るくなった後、史は棚から茶葉を取り出した。
「風牙様…というのは、一体何者なのでしょうか」
薫子は火を起こし終わったあと、立ち上がりながら質問した。史は急須を軽く水で漱ぎながら答える。
「風神様よ」
「風神様…」
繰り返し呟くと、史は「ええ」と頷いた。
「風牙様は圓月様と同じく、茜鶴覇様のご友人なの。とても寡黙だし無表情だけど、穏やかで優しい方よ」
類は友を呼ぶというが。
(要は茜鶴覇様みたいな感じなんだな)
ぼんやりと頭の中で想像するが、今の話を聞いていて茜鶴覇の顔が二つ出てきた。双子みたいに並んでいて少し笑ってしまう。失礼極まりない。
「風牙様には雷神様であるご兄弟がいらっしゃってね。彼も又茜鶴覇様と親しい関係なのよ」
神には極稀に兄弟と区分される神種が存在する。事情は分からないが、伝説などでは共に語り継がれる事が多い。そしてそれは風神と雷神も例外ではないのだ。
(そうか、その二人が古来から伝わってきた風神雷神なんだ)
茜鶴覇と同じく、古くから人々に知られる神としてその中に風神雷神も含まれる。その名の通り風神は風を、雷神は雷を司る神だ。幼い子供らにとっては、あやかしと同じく恐怖の対象である。生憎薫子はあやかしや風神雷神に特別恐怖感を覚えたことは無かったので、大人たちの脅しは効かなかった。
「雷神様は風牙様と正反対で、とても活発で勝気な方よ。特に圓月様とは、その点気が合っていらっしゃるみたいね。お二方でお酒を嗜んでいるのをよく見かけるわ」
静かな茜鶴覇と風牙。騒々しい圓月と雷神。合わなさそうな性格の四人が集結して話している所を想像してみたが、中々混沌としていたので考えるのをやめた。そこに十六夜が加わっているかもしれないと思うだけで、もうお腹いっぱいである。
「お湯を貰えるかしら」
「あ、はい。どうぞ」
薫子は湯気を出し始めた土瓶を両手で渡した。少量しか沸かしていないとはいえ、そこそこ重たい筈なのだが、史は軽々と片手で土瓶を傾けて湯を注いでいる。
(……私も鍛えようかな)
自分の手のひらを握ったり開いたりしていると、史がクスクスと笑いながら口を開いた。
「無理しなくても大丈夫よ」
薫子の考えはお見通しらしい。やはりこの老婆は侮れない。
茜鶴覇の私室へ戻ると、部屋の各所に置かれた行灯の光に照らされ、先程と変わらない神妙な面持ちで話し合っている神とあやかしが居た。
「皆様、お茶をお持ちしましたよ」
「おう、ありがとな」
湯呑に茶を注いでいく史に礼を言うと、圓月は襖の前に座った薫子に声を掛ける。
「薫子もそんな隅っこに居ねぇでこっち来い」
「え」
「ていうか悪かったな。全然わかんねぇ話聞かせ続けちまって」
薫子は首を振る。
「いえ、先程史さんに色々と教えて頂きましたので…」
「とりあえず、風神様と雷神様のお話はいたしました」
史は十六夜の湯呑に茶を注ぎながら付け加える。
「ならよかった」
注がれたばかりの茶を啜り、圓月は「あちっ」と声を漏らす。薫子は史に手招きされたので、大人しく座布団を持って史の隣に着いた。
「……さて、ひとまず風牙の事は放っておこうかの。今は目の前で起きているあやかし共の対処をせねばならぬ」
十六夜が改めて議題を出すと、茜鶴覇が袖の中で腕を組む。
「現在は西方のみで被害が収まっているが、今後どこで粉末が撒かれるか予測ができない。暫く土地神達に警戒させよ」
「承知した」
十六夜は素直に頷いた。薫子はふと考える。
(神の神力によってあやかしを祓えるなら、それを使って悪さをするあやかしを退治しても良いのではなかろうか)
すると、圓月が薫子の考えている事がなんとなく分かったのか、気まずそうに口を開く。この男、ガサツに見えて他人の表情を読むのが上手い。
「俺達は負の者だが、居なくなったら居なくなったで現世の均衡が崩れるんだよ」
「現世の、均衡…ですか」
