桜咲く社で

鳳仙花。

文字の大きさ
41 / 116
第一章

第四十一話 最悪の事態はすぐそこに

しおりを挟む

 「こちらです」
閻魔は全員が廊下に出たことを確認すると、城の中を歩き始めた。石造りの壁に床は木材、光源は廊下に一定の間隔をあけて蝋燭台の棚が置かれている。薫子は城の中を見渡しながら最後尾を歩いた。居間に通された時も思ったが、やはり不思議な造りである。強いて言うならば、現世に存在する世界各国の特徴が組み込まれている感じだ。
 薫子は壁の造りや時折ある異国情緒溢れる扉などを観察しつつ、足早に武静ウージンの一歩後ろを着いて行く。武静は何も言わないが、薫子が集団からはぐれない様に歩く速度を調節してくれているようだった。
(申し訳ない)
薫子は集団に置いていかれないように歩くことに集中する。
 すると、先頭付近に居た茜鶴覇が肩越しに振り返った。
「薫子、私の隣へ」
「は、はい」
急に呼びつけられた薫子は、小走りで茜鶴覇の隣へ向かう。
「……懺禍が居る手前、何が起こるか分からぬ。集団から離れるな」
茜鶴覇はそう言って薫子を見下ろした。特に拒否する理由もないので、薫子は大人しく頷く。
 閻魔の道案内に従って歩いていると、巨大な石造りの門がある部屋に辿り着いた。見張りの番兵が部屋の中に六体程いる。勿論部屋の前にも見張りが居た。
 石の門は、茜鶴覇達が天界を行き来する時に通る鳥居のような造りをしていて、結界のような幕が張られている。その先は真っ暗で何も見えない。
 「ここから先は地獄の最下層。業火の間です」
閻魔はそう一言挟むと先に入って行く。その後を追って入って行くと辺り一面火の海となった場所に出た。
「あっちーな…」
圓月は顔を歪める。薫子も外套で顔を覆った。
(確かに、熱い)
流石に神力や邪気を含んだ妖力を纏う茜鶴覇達と言えど、これだけの熱に囲われると辛そうである。薫子は外套を被っているので『熱い』程度で済んでいるが、もしこれを羽織っていなければ今頃体内の水分ごと蒸発しているかもしれない。
 「ここの炎は、にあった炎とは比べ物にならない火力を誇ります。悪事を働いた者は罪の大きさに応じて、気が遠くなる程長い時間この業火に焼かれ続けるのです」
閻魔はそう説明しながら炎の中に道を作り出し、先頭を歩いて行く。辺り一面業火に囲まれた空間は、時折刑罰を受けている者の叫び声が木霊していた。
 暫く進んでいると、激しく燃え盛る業火が見えてくる。メラメラと燃える炎は、この空間の何処よりも大きく揺れていた。
「ここが、懺禍の業火です」
閻魔は火の元で足を止める。
「確かにこれはやべえな。中が見えねぇどころか、看守だって燃えちまうぞ」
圓月はそう言いながら、時折飛んでくる火の粉を翼で吹き飛ばした。
「そうなのです。元々監視をしていた番兵がその強大すぎる火力の前に灰となって以来、看守の番兵は少し離れた場所で見張らせていました」
閻魔と言えど流石にこの業火の勢いは辛いのか、汗が吹き出ている。だが逆に言えばこの程度で済んでいる辺り、地獄の番兵達との格の違いが計り知れる。
 「こんな事なら蛇歌でも連れて来るべきだったな」
冗談交じりに圓月が呟くと、風牙は首を横に振った。
「名を己の中に封印しているという事は、それは即ち力の封印を意味する。今の彼女の力では一時的に炎の威力を落ち着かせる程度にしかなるまい。暫くすればきっと元に戻ってしまう」
「だよなぁ。炎には水って安直あんちょくな考えは捨てるしかねぇか」
諦めたように圓月はため息を吐く。しかし圓月の言う通り、炎に水を掛けて消火するという方法は単純で強力だ。それが使えないとなると少々厳しい。雪女である六花むつのはなも、流石に燃え盛る地獄の業火は凍結できないだろう。
 「どーすんだ茜鶴覇。この炎、そんじょそこらの水じゃ蒸発して終わりだぞ」
「……」
茜鶴覇は薫子に向かって伸びた炎を風で吹き飛ばし、炎を見上げる。ゆらゆらと揺れながら火の粉を撒き散らすそれは、まるで何かの生き物の様だ。
 「水が効かぬのならば、火で制す。それだけだ」
茜鶴覇はそう言いながら薫子を後ろへ下げる。圓月は意味が分からんとでも言いたげな顔で「はあ?」と声を漏らした。
「火で制すって……お前これ、地獄の業火だぞ」
「知っている」
茜鶴覇は淡々と答え、炎へ寄って行く。
「目には目を、歯には歯を。そして」
右の手のひらを炎に向け、茜鶴覇は己の火炎をその腕に纏わせた。
「炎には炎を」
そう言った瞬間、ゴオッという凄まじい音を立てて業火が揺れ動く。血のように赤く燃えていた炎が、茜鶴覇の炎に飲み込まれていった。
「あいつやりやがったなッ」
圓月は咄嗟に立ち尽くす薫子の腕を引き、自身の翼の後ろへ庇う。熱風が勢いよく走り抜け、近くの炎までもが激しく反応した。
(なんて熱……)
乾燥していた空気が更に湿度を失っていく。肌から水分が抜けているような感覚さえあった。他の者達もその熱の勢いに、体を硬直させて身構えているのが見える。
