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第三章
第十五話 崩れ始める
西部。
「貴様らァ…ッ!」
土蜘蛛の網に捉えられたサタンは怒り絶頂だった。
身体にまとわりつく糸を無理やり千切り解くが、自慢の翼には網が複雑に絡み合い、とても飛べる状態ではなかった。
「俺の糸は伸縮自在。力押しのお前みてぇな奴には相性いいんだぜ」
辿李はサタンに向かって糸を差し向ける。それを見ると翼を広げるのを辞め、その場から跳躍した。木の上に乗るとサタンは辿李に吐き捨てるように反論する。
「だからなんだというのだ。飛べぬからといって我の力が半減するとでも?舐められたものだ」
「そんな事思ってないさ」
サタンの更に上から殴りかかった虎文。動きが鈍くなっていたサタンは瞬間の反応が遅れ、地面へ叩きつけられた。
「お前の力が半減するとは思ってない。そんな簡単に戦力外になるヤツ、懴禍の野郎が連れてくるわけねぇ。……けど、お前の退路は消しちまったなァとは思ってるよ。わりぃな」
そう言って目を細めて笑う虎文はサタン以上に重い雰囲気を纏っていた。辿李はその顔を見て少しばかりの悪寒を感じる。
虎文は飄々とした掴み所のない神だ。風のように流れてはいたずらに場を乱し、時に向かい風、時に追い風となる存在である。
普段彼のその性格故に面倒事をこれでもかと巻き込んでやって来ては皆の頭を悩ませているのだが、自分で持ってきた事は必ず自ら処理をしていた。誰の手を借りるでもなく、ひとりで。図ってか図らずしてか、彼は四神の中で最も多くの修羅場を乗り越えてきた男なのである。
(正直俺なら相手にしたくねぇけどな。強ぇってのが神力を通して分かる)
辿李は両の手に糸を出して構えた。
一概に強いといっても、力のみの話ではない。その場その場の状況の掌握も然り。そこからの判断の速さと的確さ、何よりどんな状況でも取り乱さない心構え。それが彼の強さを形作っている物なのである。
(とんでもねぇ判断や選択は多い。でもそれはその時点での最善である事が殆ど)
肌がひりつく威圧の中、辿李は虎文からサタンに視線を戻した。サタンは殴られた頬を拭ってフラフラと立ち上がる。神力をかなり込めた一撃だったのだろう。黒いモヤを出したまま、サタンの頬の傷は治らない。
「おい、もうここまでやっちまったんだ。今更引き返す気なんてないだろ」
虎文が訊ねるとサタンは青筋を浮かべた。
「それは尻尾を巻いて逃げるつもりはないのかと聞いているように見えるが」
「おっと、これは失礼。思ってた事顔に出てたか」
「貴様……ッ」
相変わらず侮辱しおちょくる虎文の安い挑発に、ついに我慢の限界だったようだった。無理やり羽についた糸を振り払い、サタンは虎文に襲いかかった。
「……おいおい、こういう所がお前の敗因だよ」
刹那、氷よりも冷たい表情を見せた虎文。その両手には対の小太刀が握られていた。
「!」
気づいた時にはもう遅い。サタンの体は二つに切り裂かれた。何が起きたのかも理解できぬまま地に伏せて呻くサタン。
虎文は振り向く事もせずに血払いし、小太刀を収める。
「油断は身を滅ぼし、戦場は理性を失くした奴から死んでいく。……覚えとけば役に立つんじゃねーの。まあでも、次があればの話だが」
サタンは充血した目で虎文を見た。
「……貴様は、決して神などではない。その本性は…血で穢れた醜い猛獣だ」
それだけ恨み言のように言い残したサタンは霧散し、その姿を消した。
「………知ってるさそんな事。遥か昔からお前よりずっと深く」
虎文は頬についた返り血を、手の甲で拭い取る。血は黒霧となって空気に溶けて消えていった。
「……おい、お前。その…」
辿李はなんと声をかければ良いのか分からず居心地悪そうに声をかける。虎文はハッとして振り返った。そして気まずそうな辿李を見て、虎文は軽く笑ってみせる。
「……ま、一件落着ってな!」
そういった途端少しばかり離れた集落で巨大な爆音が轟く。
「………あー…じゃないみたいだな」
辿李はそちらを振り返って遠い目をした。
「…だな。行くか」
虎文は溜息を吐いて肩を落とす。辿李もやれやれと言わんばかりに肩をすくめた。
南部。
一面に広がる焼け野原。干上がった川には邪気に冒され死んだ生き物だけが取り残されていた。
自然豊かな林があったはずの更地には、およそ人形とは言えぬ化け物のような巨大な影が立ってる。燻る植物を踏みつけ、不気味に佇むその影は雀梅たちが戦っていた暴食の悪魔、ケルベロスだった。
