6 / 15
⑥鉄格子越しの再会
しおりを挟む
ギブソンは部屋から牢番の詰め所へ向かう。今朝のウィルの目覚めから、徐々にギブソンの頭の中は、ギブソンとウィルが半々の状態になっていた。
(アンジェリカのことは噂でしか聞いたことはなかったが、悪女として有名だった)
(そしてここ数日のアンジェリカの態度は、ウィルの記憶の中にあるエリザベスと一致する)
ギブソンは焦る気持ちを抑えながら牢番の詰め所へ寄った。机の上に置いてある出欠表にチェックを入れると先に来ていたクリスが話しかけてきた。
「お?今日はいつもより早いじゃないか、ギブソン」
「そうかな」
「アンジェリカ様に早く会いたくなったのか?」
「……」
無言になったギブソンに焦るクリス。
「あ、冗談だから」
そんなクリスにギブソンが尋ねる。
「なあ、クリス。お前はどうしてアンジェリカに様をつけるんだ?誰もが皆、呼び捨てにしているじゃないか。なのにお前だけが敬称をつけている」
「あ、そのこと……」
クリスが手短に話す。
「俺はアンジェリカ様とは同級生なんだ」
「え?」
「あの頃のイメージしか知らないから呼び捨てにはできないよ」
「……」
「高等部の頃のアンジェリカ様は誰にでもお優しくて、綺麗で素敵な方だったんだ。まぁ自己主張はしっかりとされてはいたが」
「……」
「だから俺にはアンジェリカ様なんだ」そう言って立ち上がると詰め所を出ていった。
❖
冷たい牢屋の中で、壁の上の小さな鉄格子から陽が差し込み牢屋を照らす。
そこへ靴音が響いてきた。アンジェリカは鉄格子の側へ行くと近づく人影を凝視した。
「ギブソン。おはよう」
ギブソンは鉄格子を掴んでいるアンジェリカの手を握った。
「え?」戸惑うアンジェリカ。見つめるギブソン。
アンジェリカの目から涙がこぼれた。
「やっぱり今日、処刑されるの?」
しかし予想外の言葉を耳にする。
「エリザベス」
アンジェリカに呼びかけるギブソンの目から涙がこぼれていた。
「エリザベス、会いたかった」
「ウィル?ウィルなの?」
「ああ、私だ」
二人は鉄格子を挟んで抱き締めあった。
❖
落ち着いてから床にしゃがみ込み話をする二人。
「どうやら私達は異世界へと迷い込んだらしい。そしてこの世界に存在する私たちは囚人と牢番になっていた」
「ねえ、私たちは元の世界に戻れるのかしら」
「分からない。だけど何か方法はあるはずだ」
「……」
「だってこちらの世界にやって来たんだぞ?だったらこちらから元の世界に戻れると考えるべきだ」
「でもどうすれば……」
「それはまだ分からない。私も記憶が戻ったのは今朝なんだから」
「そう……」
ギブソンが立ち上がる。
「もう行くの?」
「ああ、君の朝食を取りに行かないとね」
アンジェリカはすぐに牢の奥に戻りまた戻ってきた。
「これ、ありがとう。美味しかったわ」
ギブソンが差し入れた布袋をアンジェリカから受取り出入り口へと向かう。その背中に声をかけるエリザベス。
「靴下ありがとう、良く眠れたわウィル」
出入り口で立ち止まったウィルが振り向いて返事をした。
「靴下は私じゃない。ギブソンだ」
そう言ってウィルは出て行った。
最初自分に冷たかったギブソンが徐々に親切になり、昨夜は差し入れと靴下をくれたことにエリザベスの胸は熱くなっていた。
(アンジェリカのことは噂でしか聞いたことはなかったが、悪女として有名だった)
(そしてここ数日のアンジェリカの態度は、ウィルの記憶の中にあるエリザベスと一致する)
ギブソンは焦る気持ちを抑えながら牢番の詰め所へ寄った。机の上に置いてある出欠表にチェックを入れると先に来ていたクリスが話しかけてきた。
「お?今日はいつもより早いじゃないか、ギブソン」
「そうかな」
「アンジェリカ様に早く会いたくなったのか?」
「……」
無言になったギブソンに焦るクリス。
「あ、冗談だから」
そんなクリスにギブソンが尋ねる。
「なあ、クリス。お前はどうしてアンジェリカに様をつけるんだ?誰もが皆、呼び捨てにしているじゃないか。なのにお前だけが敬称をつけている」
「あ、そのこと……」
クリスが手短に話す。
「俺はアンジェリカ様とは同級生なんだ」
「え?」
「あの頃のイメージしか知らないから呼び捨てにはできないよ」
「……」
「高等部の頃のアンジェリカ様は誰にでもお優しくて、綺麗で素敵な方だったんだ。まぁ自己主張はしっかりとされてはいたが」
「……」
「だから俺にはアンジェリカ様なんだ」そう言って立ち上がると詰め所を出ていった。
❖
冷たい牢屋の中で、壁の上の小さな鉄格子から陽が差し込み牢屋を照らす。
そこへ靴音が響いてきた。アンジェリカは鉄格子の側へ行くと近づく人影を凝視した。
「ギブソン。おはよう」
ギブソンは鉄格子を掴んでいるアンジェリカの手を握った。
「え?」戸惑うアンジェリカ。見つめるギブソン。
アンジェリカの目から涙がこぼれた。
「やっぱり今日、処刑されるの?」
しかし予想外の言葉を耳にする。
「エリザベス」
アンジェリカに呼びかけるギブソンの目から涙がこぼれていた。
「エリザベス、会いたかった」
「ウィル?ウィルなの?」
「ああ、私だ」
二人は鉄格子を挟んで抱き締めあった。
❖
落ち着いてから床にしゃがみ込み話をする二人。
「どうやら私達は異世界へと迷い込んだらしい。そしてこの世界に存在する私たちは囚人と牢番になっていた」
「ねえ、私たちは元の世界に戻れるのかしら」
「分からない。だけど何か方法はあるはずだ」
「……」
「だってこちらの世界にやって来たんだぞ?だったらこちらから元の世界に戻れると考えるべきだ」
「でもどうすれば……」
「それはまだ分からない。私も記憶が戻ったのは今朝なんだから」
「そう……」
ギブソンが立ち上がる。
「もう行くの?」
「ああ、君の朝食を取りに行かないとね」
アンジェリカはすぐに牢の奥に戻りまた戻ってきた。
「これ、ありがとう。美味しかったわ」
ギブソンが差し入れた布袋をアンジェリカから受取り出入り口へと向かう。その背中に声をかけるエリザベス。
「靴下ありがとう、良く眠れたわウィル」
出入り口で立ち止まったウィルが振り向いて返事をした。
「靴下は私じゃない。ギブソンだ」
そう言ってウィルは出て行った。
最初自分に冷たかったギブソンが徐々に親切になり、昨夜は差し入れと靴下をくれたことにエリザベスの胸は熱くなっていた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
妻が通う邸の中に
月山 歩
恋愛
最近妻の様子がおかしい。昼間一人で出掛けているようだ。二人に子供はできなかったけれども、妻と愛し合っていると思っている。僕は妻を誰にも奪われたくない。だから僕は、妻の向かう先を調べることににした。
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる