《完結》公爵令嬢は愛する男を骨の髄まで愛します。

ぜらちん黒糖

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それからというもの、ソフィアは、夜な夜なレオナルドの小さな家を訪ねるようになった。

薔薇の香りを漂わせて現れ、朝焼けの前に去っていく。

二人は、昼間の光が届かない闇の中で、愛を重ねた。

​それでもレオナルドは昼間、しっかりと警備隊員としての仕事をこなした。

レオナルドは昨夜のソフィアとの会話を思い出す。

「ソフィア、君は亡くなったことになっていて、ほとぼりが冷めたら公爵家の領地に引っ越すと言っていたが、それはいつ頃になるんだ?」
「もうじき、あと少し。それまであなたに会いに来るわ」
「俺も君について行っては駄目だろうか?」
ソフィアはにっこりと笑った。
「もちろんよ。だからそれまでは昼間は会えないの。この時間にしか」

(仕方がないか。王子様から逃げるにはこの手しかなかったのかもしれん)

十日経った頃、警備隊の同僚たちがレオナルドを冷やかした。

​「レオナルド、お前、最近疲れているみたいだが、夜遊びが過ぎるんじゃないのか?」

​するとレオナルドは、誰かに言いたかったのか口を滑らせる。

​「まぁな、彼女ができたんでね。毎晩愛し合っている」

​その話に興味を持ったのは、レオナルドの隣家に住む同僚のアンドロスだった。(毎晩……だって?一体どんな女なんだろうか)と。

​アンドロスはその晩、好奇心には抗えず、寝ずに待っていた。

​深夜、部屋を暗くして窓のカーテンを少しだけ開け、外を覗いて待機するアンドロス。

椅子に座って待っていたが一向に女は来ない。壁にもたれてウトウトしかけた時、かすかにいい匂いが漂う。

「……ん?」

目をあけ、立ち上がって窓を開けて外を覗いてみたが誰もいない。

コンコン……

戸を叩く音がした。

窓から首を出してレオナルドの家の前を見てみると、女が戸を叩いていた。

(……美人だ)

そして薔薇の香りが隣家の自分のところまで匂って来ることに興味を持つアンドロス。

(いい匂いだな……)

戸板が動く音がした。薔薇の香りと共に、月明かりの下、紫色のドレスを着た息を飲むほど美しい女が家の中に消えて行った。

​アンドロスは家を出ると、周りを見回し人の気配を感じないのを確かめた。

そして、静かに、ゆっくりと、音を立てないようにして、レオナルドの家の前まで歩いた。

そっと、壁のひび割れから家の中を覗き込む。

(どれどれ、レオナルドの自慢の彼女の裸を拝ませてもらおうかな……)

​一瞬アンドロスの頭の中が真っ白になる。

目に飛び込んで来たのはドレスを着た骸骨がレオナルドと抱擁している姿だった。

「な」慌てて口を手で抑える。
(なんだあれは!)

​恐怖に身がすくんだアンドロスは、気づかれないようにその場を離れると、ビクビクしながら夜明けまで家の中で震えていた。

​まだ薄暗い明け方、レオナルドの家の戸が開く音がした。レオナルドの声も聞こえた。

(レオナルドの奴が見送っているのか……)

アンドロスは玄関の戸の隙間から覗いて目を凝らす。来た時と同じ美しい人間の女が出てきた。

じっと隙間から見つめるアンドロスがビクリとした。女はアンドロスの家の前まで滑るように進んで、立ち止まった。

​女はアンドロスの家をじっと見つめ、ほんの少しお辞儀をする仕草をして、闇の中へすっと消えていった。

アンドロスは玄関と窓の戸締まりをしっかりと確認して、安心するとベッドへ潜り込んだ。

外が明るくなると待ちかねたように、レオナルドの家の戸を叩いた。

眠そうに出てきたレオナルドに必死で訴える。

​「レオナルド、いいか、良く聞け!お前が昨夜抱いていた女は人間じゃない。骸骨だ!」と……。

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