「……雀梅…様…」
少し離れた場所で起き上がる火響。半分目を潰されており、左肩から下は無く、食いちぎられたような傷だけを残していた。
先程の転送陣で六花と変わって召喚されたのは火響だった。初手は上手く火響の奇襲が決まり、最大限の力を雀梅が使えるようになったことも合わさって形勢逆転の兆しが見えていた。
ケルベロスがああなる前までは。
「………嗚呼、良い。まさか現世でもこの姿になれるなんて…」
口から邪気を孕んだ煙を吹くと、心躍った様な口ぶりで笑う。その巨大な手には、ぐったりとした雀梅の胴体を掴んでいた。
「おい、朱雀。私をこの姿にまで追い込んだんだ。誇って良い。大人しく後は…」
ケルベロスはグッと雀梅を持ち上げると、ニヤリと笑う。
「私の腹の中で事を顛末を見ていろ」
ぐわりと口を開いたケルベロス。その瞬間雀梅は素早く陣を組み、彼女の口内へ火炎を噴射した。
「…まだそんな余力があったか」
ケルベロスは少し驚いたものの、動揺する素振りはなく炎を飲み込んでいく。その隙に雀梅は火響の方へ何かを投げ渡した。
「………去れ。それを、十六夜様へ」
雀梅は確かに渡したぞという目で火響を捉える。ケルベロスは炎を食い終わるや否や、雀梅を握りしめるように持つと、巨大な口で頭から飲み込んだ。
それと同時に火響は走り出す。ここは南西。十六夜達が居る西方面はすぐ近くだ。
「……クソ」
ただ逃げるしかできなかった己の無力さに反吐が出る思いで林に飛び込む。そもそも雀梅があれ程までに重傷を負ってしまったのは、火響を庇ったからだった。豹変したケルベロスに対し、彼女は癒しの力のほぼ全てを火響に使い、彼への攻撃を半分以上捌き切っていた。そんな戦いを続けていれば、遅かれ早かれこの展開になっていただろう。
(私が、弱いから。もしもここにいたのが私ではなく、圓月様だったのであれば…)
火響は顔を歪め、雀梅から投げ渡された物を握りしめた。それは雀梅たち四神が付けていた揃いの額当てである。何故これを渡されたのかは分からない。だが今は十六夜の元へ早急に向かう以外他になかった。
「……コン」
一声そう鳴くと、火響の影から大きな狐が姿を現した。それに跨ると一目散に走り出す。
(一刻も早く、伝えなければ…)
四神、雀梅が死んだと。
「貴様らァ…ッ!」
土蜘蛛の網に捉えられたサタンは怒り絶頂だった。
身体にまとわりつく糸を無理やり千切り解くが、自慢の翼には網が複雑に絡み合い、とても飛べる状態ではなかった。
「俺の糸は伸縮自在。力押しのお前みてぇな奴には相性いいんだぜ」
辿李はサタンに向かって糸を差し向ける。それを見ると翼を広げるのを辞め、その場から跳躍した。木の上に乗るとサタンは辿李に吐き捨てるように反論する。
「だからなんだというのだ。飛べぬからといって我の力が半減するとでも?舐められたものだ」
「そんな事思ってないさ」
サタンの更に上から殴りかかった虎文。動きが鈍くなっていたサタンは瞬間の反応が遅れ、地面へ叩きつけられた。
「お前の力が半減するとは思ってない。そんな簡単に戦力外になるヤツ、懴禍の野郎が連れてくるわけねぇ。……けど、お前の退路は消しちまったなァとは思ってるよ。わりぃな」
そう言って目を細めて笑う虎文はサタン以上に重い雰囲気を纏っていた。辿李はその顔を見て少しばかりの悪寒を感じる。
虎文は飄々とした掴み所のない神だ。風のように流れてはいたずらに場を乱し、時に向かい風、時に追い風となる存在である。
普段彼のその性格故に面倒事をこれでもかと巻き込んでやって来ては皆の頭を悩ませているのだが、自分で持ってきた事は必ず自ら処理をしていた。誰の手を借りるでもなく、ひとりで。図ってか図らずしてか、彼は四神の中で最も多くの修羅場を乗り越えてきた男なのである。
(正直俺なら相手にしたくねぇけどな。強ぇってのが神力を通して分かる)
辿李は両の手に糸を出して構えた。
一概に強いといっても、力のみの話ではない。その場その場の状況の掌握も然り。そこからの判断の速さと的確さ、何よりどんな状況でも取り乱さない心構え。それが彼の強さを形作っている物なのである。
(とんでもねぇ判断や選択は多い。でもそれはその時点での最善である事が殆ど)
肌がひりつく威圧の中、辿李は虎文からサタンに視線を戻した。サタンは殴られた頬を拭ってフラフラと立ち上がる。神力をかなり込めた一撃だったのだろう。黒いモヤを出したまま、サタンの頬の傷は治らない。