「ああ。神が聖なる存在だとしたら、俺達は邪な存在ってわけだが、あやかしが居なくなって本当に困るのは人間なんだ」
圓月はそう言うと、後ろに手を着いて姿勢を崩す。
「あやかしがどうやって生まれるか知ってるか?」
「ええ、人間の負の感情から生まれるんですよね」
「そう、その通りだ」
薫子が答えると、軽く頷いて見せる。
「もしあやかしが居なくなったら、かなりまずい。吐き出されなくなった人間の負の想いはやがて大きな邪気となり、世界に害を及ぼす。そして重要なのは、その力が神にも通用するってことだ。大抵の人間の武器じゃ神には効かねぇが、それに邪気が籠ってたとしたらその刃は神に届く」
(なんだって)
薫子は目を見開く。神に傷をつけられるのは神力を持つ者だけだと思っていた。仮にそんな世界になったとしたら、神と人間は敵対するかもしれない。
「……察しが良くて助かる。もし、あやかしって存在が消えて人間どもがそんな力をひとりひとり秘めていたとしたら、間違いなく神と人は相容れない。それどころか大きな争いだって起こってたかもしれねぇ。そうなりゃいくら対抗する力があったとしても、強大な力を有する神が相手じゃ、圧倒的に人間が不利だ」
(つまり、滅ぶのは人間の方…)
湯呑の水面を見つめながら淡々と話す圓月。茜鶴覇も十六夜も何も言わなかった。恐らく圓月の見立ては正しいのだろう。
「俺達あやかしは、その負の感情が邪気に変わる前に人間から抜け出して生まれる。とはいえ、ぽんぽん数が増えても困るからな。大体はあやかしが産まれる前に餌として吸われるんだ」
薫子は以前史が説明してくれた事を思い出す。確かに彼女も「あやかしは負の氣を食らって生きている」と言っていた。
「だからむやみやたらに祓う事は出来ないんじゃよ」
十六夜がそう補足を付け加える。「まあそんなところだ」と圓月は頷いた。
そして少し間を置いて視線を庭へと移す。月光が降り注ぎ、鯉が静かに泳ぐ庭は現実離れした美しさがあった。
「…あやかし同士で縄張りや覇権を争って殺すこともあるが、それは誰にも咎められねぇ。野生の動物と同じだ。……だが、絶対に破っちゃならねぇ掟もある」
すっと三白眼の目を細める圓月。
「人間を殺して食う、それが破っちゃいけねぇ掟だ。誰であっても殺したやつは即刻殺す」
ビリビリとした空気が肌を刺す。先ほどまでワハハと笑い飛ばしていた男とは、完全に別人のようだった。
「…ではどうする、西のあやかし共は。すでに人間は食われている」
茜鶴覇が問いかけると、重いため息を吐いた圓月が答える。
「ここに来る前に、掟破りは全員斬ってきた」
端的に返ってきた答えに、茜鶴覇は「そうか」と返した。
「…まあ、何はともあれ。一旦はこれで落ち着いたはずじゃ。態々圓月が手を下したのはよい判断じゃったと言える。見せしめではないが、失った理性を呼び戻すにはちょうど良いお灸じゃよ」
浮かない顔の圓月に声を掛けると、十六夜は落ちて重くなった空気を切り替える為に話を完結させる。
「後は茜鶴覇のいう通り、四神らに警戒と牽制をさせておこう」
そこで薫子は気が付く。自分の頬に冷や汗が伝っていたことに。圓月のかなり圧迫していた空気感のせいで、体が酷く硬直してしまっていたのだ。
(肌がびりびりする)
初めて妖気というものを肌で感じた気がする。あの肌を指す感覚がそうだったのかもしれない。
「薫子」
茜鶴覇の声がしてそちらを向くと、自身の湯呑を差し出していた。
「飲め、落ち着く」
「……ありがとうございます」
湯呑を素直に受け取り口に含む。乾いた喉に染み渡る、温かい茶の渋みと甘みがほっと安心させた。それを見た圓月がハッとして焦りだす。
「わ、悪い薫子。俺が妖気出してたんだよな。大丈夫か…?」
「ええ、なんともないです」
よかったと胸を撫でおろすあやかしの長。
「薫よ、お主も史の様に慣れるとよいぞ」
