《完結》公爵令嬢は愛する男を骨の髄まで愛します。

ぜらちん黒糖

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③愛する人は幽霊

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「はあ?」

今しがたまでソフィアと愛し合っていたレオナルド。まだ夢の中にいるような気持ちだった。

「何を馬鹿なことを言っているんだ」と迷惑そうに呟く。

しかし必死で説明するアンドロス。
「俺は見たんだ。確かにお前の彼女は美しい女性だった。だがな、それはお前の家の中に入るまでの話だ」

レオナルドはまだ余裕を持って対応していた。
「アンドロス、どこまで見たんだ?」
レオナルドは軽蔑の眼差しでアンドロスを見つめる。

「どこまでって、女が入ってすぐだよ。お前たちが床に就く前に抱擁していただろう?」

ホッとするレオナルド。「なんだ、そこまでか」とニヤニヤしているとアンドロスが真剣に話し始める。

「じゃあ聞くけど、お前、今日で十日連続だよな?」

レオナルドの耳が赤くなる。
「……ああ」

「普通の人間はそんなに毎日はしないぞ?」
「……」
「それに、二日目からは彼女を待っていたんだろう?」
「……あ、ああ」
「家に近づいて来る時、普通は足音が聞こえるんじゃねーの?お前、一回でも足音を聞いたか?」
「足音……」
「そうだ。足音、聞いてないだろう?それは当たり前だ。彼女は歩いてなんかいねーからな」

その言葉にレオナルドが笑う。
「歩いていないって、飛んで来るっていうのか?」
「違うよ。地面を滑るように移動しているんだよ」
そしてまた笑うレオナルド。
「馬鹿なことを言うなよ。それじゃ幽霊じゃないか」

アンドロスが無言のままレオナルドを見つめて頷く。

「そうだ。彼女は幽霊だ。それしか考えられない」
「……」

「いいか。良く考えろよ。あの身なりからして彼女は貴族なんだろう?あんな夜中に一人で、お供もつけずに真夜中に出歩くはずないだろう?」
「……」
「それにあの服。まるで社交パーティーにでも出るような格好じゃねーかよ。あんな格好で夜中、外にでるか?普通」

ようやく事の重大性が分かってきたレオナルド。

ドレス姿は変だとは思っていたが、「このドレスはあなたと出会った仮面舞踏会で着ていたドレスなの。想い出のドレス。だから、あなたに会うときは想い出のこのドレスで会いたかったの」と、ソフィアが言っていたのだ。

「つまり……私は死んだソフィアの魂と逢瀬を楽しんでいた……そう言いたいのか?」

「そうだ。おそらくお前の部屋の中は、特別な空間になってしまったんだ。お前が彼女を受け入れたから……」

レオナルドは真っ青な顔をしてアンドロスに話しかける。

「アンドロス。今日は仕事を休むと隊長に伝えてくれないか」そう言って家の中に入って行った。





レオナルドはどうしようかと悩んだが、まずはソフィアの生存を確かめてみようとロッシ公爵家の屋敷の裏門にやって来た。

裏門の近くにメイドたちの休憩所があるのを、レオナルドは知っていた。ソフィアがたまにメイドの格好で屋敷を抜け出していたからだ。

この裏門で待っていれば、誰かメイドが姿を見せるはずだと考えたレオナルド。案の定、顔見知りのメイドが出てきた。急いで声をかけるレオナルド。

「マリー」

その声に振り向いたマリーが怪訝な顔をする。

「はい?」

「私だ。レオナルドだ」

目を大きく見開き、マリーが驚きの声を上げる。
「あっ!本当に。レオナルド様ではありませんか!」
「思い出してくれたようだな、マリー」
「とんでもございません。それよりも、どうかされたんですか?お加減が悪そうですが……」
「う、うん。ちょっとね……。それよりも君に聞きたいことがあるんだ。ソフィアのことで」
「……」
「ソフィアが亡くなったのは本当なのか?」
マリーはその質問に驚いたが、すぐに返事を返してくれた。

マリーが小さな声で尋ねる。

「ご存知なかったのですか?」
「いや、噂は聞いていたのだが、最近、ソフィアにそっくりな人を見かけたもので……」
「そうでしたか……。はい、お嬢様が亡くなられてもう一ヶ月経ちます」
「……」
「レオナルド様との別れが、お辛かったのでしょう。食事も喉を通らなくなって…最後はもう、水も飲めないほどで」
「……それで、衰弱してソフィアは亡くなったのか…?」

マリーはレオナルドの目の下に浮き出たクマを見て、心配そうに話しかけた。

「レオナルド様、お食事はしっかりとお摂りくださいね。そうしないと貴方様まで、お嬢様の二の舞いになってしまいますよ」

レオナルドは「あ、ああ」と小さく返事をして軽く右手を上げると、重い足取りで家路についた。




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