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⑬リセット
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王太子がすぐに命令してギブソンを介抱するように衛兵に指示をする。
そしてギロチン台に固定されたアンジェリカをギロチン台から下ろし地面に寝かせた。
グラットが二人を丁重に医務室へ運ぶように衛兵に指示を出すとすぐにそれを実行した。
❖
ベッドでアンジェリカがゆっくりと目を開けた。
「ここは……どこですか?」
傍らに椅子に座ったグラットがいた。
「目覚めたか……君の名前を聞かせてもらえるかな?」
「グラット殿下……どうしてこちらに……」
「君の名前は?」
「私はアンジェリカ。アンジェリカ・ドモールですわ」
グラットは笑みを浮かべて話しかける。
「お帰り、アンジェリカ」
そして隣のベッドで眠っていたギブソンも目覚める。
「う……うん、」
「君も目覚めたか」
グラット王太子に気づきすぐに起き上がるギブソン。
「こ、これは殿下」ベッドから出ようとするギブソンを手で制してグラットが質問をする。
「君の名前は?」
「はっ、私の名前はギブソン・スペイシーでございます」
グラットは側近のダンベルに声をかける。
「二人に説明をしてやってくれ。ダンベル」
ダンベルは二人をソファに誘導して座らせると、ことの顛末を話し始めた。
ダンベルが二人に尋ねた。
「まずはお二方に質問です。お二人共どこまで記憶がございますか?」
アンジェリカが先に口を開いた。
「私は冤罪で牢屋に入れられて悔しい思いでいた……そして目覚めたらここにいたんです」
ギブソンが次に答える。
「私は記憶はずっとありました。ですが、今朝、頭を打ってからはこの体はウィルに乗っ取られたような状態になりました」
「それでは今は?」
「今はウィルはいません。私一人です」
ダンベルが説明を始める。
「アンジェリカ様にはエリザベスの魂が、ギブソン様にはウィルの魂が入っていた。そしてその二人は共に夫婦であったようです」
ダンベルが二人を見つめてゆっくりと話し始める。
「では改めて最初から説明致します」
「ロミン様を毒殺しようとしたのは侍女のエメルダでございました」
アンジェリカが改めて驚く。
「紅茶を出してくれたメイドですよね?大人しそうな女の子に見えたけど……」
「はい、そうです。そのメイドが紅茶のカップをアンジェリカ様の前に置きました。あなたはそれを一つロミン様の前に置いた。ロミン様は手に取ろうとして掴み損ね、カップを倒してしまい、そこから溶けていなかった毒薬を発見する。それでアンジェリカ様が疑われ、投獄された」
「ロミン様は毒薬を入れたのはアンジェリカ様ではなくエメルダだと気づく。そして問い詰めるとエメルダが犯行を認めた」
「ロミン様はそのエメルダに毒を飲ませた上、箱に詰めて密封し、窒息死させ、それを保管庫に隠した」
「アンジェリカ様に取り憑いたエリザベスと遅れてギブソンに取り憑いたウィルは二人で牢屋を抜け出すか共に死のうと決心した」
「そこでグラット殿下がお二人の体を案じて作戦を立てられたのです」
「エリザベスとウィルは死んでしまえば元の世界に戻れるかもしれない。しかし二人の魂が抜けたあとは死骸しか残らないでしょう?」
その言葉を聞いて真っ青になる二人。
「それで殿下が考えられた作戦が、エリザベスとウィルに死ぬほどの苦しみとショックを与えることだったのです」
「ギロチンは寸止め。そしてウィルの目の前に落とす頭は……こちらです」
足元に置いてあった大きな布袋から髪の毛を掴んで生首そっくりの人形を取り出した。
「ギロチンが音をたて寸止めで止まった瞬間に、衛兵がこの生首をウィルの目の前に投げ捨てたんです。ウィルは愛するエリザベスが死んだと思ってショックのあまり気を失った」
「そして、あなた方から取り憑いた魂は離れていった、というわけでございます」
アンジェリカが質問する。
「殿下は始めから私が冤罪だとご存知だったのですか?」
急に自分にお鉢が回ってきて慌てるグラット。
「……ん、ん~、そうだな。分かっていた」
文句を言うアンジェリカ。
「酷いです。それは。どうして私に話してくれなかったんですか?」
「すまない。ロミンを油断させるためだったんだ」
ギブソンが口を挟む。
「では私がアンジェリカ様に差し入れをしたこともご存知だったのですね?」
グラットが返事をする。「地下牢の通路は壁は空洞になっていて、そこに部下が潜んでいた。会話は全て私に届けられたんだ」
ウィルの魂はもう入ってはいないが、ウィルがエリザベスを想う記憶はギブソンの中に残っていた。
アンジェリカもエリザベスのウィルを思う気持ちの記憶が残っていた。