「あらあら、私も普通の人間なのよ十六夜。慣れなんかしないわ」
そう言いながら汗一つ掻かずに平常を保っている史は、薫子からしたら人間ではない。いっそあやかしの類だと言ってくれた方が信じるくらいだ。
十六夜はケタケタ笑っていたが、「まあ、でも…」と呟いて話を切り出す。
「次の会議の議題には、今回の騒動の件があがるじゃろうな」
「どうせその時俺も呼び出されるんだろうなぁ、めんどくせぇ…」
ばたりと机に突っ伏した圓月は、心底嫌そうな顔をしていた。薫子は冷や汗を手で拭いながら問いかける。
「会議…ですか?」
すると、茜鶴覇がため息混じりに答えた。
「百年に一度、天界で会議がある。世に存在する上級神の中でも更に上の者達が集まり、主に現世での問題解決や裁判、報告等をする」
(……規模がでかすぎて意味がわからん)
薫子が死んだ魚の目になっているのを見た圓月が、苦笑しながら説明し直す。
「要は頭の凝り固まったお偉いさん方のつまらん話し合いだ。ここ数千年は殆ど平和な内容しか無いみてぇだけどな」
他人事のように話す圓月に、茜鶴覇も軽く頷いた。
「…圓月様は、毎回参加されていないのですか?」
薫子がそう問いかけると、圓月は肩をすくめる。
「まあ、神殺しの実には及ばないとはいえ、神にとっちゃあやかしは天敵とも言える存在だからな。呼ばれることはまず無ぇよ。……けど」
むくりと起き上がった圓月の顔は、どこか呆れた顔だった。
「今回は呼ばれるだろうな。首謀者の疑いを掛けられて」
「えっ」
薫子は思わず目を見開く。隣に座っていた史も眉間にシワを寄せた。
「神殺しの実はあやかしには薬、神には毒になる。それを粉末にしてばら撒いているとしたら、明らかに俺達の策略だと思われちまう」
行灯の光に照らされた彼の表情は、くだらねぇとでも言いたそうである。
「首謀者の狙いは現世の混乱か、それとも…」
十六夜はそこで言葉を切って圓月を見る。
「神と同士討ちさせてお前を消すつもりか。もしくは、その両方か……じゃな」
「…」
ジッと見つめあって居たが、圓月は「ハハッ」と笑って狂気的な笑みを浮かべて目を見開いた。
「上等だ。この俺を簡単に消せると思ってんなら、そいつの脳みそは幸せモンだな。ぜってぇ黒幕引き釣り出して俺は無実だって笑ってやる」
悪い顔をして口角を上げる様は、本人には悪いが邪悪そのものである。
(この説得力の欠片もないあたりが疑われる原因な気がするけど)
「まあ、あと数日もすれば天界から知らせが届くじゃろう。それまでは待機するしかあるまい」
十六夜はぐっと上半身を伸ばす。
「わしはそろそろ寝る。お主らも体を休めろ」
そう言って立ち上がると「じゃあの」と言い残して消えた。史は残された十六夜の湯呑を盆に乗せる。
「んじゃ、一旦お開きにしますかねぇ」
「ああ」
立ち上がる圓月の言葉に頷きながら、茜鶴覇も腰を上げた。薫子は史が湯呑を片付けている間に、全員が座っていた座布団を回収して押入れにしまう。
まだ少し体温が残る座布団をしまい込んだ後、薫子は先に出て行った圓月と史を追いかける様に部屋を出た。
「薫子、待て」
襖を閉じようとした時、茜鶴覇に呼び止められる。
「…もし、現世が不測の事態に陥り、己の身の安全が保障できない状況になった場合、お前は社から一歩たりとも出るな」
真剣な表情の茜鶴覇は「よいな」と念を押した。
「承知しました」
薫夫は頷いて見せる。確かにここより安全な場所は無い。己の身を最優先で考えるのであれば、結界の中に閉じこもるのが得策だろう。
薫子は「失礼します」と言って退室し、史の手伝いをする為に台所へ向かった。
これから数日後、薫子は天界を大きく揺るがす事件に巻き込まれるのだが、この時はまだ誰も知る由もない。
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