《完結》初夜に異世界へ飛ばされた二人は、囚人と牢番になっていた。

ぜらちん黒糖

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⑫転げ落ちた首

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エリザベスは自分の冤罪が晴れてホッとしていた。

(後はウィルにこのことを知らせなくちゃ)そう思っていた。

しかし助かったと思ったのも束の間、グラットの信じられない言葉が聞こえた。

「衛兵!準備はできているか!」
「はっ。処刑の準備は整っております」

(はぁ?)

焦るエリザベス。

「あの、グラット殿下。お待ち下さい」

歩を緩めずに返事をするグラット。
「なんだ」

「処刑の準備とは何のことでしょうか?」

グラットは冷たく言い放つ。
「罪人を処刑するのだ」

「え?罪人って……」恐怖で言葉が詰まるエリザベス。

顔を少し後ろに向けて笑みを浮かべ「アンジェリカ、お前の処刑だよ」

「?」頭の中が真っ白になるエリザベス。

涙が溢れ出る。「待って!」
(私は無実よ!)

「待ってください。私は無実です。無実なんです」

グラットは無言のまま歩き続け、エリザベスも背中を押されて歩かされた。

そして小さなざわめきが聞こえ、やがてざわめきが大きくなると目の前に処刑台が目に入った。

「そんな……」
(どうして、どうしてこうなるの?)

エリザベスは処刑台の前に立たされて跪かされるとギロチン台に首を固定された。

聴衆の前でグラット王太子が呼び掛ける。
「ただいまより、我が妻、ロミン王太子妃毒殺未遂の重罪によってアンジェリカ・ドモールを断首刑に処す」

(そんな、どうして、私の無実は証明されたのに、どうして……)

その頃、城に戻ってきたウィルが、処刑場の方で激しい喧騒が耳に入った。嫌な予感がして向かってみる。人垣をかき分けてギロチン台を見上げるとエリザベスがすでにギロチン台に首を固定され、執行待ちの状態になっていた。

「エリザベス」

焦るウィル。「なぜだ、処刑は午後からのはずではなかったのか」

(ちくしょう)

必死でエリザベスの元へ駆け寄ろうとするがなかなか前に行けない。

グラット王太子がギブソンの姿を確認する。衛兵に耳打ちをして、ギブソンが近づいて来るのを待っていた。

なんとかギロチン台の前の方まで来ることができたウィルが叫ぶ。

「エリザベスーー!」

「ウィルーー!」

二人の目は涙で濡れてぼやけお互いの表情まで見えていなかった。その時、グラット王太子の手が上がって、振り下ろされた。

衛兵がギロチンの紐を緩めた。
勢いよく落ちて来るギロチンがエリザベスの首に落ちて行く。

「ウィルーーー……」

ガシャン!と大きな音が響き渡りウィルの目の前に生首が転げ落ちた。

「エリザベスーー……」

ウィルの目の前に首が転がる光景を見て、ショックのあまり、そのまま膝から崩れ落ちるように気を失っていた。
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