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⑥鉄格子越しの再会
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ギブソンは部屋から牢番の詰め所へ向かう。今朝のウィルの目覚めから、徐々にギブソンの頭の中は、ギブソンとウィルが半々の状態になっていた。
(アンジェリカのことは噂でしか聞いたことはなかったが、悪女として有名だった)
(そしてここ数日のアンジェリカの態度は、ウィルの記憶の中にあるエリザベスと一致する)
ギブソンは焦る気持ちを抑えながら牢番の詰め所へ寄った。机の上に置いてある出欠表にチェックを入れると先に来ていたクリスが話しかけてきた。
「お?今日はいつもより早いじゃないか、ギブソン」
「そうかな」
「アンジェリカ様に早く会いたくなったのか?」
「……」
無言になったギブソンに焦るクリス。
「あ、冗談だから」
そんなクリスにギブソンが尋ねる。
「なあ、クリス。お前はどうしてアンジェリカに様をつけるんだ?誰もが皆、呼び捨てにしているじゃないか。なのにお前だけが敬称をつけている」
「あ、そのこと……」
クリスが手短に話す。
「俺はアンジェリカ様とは同級生なんだ」
「え?」
「あの頃のイメージしか知らないから呼び捨てにはできないよ」
「……」
「高等部の頃のアンジェリカ様は誰にでもお優しくて、綺麗で素敵な方だったんだ。まぁ自己主張はしっかりとされてはいたが」
「……」
「だから俺にはアンジェリカ様なんだ」そう言って立ち上がると詰め所を出ていった。
❖
冷たい牢屋の中で、壁の上の小さな鉄格子から陽が差し込み牢屋を照らす。
そこへ靴音が響いてきた。アンジェリカは鉄格子の側へ行くと近づく人影を凝視した。
「ギブソン。おはよう」
ギブソンは鉄格子を掴んでいるアンジェリカの手を握った。
「え?」戸惑うアンジェリカ。見つめるギブソン。
アンジェリカの目から涙がこぼれた。
「やっぱり今日、処刑されるの?」
しかし予想外の言葉を耳にする。
「エリザベス」
アンジェリカに呼びかけるギブソンの目から涙がこぼれていた。
「エリザベス、会いたかった」
「ウィル?ウィルなの?」
「ああ、私だ」
二人は鉄格子を挟んで抱き締めあった。
❖
落ち着いてから床にしゃがみ込み話をする二人。
「どうやら私達は異世界へと迷い込んだらしい。そしてこの世界に存在する私たちは囚人と牢番になっていた」
「ねえ、私たちは元の世界に戻れるのかしら」
「分からない。だけど何か方法はあるはずだ」
「……」
「だってこちらの世界にやって来たんだぞ?だったらこちらから元の世界に戻れると考えるべきだ」
「でもどうすれば……」
「それはまだ分からない。私も記憶が戻ったのは今朝なんだから」
「そう……」
ギブソンが立ち上がる。
「もう行くの?」
「ああ、君の朝食を取りに行かないとね」
アンジェリカはすぐに牢の奥に戻りまた戻ってきた。
「これ、ありがとう。美味しかったわ」
ギブソンが差し入れた布袋をアンジェリカから受取り出入り口へと向かう。その背中に声をかけるエリザベス。
「靴下ありがとう、良く眠れたわウィル」
出入り口で立ち止まったウィルが振り向いて返事をした。
「靴下は私じゃない。ギブソンだ」
そう言ってウィルは出て行った。
最初自分に冷たかったギブソンが徐々に親切になり、昨夜は差し入れと靴下をくれたことにエリザベスの胸は熱くなっていた。
(アンジェリカのことは噂でしか聞いたことはなかったが、悪女として有名だった)
(そしてここ数日のアンジェリカの態度は、ウィルの記憶の中にあるエリザベスと一致する)
ギブソンは焦る気持ちを抑えながら牢番の詰め所へ寄った。机の上に置いてある出欠表にチェックを入れると先に来ていたクリスが話しかけてきた。
「お?今日はいつもより早いじゃないか、ギブソン」
「そうかな」
「アンジェリカ様に早く会いたくなったのか?」
「……」
無言になったギブソンに焦るクリス。
「あ、冗談だから」
そんなクリスにギブソンが尋ねる。
「なあ、クリス。お前はどうしてアンジェリカに様をつけるんだ?誰もが皆、呼び捨てにしているじゃないか。なのにお前だけが敬称をつけている」
「あ、そのこと……」
クリスが手短に話す。
「俺はアンジェリカ様とは同級生なんだ」
「え?」
「あの頃のイメージしか知らないから呼び捨てにはできないよ」
「……」
「高等部の頃のアンジェリカ様は誰にでもお優しくて、綺麗で素敵な方だったんだ。まぁ自己主張はしっかりとされてはいたが」
「……」
「だから俺にはアンジェリカ様なんだ」そう言って立ち上がると詰め所を出ていった。
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冷たい牢屋の中で、壁の上の小さな鉄格子から陽が差し込み牢屋を照らす。
そこへ靴音が響いてきた。アンジェリカは鉄格子の側へ行くと近づく人影を凝視した。
「ギブソン。おはよう」
ギブソンは鉄格子を掴んでいるアンジェリカの手を握った。
「え?」戸惑うアンジェリカ。見つめるギブソン。
アンジェリカの目から涙がこぼれた。
「やっぱり今日、処刑されるの?」
しかし予想外の言葉を耳にする。
「エリザベス」
アンジェリカに呼びかけるギブソンの目から涙がこぼれていた。
「エリザベス、会いたかった」
「ウィル?ウィルなの?」
「ああ、私だ」
二人は鉄格子を挟んで抱き締めあった。
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落ち着いてから床にしゃがみ込み話をする二人。
「どうやら私達は異世界へと迷い込んだらしい。そしてこの世界に存在する私たちは囚人と牢番になっていた」
「ねえ、私たちは元の世界に戻れるのかしら」
「分からない。だけど何か方法はあるはずだ」
「……」
「だってこちらの世界にやって来たんだぞ?だったらこちらから元の世界に戻れると考えるべきだ」
「でもどうすれば……」
「それはまだ分からない。私も記憶が戻ったのは今朝なんだから」
「そう……」
ギブソンが立ち上がる。
「もう行くの?」
「ああ、君の朝食を取りに行かないとね」
アンジェリカはすぐに牢の奥に戻りまた戻ってきた。
「これ、ありがとう。美味しかったわ」
ギブソンが差し入れた布袋をアンジェリカから受取り出入り口へと向かう。その背中に声をかけるエリザベス。
「靴下ありがとう、良く眠れたわウィル」
出入り口で立ち止まったウィルが振り向いて返事をした。
「靴下は私じゃない。ギブソンだ」
そう言ってウィルは出て行った。
最初自分に冷たかったギブソンが徐々に親切になり、昨夜は差し入れと靴下をくれたことにエリザベスの胸は熱くなっていた。
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