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絆との再会
ⅩⅢ:彼女の想いその2
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「安心したかい?」
「し……ましたね。うん……おばあちゃん、昇天してくれよ」
「それは間違いない。教会のお偉い様である私のお墨付きをあげよう」
「ハハ……それは、心強いですね」
「乾杯」
掲げられた杯。一体なんについての乾杯なのかはわからなかったが――通常考えれば婚約について、もしくは三人集まっているということで魔王征伐、はたまた再会を祝してなど――
けれどこの場合は、とエリューは考え直した。
「はい……乾杯」
控えめに、チンと杯を当てる。
心の中で――
「ベーデ殿の、ご冥福を祈って」
言葉にしちゃう無粋も、無礼講ということにしておこうと思った。
ふと時計を見ると、更に2時間経過。窓の外は薄っすら白みを帯び始めている。さすがに疲れが隠せない。
エリューは呻くように、訴えた。
「オルビナ……そろそろ、ベッドにっていうか、寝ませんか……?」
「アハハハハ、今日は寝かせないぞ?」
「いやそれ婚約者目の前にして別の男に言っちゃってるのマズないですか?」
「ぐがーぐごー」
「いやクッタお前婚約者当人が最初に潰れて大いびきかましてんじゃねーよ」
なんだか、収拾つかなくなっていた。うん、どう考えても潮時。
エリューは咳払いして、
「え、えほん……あ、あの、オルビナ……クッタも潰れたことだし、そろそろお開きに……」
「マダスカは、来ないのかね」
一瞬その言葉は、どちらなのか理解出来なかった。
疑問なのか、自嘲なのか。
「あ…………と、そうです、ね……」
「彼女とも、一献酌み、交わしたかったのだがね」
少し寂しげに、オルビナはワイングラスを傾けた。その様子に、エリューは二の句を継げられなくなる。
その代わりのように、別の疑問が口から零れる。
「……俺たち、仲間――ですよね?」
「むしろ違うのかね?」
くい、と当たり前の相槌のあとの、ひと飲み。それにエリューは、自身の裡に湧きつつある疑惑が静かに氷解していくのを感じた。
「は、はは……そう、ですよね……」
「どうかしたかい?」
もう二、三口ほどしか残っていないグラスを置き、肘を乗せ指を合わせ、その向こうからこちらを覗き込んでくる。まるで吸い込まれそうな、そんな雰囲気だった。
エリューは突如渇き出した喉を潤すようにワイングラスを傾け、
「……けほっ、げほ」
「? どうしたのかね、そんな乱暴な飲み方をして」
「いえ、その……ちょっと、思うところがあって」
「――私で、相談に乗れるかね?」
フッとオルビナの瞳を見ると、そこには昔と変わらぬこちらを見透かすような僅かに細められた碧い瞳があった。
やっぱりオルビナは、俺たちのオルビナだ。
エリューは一人納得し、心を決めた。
「その……マダスカから、言われたんです……」
「続けたまえ」
「はい、その……実はマダスカとの再会時、母がいまして……いつも通りといえばその通りのやり取りの時、母がちょっと……微妙な絡み方をしてしまうというか、マダスカを宥めるような流れになってしまい……たぶん売り言葉に買い言葉だとは思うんですけど……」
「なんと、言ったのかね? 言われたの、かね?」
オルビナは急かすことも責めることもせず、ただこちらの続きを促すだけだった。
それにエリューは少しだけ胸が楽になったように感じ、
「……俺には、心許さなかった。俺……っていうかみんなとは、目的は同じだったけど、絆はなくて……仲間じゃ、なかったって……そう……」
「みんなと、そう言ったのかね?」
「し……ましたね。うん……おばあちゃん、昇天してくれよ」
「それは間違いない。教会のお偉い様である私のお墨付きをあげよう」
「ハハ……それは、心強いですね」
「乾杯」
掲げられた杯。一体なんについての乾杯なのかはわからなかったが――通常考えれば婚約について、もしくは三人集まっているということで魔王征伐、はたまた再会を祝してなど――
けれどこの場合は、とエリューは考え直した。
「はい……乾杯」
控えめに、チンと杯を当てる。
心の中で――
「ベーデ殿の、ご冥福を祈って」
言葉にしちゃう無粋も、無礼講ということにしておこうと思った。
ふと時計を見ると、更に2時間経過。窓の外は薄っすら白みを帯び始めている。さすがに疲れが隠せない。
エリューは呻くように、訴えた。
「オルビナ……そろそろ、ベッドにっていうか、寝ませんか……?」
「アハハハハ、今日は寝かせないぞ?」
「いやそれ婚約者目の前にして別の男に言っちゃってるのマズないですか?」
「ぐがーぐごー」
「いやクッタお前婚約者当人が最初に潰れて大いびきかましてんじゃねーよ」
なんだか、収拾つかなくなっていた。うん、どう考えても潮時。
エリューは咳払いして、
「え、えほん……あ、あの、オルビナ……クッタも潰れたことだし、そろそろお開きに……」
「マダスカは、来ないのかね」
一瞬その言葉は、どちらなのか理解出来なかった。
疑問なのか、自嘲なのか。
「あ…………と、そうです、ね……」
「彼女とも、一献酌み、交わしたかったのだがね」
少し寂しげに、オルビナはワイングラスを傾けた。その様子に、エリューは二の句を継げられなくなる。
その代わりのように、別の疑問が口から零れる。
「……俺たち、仲間――ですよね?」
「むしろ違うのかね?」
くい、と当たり前の相槌のあとの、ひと飲み。それにエリューは、自身の裡に湧きつつある疑惑が静かに氷解していくのを感じた。
「は、はは……そう、ですよね……」
「どうかしたかい?」
もう二、三口ほどしか残っていないグラスを置き、肘を乗せ指を合わせ、その向こうからこちらを覗き込んでくる。まるで吸い込まれそうな、そんな雰囲気だった。
エリューは突如渇き出した喉を潤すようにワイングラスを傾け、
「……けほっ、げほ」
「? どうしたのかね、そんな乱暴な飲み方をして」
「いえ、その……ちょっと、思うところがあって」
「――私で、相談に乗れるかね?」
フッとオルビナの瞳を見ると、そこには昔と変わらぬこちらを見透かすような僅かに細められた碧い瞳があった。
やっぱりオルビナは、俺たちのオルビナだ。
エリューは一人納得し、心を決めた。
「その……マダスカから、言われたんです……」
「続けたまえ」
「はい、その……実はマダスカとの再会時、母がいまして……いつも通りといえばその通りのやり取りの時、母がちょっと……微妙な絡み方をしてしまうというか、マダスカを宥めるような流れになってしまい……たぶん売り言葉に買い言葉だとは思うんですけど……」
「なんと、言ったのかね? 言われたの、かね?」
オルビナは急かすことも責めることもせず、ただこちらの続きを促すだけだった。
それにエリューは少しだけ胸が楽になったように感じ、
「……俺には、心許さなかった。俺……っていうかみんなとは、目的は同じだったけど、絆はなくて……仲間じゃ、なかったって……そう……」
「みんなと、そう言ったのかね?」
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