「茜鶴覇ァ!早くしろ…全員死んじまうぞ‼」
圓月が叫ぶと、茜鶴覇は更に炎の勢いを上げた。右腕に纏っていた火炎は朱から青へと変わっていく。
 やがて業火は激しく火の粉を吹き上げながら勢いを殺していき、完全に青に染まる。茜鶴覇はそれを目視で確認すると、手のひらをグッと握りしめた。
「やべぇ…ッ」
目を見開いた圓月は炎に背を向けて薫子を覆うように抱きしめる。その上から更に自分の翼で覆った。風牙は全員を守るように風の防壁を張り、辿李てんりと六花は協力して巨大な氷の盾を出現させる。巨体のぜんと閻魔は、近くに居た者達を庇う様に立ちはだかった。
 次の瞬間、巨大な破裂音と共に氷が水に戻る間もなく蒸発する音が薫子の耳に勢いよく飛び込んだ。キーンという耳鳴りが鳴り、思わず耳をふさぐ。信じられない程の熱風が嵐のように吹き荒れた。水蒸気と圓月の翼によって視界は完全に閉ざされ、薫子は目をぎゅっと瞑る。
 暫く全員がそのままで硬直していたが、場が落ち着いたことを確認すると圓月は薫子を解放した。そして大きな翼で蒸気を翼で吹き飛ばす。白い霧が無くなった辺りを見て、薫子は驚愕した。
「……業火が、消えた」
さっきまで激しく燃え上がっていた業火は、黒い灰を残して消えていた。煙が立ち上り、プスプスと燃え残りがくすぶっている。
 茜鶴覇を見ると、右腕の狩衣が燃え落ち、腕の皮膚がただれていた。大怪我である。
(早く手当を…)
薫子は茜鶴覇に近づこうと一歩近づいた。
「来るな、薫子」
茜鶴覇は振り向くことなく声を掛け、何もない灰の中を歩き始める。
 そう、中を。
「……懺禍は、どこだ」
辿李が目を見開いて呟く。そこで薫子もハッとした。
(そうだ、あの中には懺禍も居たんだ)
混乱していた頭がやっと落ち着いてくる。もしかしたら今の炎で燃えてしまったのかもしれない。そうだとしたら、かなりまずい事態だ。第三者の手で地獄に落ちた者を殺すとなった場合、その魂は輪廻を外れる事になる。それに、今までの事件についての情報を聞き出せなくなってしまったのもかなり痛い。薫子は状況把握をして冷や汗を頬に垂らす。
 「……」
茜鶴覇は灰の中央まで行くと、その場に片膝ついてしゃがんだ。そして灰を触る。
「……閻魔」
「はい」
閻魔は眉間にシワを寄せ、青い顔で返事をする。
「数日前から業火が燃え盛ったといったな」
「ええ、仰る通りです」
「高笑いが消えたのも、その時期と言ったな」
「……ええ、仰る通りです」
全員の頭に予期せぬ説が浮上した。それは絶対に在ってはならない事。起こさせてはならない事。しかしもう既に、事は起きてしまっている。
(そんな、まさか)
誰もが同じことを察し、血の気の引いた顔で立ち尽くした。茜鶴覇はゆっくりと立ち上がる。
「懺禍は、ここにはいない。もう既に地獄から脱獄している」
珍しく焦ったような声音でそう発言した茜鶴覇に、閻魔は口を開いた。
「そんな、そんな馬鹿な。ありえぬ…一体どうやって」
その答えを言わず、茜鶴覇は目を伏せる。その視線の先には燃えた灰が煙を出していた。
「……もうひとつ、懺禍とは別に何者かの力の痕跡がある。だがそれすらも業火が燃やし尽くしてしまい、あやかしの物か、それ以外の物かは判断ができぬ」
(ということはつまり)
脱走を手助けした何者かが居るという事だ。しかし、業火の炎と番兵の監視を回避しながらここまでたどり着くには、十中八九人間にはできない。そうなると、自然と人外に容疑が降りかかるだろう。燃えた肉片等が見当たらないという事は、恐らく懺禍と共に既に地獄ここを離れていると思った方がいい。
 閻魔は血管が浮き出る程力んで拳を握りしめた。
「よりによってヤツを…‼最悪だ」
閻魔は怒りが滲む声音で呟く。
 その時。
「風牙…?」
ふらふらとした足取りの風牙が灰の中へ足を踏み入れた。圓月が違和感を感じて呼びかけたが、瞳孔を開いて歩き続ける彼には全く聞こえていないようである。
「おい、風牙!」
圓月は薫子の傍を離れ、風牙に走り寄って肩を掴んだ。
「急にどうしたってんだ」
「……るんだ」
ぼそりと呟いた彼は、その場に膝から崩れ落ちる。
「分か……るんだ。俺達は、兄弟だから。弱くなろうと灰になろうと、俺はあいつの魂の気配を間違えたりしない」
灰を握りしめ、大量の汗を流す風牙。それを見下ろしていた圓月は、更に青ざめる。
「おい。待てよ、まさかお前……」
顔が強張った圓月は、風牙が言わんとしている事を察しているようだった。
「…嘘だと、嘘だと言ってくれ。頼むから、お願いだから……ッ」
汗と共にボタボタと大粒の涙が零れ落ち、灰が湿っていく。その涙の後すらも業火の間は蒸発させていった。
 風牙は灰を力強く握りしめる。
「嘘だって言えよ‼爪雷そうらいッ」
悲痛の声で叫んだその名前を、薫子は知っていた。それは風牙の兄弟であり、伍将殿下であり、茜鶴覇達の旧友である男の名である。
 薫子は思わず口を手で覆った。そこに居た誰もが言葉を失う。聞こえるのは業火の燃える音と、罪人の叫び声だけだった。






しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

置き去りにされた聖女様

青の雀
恋愛
置き去り作品第5弾 孤児のミカエルは、教会に下男として雇われているうちに、子供のいない公爵夫妻に引き取られてしまう 公爵がミカエルの美しい姿に心を奪われ、ミカエルなら良き婿殿を迎えることができるかもしれないという一縷の望みを託したからだ ある日、お屋敷見物をしているとき、公爵夫人と庭師が乳くりあっているところに偶然、通りがかってしまう ミカエルは、二人に気づかなかったが、二人は違う!見られたと勘違いしてしまい、ミカエルを連れ去り、どこかの廃屋に置き去りにする 最近、体調が悪くて、インフルの予防注射もまだ予約だけで…… それで昔、書いた作品を手直しして、短編を書いています。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます

天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。 王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。 影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。 私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

母は何処? 父はだぁれ?

穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。 産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。 妹も、実妹なのか不明だ。 そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。 父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。 母は、どこへ行ってしまったんだろう! というところからスタートする、 さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。 変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、 家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。 意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。 前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。 もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。 単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。 また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。 「小説家になろう」で連載していたものです。

アロマおたくは銀鷹卿の羽根の中。~召喚されたらいきなり血みどろになったけど、知識を生かして楽しく暮らします!

古森真朝
ファンタジー
大学生の理咲(りさ)はある日、同期生・星蘭(せいら)の巻き添えで異世界に転移させられる。その際の着地にミスって頭を打ち、いきなり流血沙汰という散々な目に遭った……が、その場に居合わせた騎士・ノルベルトに助けられ、どうにか事なきを得る。 怪我をした理咲の行動にいたく感心したという彼は、若くして近衛騎士隊を任される通称『銀鷹卿』。長身でガタイが良い上に銀髪蒼眼、整った容姿ながらやたらと威圧感のある彼だが、実は仲間想いで少々不器用、ついでに万年肩凝り頭痛持ちという、微笑ましい一面も持っていた。 世話になったお礼に、理咲の持ち込んだ趣味グッズでアロマテラピーをしたところ、何故か立ちどころに不調が癒えてしまう。その後に試したノルベルトの部下たちも同様で、ここに来て『じゃない方』の召喚者と思われた理咲の特技が判明することに。 『この世界、アロマテラピーがめっっっっちゃ効くんだけど!?!』 趣味で極めた一芸は、異世界での活路を切り開けるのか。ついでに何かと手を貸してくれつつ、そこそこ付き合いの長い知人たちもびっくりの溺愛を見せるノルベルトの想いは伝わるのか。その背景で渦巻く、王宮を巻き込んだ陰謀の行方は?

処理中です...