「おい、もうここまでやっちまったんだ。今更引き返す気なんてないだろ」
虎文が訊ねるとサタンは青筋を浮かべた。
「それは尻尾を巻いて逃げるつもりはないのかと聞いているように見えるが」
「おっと、これは失礼。思ってた事顔に出てたか」
「貴様……ッ」
相変わらず侮辱しおちょくる虎文の安い挑発に、ついに我慢の限界だったようだった。無理やり羽についた糸を振り払い、サタンは虎文に襲いかかった。
「……おいおい、こういう所がお前の敗因だよ」
刹那、氷よりも冷たい表情を見せた虎文。その両手には対の小太刀が握られていた。
「!」
気づいた時にはもう遅い。サタンの体は二つに切り裂かれた。何が起きたのかも理解できぬまま地に伏せて呻くサタン。
虎文は振り向く事もせずに血払いし、小太刀を収める。
「油断は身を滅ぼし、戦場は理性を失くした奴から死んでいく。……覚えとけば役に立つんじゃねーの。まあでも、次があればの話だが」
サタンは充血した目で虎文を見た。
「……貴様は、決して神などではない。その本性は…血で穢れた醜い猛獣だ」
それだけ恨み言のように言い残したサタンは霧散し、その姿を消した。
「………知ってるさそんな事。遥か昔からお前よりずっと深く」
虎文は頬についた返り血を、手の甲で拭い取る。血は黒霧となって空気に溶けて消えていった。
「……おい、お前。その…」
辿李はなんと声をかければ良いのか分からず居心地悪そうに声をかける。虎文はハッとして振り返った。そして気まずそうな辿李を見て、虎文は軽く笑ってみせる。
「……ま、一件落着ってな!」
そういった途端少しばかり離れた集落で巨大な爆音が轟く。
「………あー…じゃないみたいだな」
辿李はそちらを振り返って遠い目をした。
「…だな。行くか」
虎文は溜息を吐いて肩を落とす。辿李もやれやれと言わんばかりに肩をすくめた。
南部。
一面に広がる焼け野原。干上がった川には邪気に冒され死んだ生き物だけが取り残されていた。
自然豊かな林があったはずの更地には、およそ人形とは言えぬ化け物のような巨大な影が立ってる。燻る植物を踏みつけ、不気味に佇むその影は雀梅たちが戦っていた暴食の悪魔、ケルベロスだった。
「……雀梅…様…」
少し離れた場所で起き上がる火響。半分目を潰されており、左肩から下は無く、食いちぎられたような傷だけを残していた。
先程の転送陣で六花と変わって召喚されたのは火響だった。初手は上手く火響の奇襲が決まり、最大限の力を雀梅が使えるようになったことも合わさって形勢逆転の兆しが見えていた。
ケルベロスがああなる前までは。
「………嗚呼、良い。まさか現世でもこの姿になれるなんて…」
口から邪気を孕んだ煙を吹くと、心躍った様な口ぶりで笑う。その巨大な手には、ぐったりとした雀梅の胴体を掴んでいた。
「おい、朱雀。私をこの姿にまで追い込んだんだ。誇って良い。大人しく後は…」
ケルベロスはグッと雀梅を持ち上げると、ニヤリと笑う。
「私の腹の中で事を顛末を見ていろ」
ぐわりと口を開いたケルベロス。その瞬間雀梅は素早く陣を組み、彼女の口内へ火炎を噴射した。
「…まだそんな余力があったか」
ケルベロスは少し驚いたものの、動揺する素振りはなく炎を飲み込んでいく。その隙に雀梅は火響の方へ何かを投げ渡した。
「………去れ。それを、十六夜様へ」
雀梅は確かに渡したぞという目で火響を捉える。ケルベロスは炎を食い終わるや否や、雀梅を握りしめるように持つと、巨大な口で頭から飲み込んだ。
それと同時に火響は走り出す。ここは南西。十六夜達が居る西方面はすぐ近くだ。
「……クソ」
ただ逃げるしかできなかった己の無力さに反吐が出る思いで林に飛び込む。そもそも雀梅があれ程までに重傷を負ってしまったのは、火響を庇ったからだった。豹変したケルベロスに対し、彼女は癒しの力のほぼ全てを火響に使い、彼への攻撃を半分以上捌き切っていた。そんな戦いを続けていれば、遅かれ早かれこの展開になっていただろう。
(私が、弱いから。もしもここにいたのが私ではなく、圓月様だったのであれば…)
火響は顔を歪め、雀梅から投げ渡された物を握りしめた。それは雀梅たち四神が付けていた揃いの額当てである。何故これを渡されたのかは分からない。だが今は十六夜の元へ早急に向かう以外他になかった。
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