Eclipse/月蝕症候群

ひろい

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愛と絶望の果てに

その22

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 思っていたら、古河が柱の陰から飛び出していた。なんの躊躇いもなく、ひょいっと。それに戸波はガタッ、とキツく亜希子を縛めた。
「く~る~し~い~」
 ……やめれって。
「おい、古河」
 柱の陰から声をかける。だが古河は悠然とした態度で、
「おい。いいぜ、亜希子」
 その笑みに応えるように亜希子は、
「あ~……ダルかった」
 その超長髪を振り乱し、それに打ちつけられた戸波の髪が――燃えあがる。
「キャ……っ!」
 今までの化け物と違い真っ当な人間というか女の子らしい反応と共に、戸波は燃えたところを慌ててバタバタとたたき出した。そして必然、亜希子はその両手から、解放される。
「ふんっ」
 いきなりしゃがんだ。
「よっと」
 すると古河は左手でバックパックから一丁の拳銃を取り出し、それで躊躇なく戸波を、撃った。
 射出される、放出線上に広がるネット弾。それに戸波はいともあっさり捕らえられる。脅威の身体能力を披露する間もない。そして引かれた銃口に引っ張られ、地面に磔にされる。それに伴い、燃えていた髪の火も消えた。
「一丁上がりだな」
「ちょろいわね」
 この二人は、やっぱり半端じゃないと思った。

 俯き加減で超長髪で眠たそうな細目と根暗っぽい印象なのにその足取りはスタスタと機敏で言葉もシャキシャキしていて、若干詐欺っぽい印象すら受ける。
「……なによ? ひとのことジロジロ見て」
 その言葉に謙一は苦笑いで応える。正直こっちは、同じく隣で手を頭の後ろで組んでスタスタ歩く男ほど余裕はない。あくまで自分は一般人なのだ。それに加えて折原亜希子は趣味が黒魔術というんだからもう充分過ぎるほどキャラが立っているのでしれ以上は自粛して欲しいと思う。
「それで、愛の様子はどうだ?」
 手を頭の後ろで組んだまま、古河が尋ねる。それに謙一は、視線を歩く先に向ける。そこには1-Fの、掃除用具入れ。それは、何故か通常ありえないように、生き物のようにガタガタと震えていた。めっちゃ不気味。
「まぁ、こんな感じ、よ」
 ぐいっ、と取っ手を引き亜希子が掃除用具入れを開ける。同時に飛び出してくる、大きな塊り。言うまでもなく、戸波愛だ。
「ぐぅ……ぐわぅっ!」
 両足首、両手を後ろでに縛られ、猿ぐつわまで噛まされた……
「おー。暴れてるなー、戸波」
 古河が見下ろし、声をかけた。戸波は白目を古河に向けて、バタバタと足掻いていた。トレードマークのお下げがぶんぶん振れている。普段の彼女からはなかなか考えられない状態だ。
「……それで、どうするつもりなんだ?」 
 どちらともなく、謙一は尋ねた。自分がやったように殺すわけでもなく、今までやってきたように無力化するわけでもない、拘束。二人はいったいどういうつもりで……
「じゃあまず、回復を促すためにも人工呼吸および心臓マッサージをば……」
 びし、と謙一はチョップで先走った男の愚考をトドメる。
「……落ち着け」
「っは。っかわらず、謙一は真面目だな」
「アンタも相変わらずね、この天然馬鹿」
 笑う古河と呆れる亜希子を見て、謙一は自分たちの調子が元来のものに戻ってきたのを感じていた。少しだが肩の力が抜け、
「ったく――それで古河、実際彼女をどうするつもりなんだ?」
「そりゃあ、せっかくの生きたサンプルなんだ。色々と調べてみるつもりだけど?」
 古河の言葉に亜希子も片眉をあげ、
「そうね。この状態が一体どんなものなのか、色々と生体実験をしてみないとね」
「!?」
 その言葉に、縛られている戸波が暴れ出す。当然だろう。手足縛られてる状態で生体実験とか言われれば、文字通りまな板の上の鯉。
「おーおー、暴れてるなー、戸波」
「……なんか、デジャヴが」
「気のせいだろ?」
 謙一のツッコミにも平然と受け流す古河。本来の本領発揮といった感じだ。なんか言葉が重複してる気もするが。
「まぁ、戸波よ。とって食ったりしねーから心配すんなって」
 悪戯っぽく笑う古河だが、さっきのセクハラまがいの発言から一分経ってないこの状況では全然説得力なかった。なんかこいつ、ますます暴れてるし。
「とりあえず、そうね。まずはどれくらい傷をつけたら死ぬのか、試してみようかしら?」
「ッ!?」
 亜希子の言葉にガクガク震えだす戸波。もう白目が一周して黒目になって、しかも涙流すくらいの必死っぷり。というかそれは既に懇願――
 黒目?
「さて」
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