自然に、そして特にギブソンはアンジェリカをじっと見つめていた。
そしてギロチン台に固定されたアンジェリカをギロチン台から下ろし地面に寝かせた。
グラットが二人を丁重に医務室へ運ぶように衛兵に指示を出すとすぐにそれを実行した。
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ベッドでアンジェリカがゆっくりと目を開けた。
「ここは……どこですか?」
傍らに椅子に座ったグラットがいた。
「目覚めたか……君の名前を聞かせてもらえるかな?」
「グラット殿下……どうしてこちらに……」
「君の名前は?」
「私はアンジェリカ。アンジェリカ・ドモールですわ」
グラットは笑みを浮かべて話しかける。
「お帰り、アンジェリカ」
そして隣のベッドで眠っていたギブソンも目覚める。
「う……うん、」
「君も目覚めたか」
グラット王太子に気づきすぐに起き上がるギブソン。
「こ、これは殿下」ベッドから出ようとするギブソンを手で制してグラットが質問をする。
「君の名前は?」
「はっ、私の名前はギブソン・スペイシーでございます」
グラットは側近のダンベルに声をかける。
「二人に説明をしてやってくれ。ダンベル」
ダンベルは二人をソファに誘導して座らせると、ことの顛末を話し始めた。
ダンベルが二人に尋ねた。
「まずはお二方に質問です。お二人共どこまで記憶がございますか?」
アンジェリカが先に口を開いた。
「私は冤罪で牢屋に入れられて悔しい思いでいた……そして目覚めたらここにいたんです」
ギブソンが次に答える。
「私は記憶はずっとありました。ですが、今朝、頭を打ってからはこの体はウィルに乗っ取られたような状態になりました」
「それでは今は?」
「今はウィルはいません。私一人です」
ダンベルが説明を始める。
「アンジェリカ様にはエリザベスの魂が、ギブソン様にはウィルの魂が入っていた。そしてその二人は共に夫婦であったようです」
ダンベルが二人を見つめてゆっくりと話し始める。
「では改めて最初から説明致します」
「ロミン様を毒殺しようとしたのは侍女のエメルダでございました」
アンジェリカが改めて驚く。
「紅茶を出してくれたメイドですよね?大人しそうな女の子に見えたけど……」
「はい、そうです。そのメイドが紅茶のカップをアンジェリカ様の前に置きました。あなたはそれを一つロミン様の前に置いた。ロミン様は手に取ろうとして掴み損ね、カップを倒してしまい、そこから溶けていなかった毒薬を発見する。それでアンジェリカ様が疑われ、投獄された」
「ロミン様は毒薬を入れたのはアンジェリカ様ではなくエメルダだと気づく。そして問い詰めるとエメルダが犯行を認めた」
「ロミン様はそのエメルダに毒を飲ませた上、箱に詰めて密封し、窒息死させ、それを保管庫に隠した」
「アンジェリカ様に取り憑いたエリザベスと遅れてギブソンに取り憑いたウィルは二人で牢屋を抜け出すか共に死のうと決心した」
「そこでグラット殿下がお二人の体を案じて作戦を立てられたのです」
「エリザベスとウィルは死んでしまえば元の世界に戻れるかもしれない。しかし二人の魂が抜けたあとは死骸しか残らないでしょう?」
その言葉を聞いて真っ青になる二人。
「それで殿下が考えられた作戦が、エリザベスとウィルに死ぬほどの苦しみとショックを与えることだったのです」
「ギロチンは寸止め。そしてウィルの目の前に落とす頭は……こちらです」
足元に置いてあった大きな布袋から髪の毛を掴んで生首そっくりの人形を取り出した。
「ギロチンが音をたて寸止めで止まった瞬間に、衛兵がこの生首をウィルの目の前に投げ捨てたんです。ウィルは愛するエリザベスが死んだと思ってショックのあまり気を失った」
「そして、あなた方から取り憑いた魂は離れていった、というわけでございます」
アンジェリカが質問する。
「殿下は始めから私が冤罪だとご存知だったのですか?」
急に自分にお鉢が回ってきて慌てるグラット。
「……ん、ん~、そうだな。分かっていた」
文句を言うアンジェリカ。
「酷いです。それは。どうして私に話してくれなかったんですか?」
「すまない。ロミンを油断させるためだったんだ」
ギブソンが口を挟む。
「では私がアンジェリカ様に差し入れをしたこともご存知だったのですね?」
グラットが返事をする。「地下牢の通路は壁は空洞になっていて、そこに部下が潜んでいた。会話は全て私に届けられたんだ」
ウィルの魂はもう入ってはいないが、ウィルがエリザベスを想う記憶はギブソンの中に残っていた。
アンジェリカもエリザベスのウィルを思う気持ちの記憶が残っていた。
自然に、そして特にギブソンはアンジェリカをじっと見つめていた。
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